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アナザーストーリー:司書1 

正門から王城へとまっすぐに続く道を歩き、工房の横にある道を左に逸れると図書館のある通りに出た。王城に続く道は、多くの人が行き交うため改修されることも多いが、一本横に逸れたこの通りは、これだけ街の風景が変わった後もあまり違わない閑静さを保っている。

工房の裏手にある塀を越えて、百日紅の枝が覗いている。膨らみ始めた蕾が、近く訪れる夏を教えてくれる。鮮やかな紅色が燃えている景色を思いつつ、木々が黄色に染まる季節まで長く私を楽しませてくれる枝たちを下から眺めると、蕾を支え嫋やかに枝垂れる葉が一枚一枚違った顔を見せてくれていることに驚いた。

工房の裏手を右に折れ、武器屋、宿屋の裏手を横目に少し歩くと、左手に赤い旗がはためく建物が見えるだろう。それが図書館の目印である。今日は本当は閉館日なのだ。図書館が開くのは週に4度。いつもなら学園の制服に身を包んだ初々しい子どもたちや、常連らしい者たちがちらほらと姿を見せるのだけれど、図書館のドアから中に吸い込まれていくように消えていく人々がいないということは、やはり図書館は閉まっているのである。

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