another story C2
「ご苦労、下がっていいぞ。」
兵士から受け取った報告書に目を通すと、手を振って出て行くように指示を出した。
「このタイミングで人語を話す魔物が出現するとはな。」
"トカゲアザラゴン"なる魔物の存在は王国に激震をもたらした。魔物を喰らう巨大な魔物。生態系の頂点にでも君臨すると言うのか。そのような魔物を王国が放置したとあっては、国の威信と存続に関わる。そして、王は"トカゲアザラゴン"の討伐に莫大な懸賞金をかけ、最重要クエストに指定した。
異端審問官・クリスエスの元にもその報告が届いたのだ。
「こんなことに時間を割いている場合ではないと言うのに……。」
ミコエル教のためにKAIから告げられた動き出した4人の異端者の所在を探らなければならない。クリスエスにとっては、強き者を待っているトカゲアザラゴンよりもそちらの方が重要だった。
しかし、王からの勅旨を無視することはできない。と言っても、彼のスキル"異端審問"は基本的には対人スキルである。
「致し方あるまい。」
そう言ってクリスエスはメッセージの魔法を発動した。