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アナザーストーリー:異世界七夕日和9 

女性は一礼すると、こるんの横を通って宿屋を出て、街の雑踏に向かって行った。一瞥すると冒険者や魔物ハンターに見えなくもないが、こるんは彼女の動作に隠しきれない貴族の娘としての振る舞いを見た。

「森の戦姫ユーリさんか。ちょっとお近づきになってみたいけど、怖い感じするから、男の人とか寄ってこないかも。」

吟遊詩人はユーリの後ろを追いかけていった。その目は新しいおもちゃを見つけた子どものように輝いていた。

「ユーリさんの顔、たしかにちょっと怖いですよねえ。別の世界では、今日は男女の逢瀬の日だというのに困ったちゃんですね。」

こるんがユーリと宿屋で邂逅した場面を遠く離れたハザマノセカイから見ているのは大天使ミコエルだった。こうして、時々、地上の様子を見るのはミコエルの楽しみの1つだ。

「TOMOKI++さん、ユーリさんのこと、もうちょっと柔らかい感じになるように、運命のお相手と出会うくらいのことをしてあげてくださいな。」

大天使ミコエルは、運営神TOMOKI++のところに遊びに来ていた。

アナザーストーリー:異世界七夕日和8 

「リッカの姫。いったいどんな人なのかしら。」

リッカの姫、森の戦姫とも呼ばれる娘が、セレスティアの学園に入学する。そんな噂が世間に流れていた。こるんは、歌のネタになるかもしれないと思い、その姿を一目見ようと滞在先を突き止めたのである。

「それにしても、お姫様だって聞いていたのに、本当にこんな安宿にいるのかしら。」

こるんが辿り着いたのは、築何年経っているか分からないくらいの古くなった宿屋だった。貴族が宿泊するならもっと良いところがあっただろう。

こるんは不思議に思ったが、ひとまず中へ入ってみようと思い、入り口の木の扉に手をかけた。その時、ドアが急に開いた。

「少し出てきます。」

見えたのは女性の後ろ姿。髪の毛を頭の後ろでまとめた女性。その立ち姿は一目見ただけで、戦士のものだと分かる。皮の胸当てと動きやすそうな服装。手には扱いやすそうな長剣を持っている。

ドアの前に立っていたので、こるんは咄嗟に彼女を避けた。

「これは、失礼しました。」

アナザーストーリー:異世界七夕日和7 

「ねえねえ、ちょっと噂で聞いたんだけど、今日って普段会えない男女が愛を育む日なんですって。」

闇姫Pは楽しそうに話している。

「だからなんだと言うのだ。我々は日頃から誰とも会わぬではないか。」

顧問Pは全く関心を示さず、手元の書物のページをめくっている。

「つれないわねえ。ほら、この間挨拶に行った吟遊詩人の女の子とか美人さんだったじゃない。」

吟遊詩人こるん。
久方ぶりに四天王と呼ばれる我々が全員集まったのが、あの時だろう。まあ、あの後すぐに各自が世界との戦いに向けて準備を始めたから何を話すでもなかったが。

「愛が不要とは言わんがな。だが、我らの目的を果たすためには、切り捨てねばならぬ物もあるということだ。」

そう言って、再び顧問Pは本のページをめくる。彼らの次なる一手はもうまもなく始まるだろう。

まさにその頃、吟遊詩人こるんは、プロムナードのとある街にいた。
彼女は面白い噂を聞きつけたのだ。

アナザーストーリー:異世界七夕日和6 

"天空の頂き"という場所は、レミルメリカの古き伝説に記載された場所である。その存在を知る者は今ではおらず、書物にのみ残されている。

トカゲアザラゴンは、その場所で強き者が来ることを願い、じっと待ち続けている。

今、トカゲアザラゴンは眠っていた。その習性ゆえ、夜行性であり、主に夜に活動し、昼はほとんど眠りについている。

トカゲアザラゴンは身体に魔力を纏わせながらその巨体を丸めていたが、時折、身体を震わせる。どうやら夢を見ているようだ。それは強き者の夢だろうか。

トカゲアザラゴンは待っている。

強き者は、正しい者だけとは限らない。
時として、影に身を置く者たちの強さが際立つこともある。そして、このレミルメリカにも影の者たちが存在している。

「立花いな実とrainydayがうまくやったようだな。」

聞くところによると簡単に試練の島を制圧したらしい。白継という梟のスキルを持つ者を一時的に使っていると言っていた。

「上手くいって良かったじゃない。」

闇姫Pは再び顧問Pの元を訪れていた。

アナザーストーリー:異世界七夕日和5 

「そうだ、クリスエス殿、図書館の司書である切身魚さんよりお聞きしたのですが、異国では今日、七夕というお祭りのようなものがあるらしく、紙に願いを書いたもの飾るそうですよ。」

出口の前でm-aは立ち止まってそんなことを言っている。

「願い、願いか。今の私の願いは、王のご挨拶がうまく行くことだけです。」

クリスエスはこんな時でも王の心配をしているようだ。

「たまにはご自分のことも大切にされてはと思いますが、クリスエス殿には釈迦に説法ですな。まあ、七夕は、なかなか会えぬ男女の祭りでもあるとのこと。クリスエス殿もたまには早い時間にご帰宅を。」

m-aはそう言うと部屋から出て行った。

「ふん、男女の逢瀬か。」

クリスエスはそう言うと、再び書類に目を落とした。クリスエスの頭の中には、七夕のことなど残らなかったが、願いを叶えてくれるなら……と、ふと思い浮かんだのはトカゲアザラゴンの討伐という言葉だけだった。

アナザーストーリー:異世界七夕日和4 

「クリスエス殿、こちらの書類にサインを頂きたく……。」

外交官のm-aもぐへへPが不在の間は国内にとどまることになっている。

「承知した。m-a様、ファンド王の護衛の件はどうなりましたか?」

達筆な文字でサインを書きながら、クリスエスはm-aに尋ねる。

「泡麦ひえ殿が護衛で行かれるそうですから大丈夫でしょう。kentax殿は別件があるそうですが、代わりによだか殿を派遣すると。」

現在、しおまねきは情報収集のため、城にはいない。そのため、内政のほとんどはクリスエスが担っている。

「それなら安心して任せられそうですな。私はここ数日内政が忙しく、身動きが取れませんゆえ。」

今、クリスエスの願いを聞くなら、休みが欲しいとでも言うだろうか。疲労を取ってくれ、とでも言うかもしれない。

「ここ数日、あまりお休みになられていないご様子。お身体をご自愛ください。」

m-aはそう言うと書類を持って、部屋を出ようとする。そして、何かを思い出したように振り向いた。

アナザーストーリー:異世界七夕日和3 

「ヲキチ、出立の準備はできたかい?」

ぐへへPはどうやら七夕などには関係なく、どこかへ出発しようとしているらしい。

「もう少し待って。えっと、これがお父様へのお土産、こっちが七十の……。」

ヲキチの目の前には、箱や袋がたくさん置かれている。

「今回の目的はお土産じゃなくて、僕らの結婚の挨拶に行くことなんだけどなぁ。」

ヲキチはすでに王妃のように周囲から扱われているものの、未だ婚約に留まっていた。しかし、ついにぐへへPが、正式にヲキチの両親に挨拶を行うことになったのだ。

そうなると、結婚という二文字が次第に現実味を帯びてくるはずなのだが、ヲキチはそこまで重く受け止めていなかった。

「今からそんなに緊張してたら、お父様とお会いする前に倒れてしまいますよ。」

ヲキチはぐへへPがいつもより緊張しているのを見抜いていた。一国の王なのだから堂々としていればいいのに、でも、そういう真面目なところも魅力だななどと、惚気たことを考えていた。
ぐへへPの出立に合わせて内政官たちは数日間の王が不在の間の準備に追われていた。

アナザーストーリー:異世界七夕日和2 

「しかし、たしかに不思議ですね。こんな紙で願いが叶うとは。」

ラングドシャPは自分が願い事を書いた紙をひらひらさせている。

「そう言いながらきっちり願い事書いとるんが、ズクさんよな。」

ラムドPは笑いながら、飾り付けを終えて梯子を降りる。図書館の入り口の上側から笹を垂らすように置いた。今日、図書館に来た人には願い事を書いてもらおうと切身魚は考えている。

「ラムドPさん、ありがとうございます。そういえば、この七夕という文化には、織姫と彦星という男女のお話もございまして、せっかくですからお茶でもしながら語ると致しましょう。そろそろナチュラルPさんもいらっしゃるはずですし。」

切身魚は腕に抱いていた猫を地面に下ろし、お茶を入れる準備に入った。ちょうどドアを開く音が聞こえる。お茶会を催すということで、切身魚は学園長をご招待していたらしい。

「語るのは一年に一度しか会えぬ男女の話。さて、この国を治める男女は、いかにお過ごしのことでしょうか。」

切身魚は王宮にいる仲睦まじい王と王妃のことを思い浮かべるのだった……。

アナザーストーリー:異世界七夕日和1 

「私たちと異なる世界にある日本という国では、このように細長く切った短冊という紙に願い事を書いて、笹という木に飾るそうですよ。」

切身魚は7月7日の朝から短冊づくりに勤しんでいた。地下にある本を読んでいた時、偶然日本という島国の文化に関する本を見つけた。レミルメリカにそんな国があった記録はない。どこからもたらされたものなのか、そんなことは切身魚には関係ない。本を読み、知識を蓄える。できそうなことを時に試してみることは少なくない。

「切身さん、できたぞ。」

笹を持ってきてくれるように頼んだラムドPは、切身魚の話を聞いて七夕という別の国の文化に興味を持ったようで、飾り付けを手伝うことを名乗り出た。

「こがいな紙に願い事を書いて飾るとは、不思議なことをしんさるな。」

ラムドPは不思議そうに小さな長方形の紙を眺めている。

「せっかくですから、こっちは書かせてもらいましたよ。」

ラングドシャPは、切身魚がいつも座っている受付の机の上で願い事を書いたようだ。
#ボカロ丼異世界ファンタジー

かつての大戦で、ごーぶすはこのスキルを使い、プロムナードの街を殲滅した。

機械すら腐蝕させるこのスキルは敵味方問わず恐れられ、猛毒に侵された場所は、いく日もその影響を受ける。戦いの中、誰が言い出したのか、ついた称号がライチョー隊長Pであった。

ごーぶすは自分のスキルが破壊を生むことを知っている。だから、使わなかったのだ。

しかし、命の危機に瀕したごーぶすには慈悲の心などない。撃たれたら撃ち返す、やられたらやりかえす。ずっとそうして生きてきた。

そして、今、春沢翔兎とそらうみれいの真後ろには、その猛毒が迫っていた。

「えいさん、後ろから何か来てる!」

春沢翔兎はそらうみれいのいる方向に跳んだ。最大速度でそらうみれいを掴んで横に跳びのく。幸い、青紫色の液体のようなものは動きは遅い。

ドイルは、春沢翔兎が横に跳んだことをサーチで捉えていた。

逃げようとしているのか?
魔方陣を狙った理由を問いただすまで逃すわけにはいかない。ドイルも春沢翔兎を追うように横に走る。その時、爆煙が晴れ、ドイルも視認した。そこには青紫色の世界が広がっていた。

#ボカロ丼異世界ファンタジー

@Kirimisakana たんに書きたかっただけなのでwww 2人はああいう風にあって欲しいと思います。

ごーぶす、ライチョー隊長Pのスキル
"成レ果テ"

雷鳥という鳥を知っているだろうか。

夏は褐色、冬は純白と季節によって羽根の色が変化することで有名だが、このスキルは、まさしく世界の色を変える。雷鳥は、ドイルがかつていた世界では、絶滅の危機に瀕している。
その原因の1つは人間という種族が山に撒き散らしたゴミに混じる病原体、ウイルスによるニューカッスル病、寄生生物によるロイコチトゾーン感染などが引き起こされるためであると言われる。

ごーぶすのスキル"成レ果テ"は、まさに病原体を体内に取り込み、自らの技として昇華させた雷鳥の如きものである。このスキルは、自分の周囲に青紫色の猛毒を持った沼のようなものを発生させる。気化するものではないため空気中には蔓延しないが、触れると身体には猛毒が侵入し、激痛と共に死に至る。

この死は動植物、あらゆる物に等しく訪れる。だからこそ、ごーぶすはこのスキルを封印していた。セレスティアの草原にいれば、このスキルを使わなくて済む。そう考えていたのだ。

@Kirimisakana ありがとうございます😊これは本編へとつなげていきたい!

#ボカロ丼自己紹介タイム

ボカロ丼異世界ファンタジーのDiscord、適当に稼動中です。興味がある方はご一報を!

ボカロ丼異世界ファンタジーのDiscordを作りました。本編では語られない設定等が更新されたりするかもしれない。お暇な読者の方(?)は是非お越しください。入りたい方には招待コードをお送りします。

「ととさんも、逃げよう。」

(おそらく目の前のあいつは俺より早い)
春沢翔兎はさっき、相手の姿を追うことができなかった。それどころか、気づいた時には魔法攻撃が目の前まで迫っていた。詠唱のタイミングも分からない。

「あいつは俺より早い。どちらかが囮になるしかねぇ。」

春沢翔兎は決して弱くない。そらうみれいと組んでから、数々の追っ手を返り討ちにしてきた。今はそんな話はどうだっていい。

「ここから、撃つ。その隙に、離脱する。」

ジオで生み出した機械人形の隙間からあいつを狙うのか?この煙の中じゃ無理だ。撃つことで正確な位置がバレて逆に魔法を喰らうかもしれない。

「ダメだ。撃つな。どうせ俺の体力はもうもたねぇ。」

まもなく煙が晴れる。仕掛けるならこのタイミングしかない。残りの体力全てを使って特攻して、そらうみれいの逃げる時間を稼ぐ。

「えいさん、合わせろ!」

そう言って駆け出そうとした時、春沢翔兎は気がついた。
後ろを振り向く。
背後に迫る悪意。
なんだ、なんなんだこれは。

地面を這う青紫の液体が自分とそらうみれいのすぐ後ろにまで迫っていた。

爆煙が薄くなると、そこに見えたのは多くの影、いや、あれは機械だ。よく見ると肩を組んで壁のようなものを作っているのは、人の形をした機械人形だった。

スキル"ジオ"
魔力を使い自立駆動する機械人形を生み出すことのできるスキルである。春沢翔兎自身にも、この機械人形がどこで精製されているのかは分からないが、魔力が続く限り機械人形を生み出し、操ることができる。機械人形には意志はなく、春沢翔兎の思念によって行動する。

春沢翔兎は、ドイルからの攻撃を受ける直前、スキルで大量の人形を生み出し、そらうみれいを庇った。そのおかげで自分を守るのが遅れてしまった。爆煙で相手から姿は見えていないだろうが、自分でも分かる。あと一撃を受けたら終わりだ。爆発が近かったからか、右手と右耳の感覚もない。

「えいさん……生きてるか?」

爆煙の中、春沢翔兎は小声でそらうみれいに問いかける。

「生きてる。あいつ、強い。」

機械人形を介して声が聞こえた。

「ああ、段違いだ。煙のせいで姿が見えてないだろうが、なくなればまた攻撃が来る。だから、えいさんだけでも逃げてくれ。」

ごーぶすがスキルを発動している頃、ドイルの目の前では、ムーンゲイザーによる爆煙が消えかかっていた。

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、大天使の加護
レベル:90
経験値:34994523
体力:6000
魔力:9094(9999)
攻撃:1200
防御:5700
敏捷:7500
状態:自動魔力回復、魔法無効(光)、闇魔法効果上昇

魔力を使ったが、ダメージは受けていない。
エイの姿をしたもう1人の本名がわからないため、サーチを使うことはできないが、春沢翔兎の方は確認済だ。

春沢翔兎
称号:
種族:獣人族
固有スキル:ジオ
レベル:58
経験値:ーーーーー
体力:320(2800)
魔力:300(1000)
攻撃:1000
防御:450
敏捷:2000
状態:敏捷力向上レベル3、高速移動レベル2

正直、倒してしまっても構わないと思って放った技だったが、ギリギリ体力も残ったようだ。魔力が減っているところを見ると、何らかの魔法を使って俺の魔法を防いだらしい。

マップでも、春沢翔兎の赤い丸はその場を動いていなかった。

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