アナザーストーリー:選抜1
セレスティア王国剣闘師団は、選ばれし者たちの集団である。有事の際には王国最大の戦力として前線で戦い、日頃は鍛錬に余念なく、王国近隣の魔物討伐も行う。その命懸けの仕事は常に死と隣り合わせと言われ、登竜門と呼ばれる厳しい選抜試験で振るい落とされる者は後を絶たない。はずなのだが……
コンコン、ドアがノックされる。
「お〜開いてるから入れ、入れ。」
日夜厳しい戦いを強いられているとは思えないほどの緩い言い方である。
「失礼します。kentax団長、お呼びですか?」
ドアを開けて入って来たのは精悍な顔付きの若者。それなりにしっかりした体躯をしているが、まだ幼さの残る出で立ちだ。
「よだか、お前、学園に行け。」
入って座る暇もなく、よだかと呼ばれた若者に命令が下る。
「嫌です。」
返答も一瞬だった。その間、まさに1秒にも満たない。
「よだか、いいか、お前はまだ若い。剣闘師団で戦うだけが人生じゃない。同世代の友人を作り、見識を広めて来るんだ。だから、な?学園に行ってこい。」