爺やの後ろには馬車が控えている。
「最後だから今日1日自由にさせてと言ったはずだけど?」
彼女は人が苦手だった。人が嫌いなわけではない。ただ、相手の気持ちを読み取ることに慣れていないのだ。
だから、彼女は森で自然と触れ合っていた。彼らに言葉はない。むしろそれが心地よかった。
「ご主人様が予定を早められたのです。すぐにでもお戻りください。」
どうせ逆らったところで無駄だ。彼女は爺やが現れた時点ですべてを諦めていた。いつもそうだ。私の思い通りになることなんて何もない。
だから、私は何もしない" ことを決めた。
使命?責任?
そんなものは知らない。
「わかりました。」
彼女は鹿の死体が入った袋を爺やに手渡し、目の前に用意されていた馬車に乗り込む。しばらくこの森ともお別れだ。
彼女はこの後、王都にある学園に通うため、慣れ親しんだ土地を離れることになっている。
「今夜、お立ちになる前には鹿肉を使った料理をお出し致します、"ユーリ姫様"。」
「姫って呼ばないで。」
彼女は刀の柄を握りしめた。まるで、自分の信じるものはこれだけだと言わんばかりに。
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