★設定放出(という名の怪文書)

星空の背景に漆黒の木々が映し出されていた。
僅かな風と無数の枝葉が揺れる音だけが聞こえる丘の上で、
琴葉茜は今もそれを探していた。

開けっ放しにしたバックドアに腰掛け、白い息を吐きながら星図に印を付ける。
よれよれになったノートと星図をひとしきり眺めた後、目の前に据え付けた
望遠鏡のハンドルに手を掛けた。

「・・・」

レンズの覗き込んだまま慎重に架台を回す。

「・・・〇〇時現在、方位80°高度40°エリア探索完了。」

一度目を離してノートに×印を入れるとまた同じようにレンズを覗き込んだ。

「・・・」

しばらく繰り返し何時の間にか肌寒さを感じ始めた頃、
ようやく上着を荷台からつかみ取った。

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市街地から30分程走った先にある丘の上。
崖の先から見下ろすと、平野が水面のように輝いていた。
客観的に言ってこの場所は星を見るのにあまり適していなかったが、
彼女にとっては光害も関係がない。

それは恒星よりも近く、太陽系内に姿を現すはずだからだ・・・。

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