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「火をつけよ」

指示を受けた兵士が片手の松明で足元の藁に火を放つ。藁の上に建てられた十字架には、もはや生気を失った顔の男が貼り付けられている。足元に火が迫っているというのに顔色ひとつ変えない男はむしろ不気味である。

そんな男の顔を、表情ひとつ変えずに動かさず見つめる男がいる。

クリスエス。異形して狼か龍のようにも見える頭部をもつ者。
彼は敬虔なミコエル教の信徒である。
敬虔すぎる彼の思想は、ミコエル教以外の宗教を認めることはない。
教義に違反する者、異なる宗教に心酔する者を悉く炎に包んで来た。その容赦なき様子からついた二つ名が"火刑執行人"である。

「異端者には"死"あるのみ。この炎こそがミコエルを讃える讃歌となるのだ。」

うううううううう………
縛られた男から呻き声が漏れる。火をつけた兵士は見ていられなかったのか、すでにその場にいない。

だが、クリスエスは目を離すことはない。なぜならこれはミコエルに掲げる炎なのだ。彼の瞳には燃え盛る十字架が映り込む。

スキル"異端審問"ー彼の前ではいかなる嘘も意味をなさない。

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