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アナザーストーリー side シルバーケープ7 

カァッ!

鳴き声と共に烏がナイフを弾いた。先ほどの烏が追いついて来たのだ。

「よく私の居場所が分かりましたね。褒めてあげます。」

突然、烏の周囲の景色が歪み、真っ黒なフードを被った女が現れた。

分かったのは偶然だ。ほんの少し、ほんの少しだけ空気が揺れただけだ。この女の隠形は白継のはるか上をいっている。

恐らく先ほどの空気の揺れはワザとだ。このくらいは感じ取れるだろうと試されたに違いない。

白継は寒気を感じていた。

「お褒めに預かり光栄ですよ。」

白継は警戒は無駄だと分かりつつ、いつでも梟になる、魔法を放つという準備を怠らなかった。すると、フードの女が告げる。

「そんなに警戒しなくても、ここであなたを殺したりはしませんよ。私を見つけることができたご褒美に見逃してあげます。」

楽しそうな声で話しているのは、すでに白継を取るに足らない相手だと認識したからだろう。相手がどれ程の力の持ち主かは分からないが、その気になれば白継など、そこに転がっている肉塊と同じようになるに違いない。

アナザーストーリー side シルバーケープ6 

どういうことだ!
白継の思考は混乱した。
数時間前、白継が島に到着した時、複数の魔物ハンターたちが上陸していた。危険度5の島に上陸できる協会でも指折りの魔物ハンターたちをここまで圧殺できる者。

「化け物かっっ!」

白継の口から出た言葉。
ある者は四肢を砕かれ、ある者は顔を潰されている。肉塊と化したハンターたちから答えは返ってくるはずがなかった。

「化け物とは心外ですね。」

白継は咄嗟に周りを見渡した。まさか、この私が敵を見落とした?
今の白継は梟だ。相手の姿があれば見えないわけはない。鋭敏な聴覚で相手の呼吸音すら感じ取れるはずだった。

何も感じ取れなかった……この私が?

白継は咄嗟に人の姿に変化し、地に足をつけ、周囲を警戒した。機動力は落ちるが、人の姿の方が何かと対応しやすい。

敵の姿が見えない内から上空に避難するのは愚策だ。

白継は地に足を付け、感覚を研ぎ澄ます。

そして……見つけた!

「そこだっ!!!」

ハンターたちの倒れている方向に向けて、ナイフを飛ばした。

アナザーストーリー side シルバーケープ5 

『灰雪』
白継は同じ魔法を発動した。
今度は烏の足止めが目的ではない。灰雪は元々隠密用の魔法だ。灰色の雪が辺りを覆い、自らも灰色の梟に変化する。これで相手は視界で白継を捉えることはできない。

このまま魔法を撃ち、相手怯んだところで全力で逃げる。それしかない。

『フローレン』
攻撃魔法としてはそれほど強くはないが、周囲に展開する雪を氷の塊にして撃ち込む魔法だ。少しでも隙ができればいい。

魔法が発動し、烏の周囲にある雪が氷の塊に変化した。

クワァッ!!!

烏は大きく鳴き声をあげるが、そのまま氷の塊をその身に受けた。

いまだ!白継は全力で飛んだ。
音もなく、茂みをかき分ける。

木々の隙間から外が見えた。
島の端はあそこだ。茂みを抜ける。

バッッという音と共に、白継は茂みの中から飛び出した。

「ハンターの皆様、お気をつけください。烏の魔物……が……。」

茂みを抜けた白継が見たものは、もはや原型を留めない肉塊と化した魔物ハンターたちの姿だった。

アナザーストーリー side シルバーケープ4 

白継。
"試練の島"の"監視者"。
スキル名 "ナイトバード"。
その名の通り、梟に変化するスキルである。
当然、梟の力の一部を行使できる。

梟の視覚は驚異的である。頭部の前面にある瞳は双眼視の視野を持ち、獲物を捕捉する。奥行きを計ることもできることに加えて、頭部が270度も回転する。

梟の狩りは音もなく行われる。

それは左右非対称の耳による卓越した聴力だけでなく、音を出さずに移動する能力、消音機能付きの羽によるものだ。羽のふちにあるセレーションが羽音を消すからこそ、獲物に気付かれることなく、狩りを達成することができるのだ。

白継は、これらの能力を身に纏うことができる。だからこそ"監視者"だ。

隠密行動が得意だが、戦闘能力は高くない。それでもここまで逃げ切れない相手と対峙するのは殆ど経験がない。

「この烏は……魔物なのか?」

魔物とは思えないほどの強さを感じる。
白継は戦いながら逃げ延びる方法を考えていた。相手の方が少し速度が速い。だが、島の端までいけば、魔物ハンターたちも待機しているはずだ。

アナザーストーリー side シルバーケープ3 

"試練の島" 危険度5
登録番号1468

ガサ、ガサッ……
茂みから音もなく飛びでてきたのは一羽の梟だった。全身を灰色の体毛に覆われている。梟は首を真後ろに回転させた。
どうやら何者かに追われているらしい。

少し間を置いて、同じ茂みの中から黒い影が飛び出してくる。こちらは、バサッバサッという大きな羽音だ。

「だめだ、振り切れない。」

そう言うと、梟は人の姿になった。灰色の髪、灰色の服、全身が灰色で、眼光は鋭く黒い影を見つめている。

『灰雪(はいゆき)』
魔法だ。発動と同時に黒い影の周囲を灰色の雪が舞い、視界を塞ぐ。黒い影は雪に阻まれて動きを止めた。

烏だ。一羽の烏が羽根を広げている。

「烏?この島に烏の魔物はいないはず。」

言うが早いか、ナイフを取り出して烏に向けて投擲した。ヒュッという音を立てて『灰雪』の隙間から烏にナイフが飛ぶ。

キンッ……

烏はナイフを嘴で弾いた。明らかにおかしい。烏の魔物にはこれほどの敏捷性はないはずだ。となれば……

「誰だ!私を"白継"と知ってのことか!」

アナザーストーリー side シルバーケープ2 

"魔物ハンター"は、時に素材のために依頼を受けて魔物を狩ることもある。

"シルバーケープ"は、魔物ハンターたちがいることで成り立っている国であった。

レミルメリカには、魔物ハンター以外にも、冒険者という職業が存在する。

魔物ハンターは、魔物を狩ることを専門にしている者たちであり、冒険者は探索と開拓を専門にする。

そして、魔物ハンターや冒険者は、駆け出しから熟練者まであらゆる者たちが、"試練の島"に挑む。レベルを上げ、強くなるという単純な目標のためだ。

国は貴重な戦力を守るため、島ごとの危険度を5段階に割り振り、冒険者と魔物ハンターを管理するための協会を設置した。

冒険者も魔物ハンターも協会に登録し、一定以上の功績を挙げなければ、危険度の高い島へ行くことは許可されない。倒した魔物の一部を持ち帰り、倒したことを証明する、倒した魔物から素材を獲得し、武器を強化する、目的は様々だ。

魔物の国"シルバーケープ"。

そこでは、日々、魔物とハンターたちとの戦いが繰り広げられている。

アナザーストーリー side シルバーケープ1 

レミルメリカで最北端に位置する氷雪の国"シルバーケープ"。

寒さで作物がうまく育たず、国土の半分が氷と雪に埋もれている。

過酷な環境にあるこの国がなぜ国として機能を果たせているのか。それは国土の南側に位置する"試練の島"と呼ばれる1万を超える島々に秘密がある。

"試練の島"、それは多種多様な魔物たちがひしめき合う場所。レミルメリカにいる魔物の8割はこの試練の島にいるとさえ言われており、それぞれの島では、魔物たちが縄張りをもって存在している。

魔物は特定の条件下で自然発生するが、多くの場合、生殖で増える。魔物化した動物からは魔物化した動物が生まれてくる。

その仕組みは未だ解明されていないが、時には突然変異でより強い魔物が生まれた事例も過去には報告されている。

魔物たちが試練の島を抜け出すことはほとんどないが、増えすぎた魔物は狩らなければならない。

"魔物ハンター"たちの多くは、この"試練の島"で魔物を狩ることで生計を立てているのである。

アナザーストーリー side プロムナード4 

同じ精霊と女神を崇拝していても、王の思想はより深淵を覗いているのだろう。

「そうですか。それならば、次に我々はいかがしましょう?」

藤杜は秘書官として問う。

「KAIさんからの報告では、セレスティアはトカゲアザラゴンの討伐等で忙しい様子。私たちはその間に、例の件に対処しましょう。」

そういうと王は部屋を出て行くために歩き出した。

「例の"暗黒大陸"からの手紙ですね。まさか、あのような手紙を信じるので?」

藤杜はかなり複雑な顔をしている。

「以前の戦争以来、失われた大陸とばかり思っていましたが、まだあそこに国があったとは。しかし、使者もメッセージも使わず手紙のみを魔法で送ってくるとは予想外でしたね。」

暗黒大陸。失われた大陸。
かつての戦争の中心地であり、広大な土地が焦土となった場所。

人は住めないと神々すら手を出さなかった場所に何者かかいる。

王は決断を迫られていた。

宝塔。彼はもう一つの名を持つ者。
称号:キマシタワーP。
プロムナードの王にして、"ゆかいあ"を統べる者である。

アナザーストーリー side プロムナード3 

「別の筋から、雨乞いの歌が完成したという報告が上がってきましたので、KAIさんにもそのように伝えておきました。何かされるおつもりですか?」

プロムナードは水すら人工的に生成しているため、雨の有無で影響を受けることは少ない。しかし、セレスティアはそうはいかない。自然と共に生きるあの国は雨が降らなければ農作物が枯れてしまう。

「いいえ、特に何も。雨乞いの儀は数十年前に行われて以後、一度もなかったと聞いていますから興味もあります。」

プロムナードを治める若き王。彼はそのスキルと知略で王の地位を築いた男である。

「儀式が成功すればミコエル教がさらに力をつけることにもなりかねません。」

藤杜の心配も最もだ。

「いえいえ、雨乞いをしようがしまいが、ミコエル教は強い。それは揺るぎませんから。それに私たちは勝ち負けを競っているのではありません。それに何にせよ、"ゆかいあは正義"。この変わることのない事実があるならば何の問題もないのです。」

なるほど、分からない。藤杜は時々この王の言葉が理解できないことがある。

アナザーストーリー side プロムナード2 

それが、健康被害だった。

様々な病原体により、他の国の者たちより平均寿命があまりにも短くなってしまった。しかし、プロムナードの発展は止まらない。この問題すら、機械の力で解決を試みた。

遺伝子操作による寿命の延長、身体機能の一部を機械化することによる健康維持、あらゆる試みが実施された。当然、中にはスキルの力と魔法で、生き延びてきた者たちもいる。

だが、多くの者は機械がなければ、生きていけない。それがプロムナードだ。

そして、今、このプロムナードを治める王は、"塔"の中から、街の様子を見下ろしていた。

「KAIさんからの報告では、セレスティアで雨乞いの儀が行われる予定だとか。経過はどうなっていますか、藤杜さん。」

藤杜錬王国の秘書官を務める男である。

生まれた場所はプロムナードであるが、長い間、プロムナードを離れており、その期間どこにいたのか?何をしていたのか?その多くが謎に包まれている。数年前にふらりと国に戻ってきたところをKAIにスカウトされ、現在に至っている。

アナザーストーリー side プロムナード 

セレスティアと海を挟んで反対側に位置するその国は、ミコエル教とは異なる思想が支配する地『プロムナード』。

その思想は、かつてレミルメリカで起こった大きな戦争を治めたとされる2体の精霊と、月と星を司る2体の女神を祀る思想。

この国では、各々が4体の神から祈りを捧げる対象を選択することが許されている。

互いにそれぞれの信仰を尊重する姿勢は、ミコエル教とは大きく異なっていた。その信仰の寛容さゆえに、プロムナードはセレスティアに次ぐ勢力の国として栄えている。

国の中心にそびえ立つ"塔"を起点に、交通網が敷かれ、国中が繋がっている。あらゆるところに工場が建ち並び、所狭しと高層ビルが立ち並ぶ。

プロムナードは、かつての戦争を勝ち残るため、国を挙げた機械化に取り組んだ。その結果、国土の大きさでセレスティアに劣るものの、レミルメリカ最大の工業国となったのである。

だが、あらゆるものの機械化や工業の急速な発展は、プロムナードに住む人々の体に影響を及ぼした。

「素材が足りない時はどうするんですか?」

もう少し聞いてみたい。
"クラフト"があらゆるものをつくることができるなら、有用性の高いスキルであることはまちがいない。

「魔力で補います。素材は木でも鉄でもあるに越したことはありませんが、無限にはありません。かと言って、鉄を薄く伸ばしてしまえば素材は少なくて済みますが、強度は落ちます。今回は木片が大量に残っていたので楽に直せましたが、足りないところには魔力を注ぎ込んで同じ部品をあてがうのです。」

はなぽさんのスキルは基本的には等価交換の原則で成り立っているが、魔力さえあればどのようなものでも作成できるようだ。便利なスキルだな。

「いつ見ても、はなぽさんの"クラフト"は勉強になります。それじゃあ、次は僕の番ですね。対象を指定します。」

はなぽさんが直した椅子にタダトモさんが手を触れる。特に椅子に変化はない。

「僕のスキル"ミライノート"は、このノートを持ったまま、対象とするモノに手を触れると発動するんですよ。ほら。」

タダトモさんは先ほど顕現したノートのページを開いて見せてきた。

「では、はなぽさん、いつものやつでいきましょう。"ミライノート"」

タダトモさんの手が少し光ると、左手に一冊のノートらしきものが顕現した。

表紙にはカタカナで「ミライノート」と書かれている。あれ?このノート、量販店で売ってるのみたことあるぞ?

ミライノートの発動に合わせて、はなぽさんもスキルを発動する。

「"クラフト"。素材はどうしましょうかね。ああ、ちょうどそこに先ほど壊れた椅子が。」

戦闘の時に壊れた椅子の残骸に向けて、はなぽさんがスキルを発動する。

「素材は木片、作成するものは前と同じ椅子でいいですな。『メモリア』。」

はなぽさんがスキルを発動して魔法を唱える。

「『メモリア』は一度作成した物を記録しておく"クラフト"専用の魔法です。私は過去に作成したものはすべて記録を残してありますから、これを使えば……。」

みるみる内に木片が椅子の形へと変化していく。10秒と経たない内に、礼拝堂に元々あった椅子が復元された。

「少し素材が足りなかったようですが、何とか元どおりにできましたね。」

ジャンルは異世界転生のファンタジー

ボカロ丼のLTLにしばしば来訪される方々が勝手にキャラクターとして登場します

更新は気が向いたときです

「そうですね。原材料が足りなかったところや、レアな素材を使う場所もありましたし、スキルで細かい装飾は難しいのでね。実際3ヶ月くらいでしょうか。」

それでもかなりの速度だ。元いた世界で2026年を目処に完成予定の世界遺産なんてものもあったが、それと比較しても遜色がない。

「今回もはなぽさんは、神殿の修復を依頼されたんですよ。」

タダトモさんから再び補足が入る。

「タダトモさんはどうしてここに?」

話を振ってみることにした。

「僕ははなぽさんのような建造士ではなく、検査士なんです。僕のスキルは仕上げ向きなんで。」

たしか"ミライノート"というスキルだったはずだ。

「検査士ということは、出来上がったものを確認する仕事ってことですよね?」

「そうですそうです。僕のスキルは"ミライノート"、さっきは良いところ見せられなかったですけど、実はすごいんですよ。」

さっきは見ることなく終わったからな。見せて欲しいものだ。

「たぶん口で言うより見てもらった方が早いので、ちょっとやってみますね。」

願ってもないことだ。
俺は少しワクワクしていた。

「"クラフト"ですか。それはまたすごいスキルですね。」

あの壁のようなものができる前に、たしかにプリズマリンと叫んでいた。

ミコエルの力を使っている時に分かったことだが、レミルメリカでは、スキルごとに固有の魔法もある場合がある。

タイムライナーはその類だ。あれは、ミコエルの力がないとうまく扱えない。シャイニーウインドやブラックハートは汎用魔法だけどな!俺が使うと威力がおかしくなっているから困りものだが。

「"クラフト"のおかげで、私は建造士になれましたからね。」

はなぽさんは嬉しそうに話している。

「このミコエル神殿も、はなぽさんのスキルを使って作られているんですよ!」

タダトモさんも誇らしげだ。

「これほどの神殿まで作れるんですか。この規模の建物になると、どのくらいの期間で作るのですか?」

この神殿は、かなりの広さだ。今いる地上の礼拝堂だけでも、俺が知っている教会に比べればそれなりに広い。

礼拝堂から出た先にも廊下が続いていて、扉も見えているから、どうやら他の場所もありそうだ。

はなぽさんのスキルも相当な力を秘めていそうだな。

side プリズム1(誤字修正版) 

深海の国"プリズム"
ぐへへPの治める"セレスティア"に隣接する海"ムーンアイズ"の深海に位置するこの国は、多種多様な海洋種族が暮らす海の楽園である。国の周りが不規則な海流に囲まれているため、外敵の侵入が困難である。
レミルメリカのすべての海はひとつに繋がっており、"プリズム"がそのほとんどを統治している。"セレスティア"が陸上最大の国ならば、"プリズム"は海中最大の国なのである。

国という名前を冠しているが、国王はいない。種族の多い、海洋種族をまとめるために特定の種族にだけ強い権利を渡すことを嫌ったからだ。そのため、"プリズム"は複数の種族からなる"海洋評決議会"を結成しており、年に数回の定例議会をもって国の方針を決めていた。そして、今回、"トカゲアザラゴン"という脅威に加え、『一部の海洋種族の離反』『禁忌とされている同種族間での殺し合い』という"プリズム"建国以来の事件が起きていた。それを受けて、セレスティアとの会談を行うことが決められたのである。

「セレスティアは会談の申し出を受けてくれるだろうか……。」

アナザーストーリー side プリズム3 

「使者を送る準備をしなければ……。」

気が重い。どうにもこういう責任がのしかかる役割は気乗りしない。そもそも離反した者たちをわざわざ捕らえて裁くという考えも好ましくない。敵対する者は亡き者にしなければ、その脅威は消えないと思っているのだ。

そもそも、私にこんなことに時間を割いている余裕はない。我種族の存亡に関わる問題を抱え、他にやらねばならぬことがあるのだ……この"しょこらどるふぃん"にはな!

「誰かおらぬか!セレスティアに使者を出す。今すぐ、準備せよ!」

しょこらどるふぃん。
"プリズム"の"海洋評決議会"の一角。
その名の通り、"イルカ"の海洋種族である。

青いイルカの姿、黒い双眸、魚類に類する背ビレもある。海洋種族は、魚類から独自の進化を遂げているため、厳密には魚類ではないのだが、今はそんなことはどうでもいい。

しょこらどるふぃんは、セレスティアへの書簡を認めるため、自室へと泳いでいった。

アナザーストーリー side プリズム2 

独り言を呟く程に私の心は落ち着かない。

評決議会では滞りなく話が進んだ。

"プリズム"が抱える問題は国内だけでは解決が難しいという判断だ。特に海洋種族の離反は議会にとって大きな問題として認識されていた。彼ら海洋種族は、一部の能力は制限されてしまうものの、陸上でも生活できる。それ故に、離反した海洋種族が陸上に逃げてしまった場合、彼らだけで探すのは困難になる。

今回、セレスティアとの会談を行うのも、離反した海洋種族の捕獲に力を貸して欲しいという要望を伝えるという目的が大きい。

セレスティアへの見返りには、最近、噂になっている"例の4人"の情報収集に協力するということを伝える予定になっている。

先日、雨乞いの儀の協力を得るために国を訪れていた"モケケ"という者がそう言っていた。ミコエル教の中でも中枢に近いと言われる"モケケ"が、なぜそのような情報を流してきたのか真意は分からないが、"例の4人"の話が本当ならもはや一国の問題ではない。

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