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「またまたご謙遜を。あなたもさぞかしお強いのでしょう。」

しおまねきさんはクスリと笑う。なんだか含みのある言い方に聞こえるが、しおまねきさんは俺のスキルを知らないからな。

「ドイルさん、ドイルさん、この酒場には色んな情報が集まるんです。もしかしたら情報を集められるかもしれないですよ。」

酒場や街中で情報収集。ゲームの基本プレイでもある。

「たしかにそうですね。」

俺はタダトモさんに同意する。

「おや、タダトモさん、何かの調査依頼ですか?」

しおまねきさんはグラスを2つ準備を始めている。俺とタダトモさんの分だろうか。

「最近この辺りで冒険者が襲われた事件の調査です。えっと……僕はこの『エンドレスリピート』それからお腹も空いてるので、『チャンネー特製しおまねきディナープレート』をお願いします。」

タダトモさんがしおまねきさんの質問に答えるついでに注文した。

「俺も同じものを。」

「そうなんですね。実は、昨日家まで行ったんですけど居なかったんで、もうプリズムに行ったんですかね。」

タダトモさん、プリズムと言ったか。たしかレミルメリカで唯一、海底にある国だ。

「だいたいお仕事に行く前日にはお食事に来られるんですけど、今回はまだ見えておりませんね。急ぎのお仕事だったのかもしれません。おっと、そちらの方、ご挨拶が遅れました。」

しおまねきさんが突然俺の方に話を振ってきた。眼鏡をかけた利発なおじ様といった雰囲気だ。俺はメニューからしおまねきさんへと視点を移す。

「ドイルです。初めまして。」

先に名前を名乗る。

「あなたがドイルさんですか。はなぽさんから聞きましたよ。一緒に隊長さんの暴走を止めたとか。私はしおまねき。この酒場"チャンネー"の店長をしています。」

ここでも噂されてたのか。ごーぶすさんの強さは密かに有名らしく、いつのまにか尾ひれがついて話が拡散されていそうだ。

「止められたのは、はなぽさんのお陰ですよ。」

ごーぶすさんを止めたのは確かに「クラフト」の力だ。嘘は言ってない。

タダトモさんがバーテンダーに答えた。
しおまねき。「ボカロ丼」では時折浮上しているのを見たことがある。それに、しおまねきさんが作成していたイベントの「出展リスト」は、ボカロ丼にいる人たちのブースを確認する際に有効活用させてもらった。

レミルメリカでは、しおまねきさんは、このお店で働いているのか。

「こちらへどうぞ。」

俺たちはカウンターへ案内された。木の丸椅子に座ると、目の前に水とお手拭きが置かれる。これは良いサービスだ。

「数日前、はなぽさんから話は聞きましたよ。随分大変だったらしいじゃないですか。」

メニューを差し出しながらしおまねきさんが声をかけてくれた。

「はなぽさんに会ったんですか?」

タダトモさんがメニューを開く。おお、飲み物も豊富だけど、食べ物もいろいろある。

「数日前、クロスフェードにお戻りになった日にお会いしましたよ。ご自宅に戻られてから次のお仕事に行くと言っておられましたが。」

どうやら俺たちがクロスフェードに到着したその日に会ったみたいだな。はなぽさんの家はこの近くなのだろうか。

遠目でも確認できる明るく光るお店がある。
俺たちが見つけたのは酒場だった。

酒場「チャンネー」

店の前の看板にはそう書かれていた。

酒場の中には、この時間でもそれなりに人がいるようでガヤガヤとした雰囲気だった。ドアを開けて中に入ると右側にはバーカウンターのような席があり、左側には机と椅子がいくつか並べられている。

酒場の中央には光の玉のようなものが浮いている。酒場の灯りはあの光の玉で確保されているようだ。

酒場に入ると、すぐにカウンターの奥から一人の男性が話しかけて来た。

「いらっしゃい。おや、タダトモさんじゃないか、お久しぶり。」

バーテンダーだろうか。マドラーで手元のドリンクをステアしている。桃色の飲み物を混ぜる度に、氷のカラカラという音が聴こえてきそうだ。

「スペシャルカクテル『ナイトフィーバー』になります。」

バーテンダーの男はカウンターに座っているお客にグラスを差し出した。

「しおまねきさん、お久しぶりです。」

お互いに突然の事件で少し疲れているが、ご飯を食べるタイミングを逃してしまったことで、開いている店がないかと探しに少しブラブラと歩いて帰ることになったのだ。

「そうですね。でも、襲われた時の記憶がほとんど無かったみたいで、あまり参考にならなかったですから。」

冒険者の話によれば、協会から数百メートル離れた路地に入った所で突然後ろから襲われたらしい。そして、逃げようとしたところ、何か壁のようなもので退路を断たれ、さらに切られたと言っていた。

「壁を作るようなスキルの使い手とか、土を操るスキルの使い手かもしれませんね。」

タダトモさんの言う通り、たしかにスキルを使えばわりと簡単に壁くらいなら作ることができる。

「はなぽさんの『クラフト』でも壁は作れていましたからね。」

マキエイさんやごーぶすさんとの戦闘でも壁を作っていたのを俺はこの目で見ている。

「壁を作るだけじゃ、スキルの特定は難しそうですね。犯人探しを引き受けたのはいいですけど、もっと情報がないとどうしようも……あ、そうだ。ドイルさん、あそこのお店なら開いてますよ。」

依頼を受けた俺とタダトモさんが冒険者・魔物ハンター協会を後にしたのは、すでに深夜になろうという時間だった。クロスフェードの大通りもすでにほとんどの店が閉まっており、明かりもほとんどない。

「いや〜帰り際になってonzeさんには驚かされましたね。」

タダトモさんの言葉に俺も同意する。

「ですね。まさかonzeさんが試験官とは。」

冒険者・魔物ハンター協会を出ようとした時、onzeさんが俺とタダトモさんに教えてくれたことがある。

「私は今年、学園の試験官に任命されたからね。ドイルくん、次は試験会場で会おう。」

学園の試験官は公平を期すためにさまざまな職種から選抜されるらしい。onzeさんもその一人というわけだ。ということは、筆記じゃなく完全にスキルを使った実技試験が主なのだろう。そんなことを考えながら歩いていると、タダトモさんが話題を変えた。

「冒険者さんが目覚めてよかったですね。」

「ドイルくんならばすぐにでも、冒険者や魔物ハンターたちとパーティを組んで活躍できると思う。だからこその特例。あとは、先ほどの御礼を兼ねていると思ってくれれば構いませんよ。」

これはありがたく受け取っておくべきだろう。

「ありがとうございます。onzeさん。魔物ハンターの証、頂いておきます。」

魔物ハンターの証を持っていれば、冒険者の依頼も受けられるのだから損はない。俺は早々に証に魔力を流し、登録を済ませた。

「これで君も魔物ハンターだ。さて、早速なんだが。」

onzeさんが一枚の紙を取り出した。
それは依頼の紙。
C級の依頼になっているようだ。

「すまないが、先ほどの冒険者を襲った犯人を探すのに協力してくれないか?」

俺はいきなりレミルメリカに来て初めての依頼を受けることになった。

「そう、魔物ハンターの証だ。本来はちゃんとした手続きを踏んで、魔物を討伐してから認定するのだが。」

onzeさんが俺のほうをチラリと見た。

「あれだけの回復魔法を見せられてはね。」

あれは余程すごい魔法だったのだろうか?

「ドイルさん、何を使ったんですか?」

タダトモさんが聞いてくる。

「え?『クリエイション』なんだけど。」

俺は素直に答えた。

「治癒の最上級魔法じゃないですか。失ったものすら再生するっていうアレでしょう。」

というか、はなぽさんを助けた時にも使っていたんだけど…ああ、気絶していたのか。そういえばタダトモさんには『パーフェクトヒール』を使ったんだっけか。

「そんなにすごい魔法だったの、あれ。」

タダトモさんにだけ聞こえるように小声で話した。さすがに知らずに魔法を使ったと言えば疑われるだろう。

「少なくともこの協会に現在登録している魔法使いで、それだけの回復魔法を使える者は限られている。それこそA級の依頼を受けるような者たちだけだ。」

そうだったのか。やり過ぎてしまったようだ。
大天使ミコエルの力が強すぎるな?

気がつくと、先ほど倒れていた冒険者はどこかへ運ばれていた。

二階へ上がると今度は先ほどの応接室からさらに奥の部屋へと案内される。そこがonzeさんの執務室になっていたようだ。

onzeさんの部屋の作りは簡素なものだが、部屋の中央には来客用の上等なソファーが置かれていた。

「かけてくれたまえ。」

onzeさんに促されるまま、俺とタダトモさんはソファーに腰を下ろす。

「まず先ほどは本当に助かったよ。あの冒険者に変わってお礼を言わせてもらいたい。」

onzeさんは頭を下げる。

「お力になれたのなら何よりです。」

俺は素直にお礼の言葉を受け取った。

「先ほどの冒険者が目覚めたらこちらで少し話を聞いておこうと思うのだが、それよりも先にこれを渡しておこうと思ってね。」

onzeさんが出したのは市民証とは異なる一枚の赤いカードだった。

「それは、魔物ハンターの証じゃないですか。」

タダトモさんが驚いたような声を出した。あれ?さっき審査がどうのこうのって。

程なくして消えた光の中には、傷が治った冒険者が座っていた。どうやら気絶しているようだが、まもなく目を覚ますだろう。

「ドイルさん、何かあったんですか。」

タダトモさんが駆け寄っできた。

「タダトモさん、この冒険者さんを治療してただけですよ。」

俺は気絶している冒険者を指差した。

「治療ですか。入口の辺りに血がいっぱい落ちてたんでみんなで何があったのか話していたんです。」

見てもイマイチ状況が掴めないようだが、うん、俺もよく事情が分からない。onzeさんと受付の女性はまた何か話しているようだ。

「とりあえず、詳しいことは俺も分からないんで。」

タダトモさんに説明しようにも何も話せることがない。

「何人かは、血の跡を追って外へ出て行ったみたいですけど。僕らはどうしますか?」

この後、タダトモさんとご飯でも食べるかと思っていたんだけど、まだ冒険者登録も終わっていない。その話をしようと思っていると、onzeさんから声をかけられた。

「ドイルくん、ちょっと良いだろうか。タダトモさんも一緒で構わないから、私の部屋に来てくれないか?」

「冒険者がここまでやられるなんて……。」

onzeさんに合わせて俺もマジマジと観察する。よく見れば、入口から受付まで所々に大きな血の斑点ができている。背中等にも傷があるのか、出血がひどいようで受付の前にも血が溜まっている。

冒険者と魔物ハンターはちがう。
冒険者の中には戦いに慣れていない者もいる。そうは言っても、危険な場所にまで出向く彼らにここまでの手傷を負わせることは容易ではないだろう。

「この人を治せばいいんですね?」

俺は受付の女性に確認した。
うなづいているようなので、おそらくは合っているのだろう。

…………
ミコエルの契約書を使用します。
…………

俺はタブレットを取り出し。アイテムボックスから契約書を選択した。

身体に魔力が満ちる。

『クリエイション』

以前、はなぽさんにも使った最上位の治療魔法だ。魔力を消費する代わりに足りない血や体力まで補ってくれる。

「まさかこれほどの治癒魔法を。」

onzeさんが驚いている。俺の魔法じゃなく、大天使ミコエルの力だから、このくらいはできて当然だ。

光が倒れていた冒険者を包み込む。

「協会にいる誰かに譲ってもらうしかあるまい。順番に当たるぞ。」

onzeさんは急いで部屋を出ようとしている。

「あの……。」

空気になりつつある俺は言葉を発する。

「すまない、ドイルくん。事情は聞いての通りだ。明日、また来てくれないか?」

onzeさんは俺の力を知らない。それならば当然だろう。俺がonzeさんの立場でも同じように考えるだろう。

だが、俺には「トランスモーフ」がある。

「その人、俺が治します。」

受付の女性とonzeさんは突然の言葉で理解が遅れたらしく、呆気にとられていた。

---------------

俺たちは部屋を出て階段を降りる。

先ほどの受付の前には人だかりができていて、受付にもたれかかるように傷だらけの人が座っていた。

onzeさんが最初にその人に駆け寄る。

「これはひどい。かなり鋭利な刃物で傷つけられたようだね。」

onzeさんの言葉に受付の女性は目をそらした。腕や足には大きな傷が見えている。

俺は座ったまま、ドアの方を向く。

「何があった?」

onzeさんがその場で説明を求める。

「分かりません。ただ、先ほど、冒険者さんが入ってきて『突然襲われた』と。全身にかなりの傷を負っています。」

俺もその話を聞いてソファを立ち上がった。辻斬りみたいなものだろうが、放ってはおけない。

「そうか。それで医者には?」

onzeさんの表情が険しくなる。

「すでに連絡しましたが、夜なので。到着にはまだ少しかかります。治癒魔法の使える魔法師も協会には来ていませんでした。」

そうか。治癒も回復も適性がないと使用が難しい魔法だったな。魔法師団にはそれなりの数がいるらしいが、ここにはいなかったのだろう。

「それは……困ったな。協会に回復薬の備蓄はあるか?」

onzeさんの質問に受付にいた女性は首を横に振る。

「さすがにあの傷を癒せるだけの回復薬はおいておらず。」

側から聞いていて状況はよろしくない。

「それに最近は魔物の数が増加していますから、危険あります。」

その話はどこかで聞いたな。

「そのため、試験というわけではありませんが、魔物ハンターを希望される方には、事前に一体以上の魔物の討伐をお願いしています。」

魔物を倒してこいってことか。

「魔物の討伐ですか。」

俺はonzeさんの言葉を反復した。

「そうです。ただ、魔物の出現は不定期なので、次に出た時に討伐に参加していただくことになります。」

そうなのか。いきなり魔物ハンターになることができるかと思ったが、そう上手くはいかないらしい。

「そうなんですね、わかりました。」

冒険者も魔物ハンターもなれたらいいなくらいの気持ちなので焦る必要はない。

冒険者登録だけをお願いしようと思って口に出そうとした瞬間、奥のドアが開いた。

「大変です、支部長。怪我人です。」

ドアから出てきたのは先ほど受付にいた女性だ。随分と血相を変えている。

「なんだと。」

onzeさんはガタッと音を立ててソファから立ち上がった。

「しかし、ドイルさんは学園を受験されるとお聴きしました。それは本当ですか」

すでにそんな情報まで入っているのか。

「はい。今週末が試験だと聞いています。受験票も頂きました。」

それもタダトモさんから聞いたのだろうか。

「そうですか。学園に合格される力があるならば、冒険者になるのは良いでしょう。ただ、魔物ハンターとなると、それなりの力を持つことが条件になります。」

そういうことか。冒険者は冒険や探索等をメインする者もいるが、魔物ハンターは魔物の討伐をする者だ。力がない者をハンターにする訳にはいかないということだろう。

「魔物ハンターになるためにも何か試験のようながあるんですか?」

学園の入学試験があるのだから魔物ハンターに試験があってもおかしくない。

「魔物ハンターへの依頼はほとんどがB難易度、低くてもC難易度となっています。」

DやEから考えると、やはり戦闘のある難易度は高い。おそらく魔物自体が強いのだろう。

小金井ささらさんが言っていた通りなら、剣闘師団や魔法師団が出て行くレベルなのだからそれなりの強さのはずだ。

「ご丁寧にどうも。どうぞ、お座りください。タダトモさんから冒険者・魔物ハンターの登録をされたいとお聴きしました。」

タダトモさんが推薦してくれたのか。それにしても支部長が直々に出てくるとは驚きだ。

「失礼します。」

俺はソファに座りなおす。

「そうですね。できれば、登録をお願いしたいと思っています。」

onzeさんは俺の対面に腰を下ろした。

「タダトモさんは、あなたの実力なら冒険者や魔物ハンターとしてもやっていけると話していました。"あの"ライチョー隊長Pのスキルの暴走を止めたと。」

タダトモさん、いつのまにかそんな話までしていたのか。話すの大好きだな、あの人。

「一応、その通りです。」

嘘は言ってない。ただ、9割くらいはスキルの力であって、俺自身が何かをした気はしていないのも確かだ。

「それはすごい。将来、有望な若手は私たちも歓迎します。」

onzeさんの口調は穏やかだが、どことなく俺を試しているような雰囲気を感じる。俺のことを疑っているのな?たしかに、転生して年齢は若くなっているけど。

二階へ登ると受付の女性が俺を応接間のような場所へと招き入れた。部屋にはすこし大きめのソファと机がある。簡素と言えば簡素だが、落ち着いた雰囲気の部屋だ。受付の女性は俺をソファへと促すと、奥の部屋に入っていった。俺はタブレットを取り出し、アイテムボックスを起動する。

「登録にはたしか市民証がいるからな。」

アイテムボックスから市民証を取り出し、人が来るまで待つことにした。

ギイッという音を立てて、ドアから入って来たのは先ほどの受付にいた女性……ではなく、細身の体躯をした長身の男性だった。眼鏡をかけた表情からしっかりした印象を受ける。

「あなたがドイルさんですね。初めまして、クロスフェード冒険者・魔物ハンター協会の支部長を任されているonzeと言います。」

「ボカロ丼」で聞いたことのある名前の男性だった。この人が、onzeさんか。

「初めまして。ドイルです。」

俺はソファから立ち上がり頭を下げた。

「そうです。頼まれていた森での依頼の完了報告に来ました。あと、こちら、ドイルさんって言うんですけど、今度学園を受験する優秀な方なので、冒険者か魔物ハンターの登録をお願いしたくて。」

タダトモさんが説明してくれているのを俺は横で聞いていた。

「そうなんですか。優秀な方は当協会も大歓迎です。タダトモさん、ではこちらの証明書を持ってあちらへ。ドイルさんは、私がご案内しておきます。」

タダトモさんは紙を貰って奥のカウンターへ行くようだ。

「すぐに終わりますから、終わったらここで。」

俺が分かったと返事をするとタダトモさんは奥のカウンターへと向かった。

俺は受付の女性に向き直る。

「それではドイルさん、こちらへどうぞ。」

カウンターにCLOSEDの札が置かれ、俺は受付の女性に従って二階の部屋へと通されたのだった。

「どうぞ、お座りになってお待ち下さい。」

スキルは一人一つ、同じスキルがない以上、個人に依頼するしかない。タダトモさんの独占企業じゃないか。

「便利なスキルがあるとちゃんと仕事も来るんですね。」

スキルや能力によって仕事の有無が決まるのは、どこの世界も変わらないな。

「ミライノートのおかげなのは確かですね。戦闘向きではないので、A難易度の依頼を受けたりはできないんですけどね。」

戦う時はたしかに自力になるからな。他の武器や魔法に頼らざるを得ない。

「それから、あの奥にあるカウンターが、換金所です。受付で依頼の完了を報告したらお金を受け取ることができます。」

確かに警備員のような人が立っているカウンターがある。お金を扱うから警備も厳重なのだろう。

「さて、じゃあ、受付に行きましょう。」

タダトモさんに付いて受付に行く。

「こんばんは。協会へようこそ。タダトモさん、依頼完了の報告ですか?」

受付の女性が話しかけて来た。

「次が左側。ここは依頼の張り出し場所です。紙がたくさん貼ってあると思いますが、これは大きなものから小さなものまで、すべて依頼です。壁に向かって左から右に行くにつれて依頼の難易度が高くなっていきます。」

ということは、右側にある依頼が高難易度ということか。

「難しい依頼ってどんなものなんです?」

俺もできることなら依頼を受けてみたいものだ。

「魔物の討伐依頼や、特定のスキルを持っていないと達成できない依頼ですね。報酬も高いけど、かなり危険なものばかりです。ちなみに、依頼は難易度によってAからEまで5段階に分けられます。」

Aは危ないのか。覚えておこう。

「タダトモさんが受けた依頼ってDとかEなんですか?」

森での仕事だと言っていたし、魔物に遭遇する危険性だってないとは言えない。

「あれはミライノートを持つ僕への直接の依頼だったので難易度は決まってなかったんですけど、森に行くのは危険もありますし、つけるならDくらいかと。」

そうか。「ミライノート」を持つタダトモさんを指定する依頼もあるわけか。

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