『授業案』
学園の教壇に立つとなれば、やはり授業の目的、達成してほしい技能や得て欲しい知識、理解に至るまでの流れといったものを準備せねばなりますまい。
大勢の若者の前で、アドリブ全開に授業するなど、想像だけで喉のあたりが締め付けられる。
mai理事長の依頼とあれば、それは『知識の殿堂』の司書として、相応の内容を用意せねば。
学生たちには図書館に興味を持ってもらう、これがまず目標。
書を読むことで広がる世界、深まる知識にはどのようなものがあるか。魔術を修行中ならば、書物の重要性は知っているだろう。ここで念をいれてやりたいのは、やはり書に関わることの少ない武人。剣闘師団の候補になるような若者にはどういう本を勧めるとよいだろう?
『武経七書』はもう知ってるかもしれないから、異国の『三兵戦術の基礎』、『築城技術知識ガイドブック』も挙げてみようかしら。いやむしろ、学生たちに知っている本を挙げてもらい、未読の学生に向けてプレゼンさせるのもいいかも知れない……。
足元に猫がすり寄って、夕飯を催促するまで、司書の授業案づくりは続いた。