街道を兵士たちが走っている。彼らは雨の中を必死に現場に向かっていた。
「いそげ、雨に負けるな。」
ひどい雨が大地を打つ音に合わせて、ぬかるんだ地面を走る兵士たちの足音が響く。
ミコエル教の"雨乞いの儀"の成功により"レミルメリカ"の地には久しぶりの雨が降っている。そんな時、城にいた兵士たちに出動命令が下ったのだ。
街道に大量の魔物が出現し、行き交う馬車を襲っているとのことだ。ここ最近、魔物の動きが活発化している。
ようやく現場にたどり着いた時、兵士たちはそこに広がる光景に言葉を失った。
「ひどい……」
誰ががつぶやく。
兵士たちが見たのは魔物に襲われたと思われる馬車の一団だった。
馬車はめちゃくちゃに壊され、馬車に乗っていたのであろう人々の遺体が散らばっている。馬も死んでいるようだ。見た限りで生存者はいない。
おそらく抵抗したのだろう。数体の魔物の死体もある。
降っている雨が、血を地面に流し、川のようになっている。その惨状に兵士たちは呆然と立ち尽くしていた。