アナザーストーリー:招かれざる客4
本の発する独特の香りが男の気分をそれとなく高揚させた。ふと見ると、受付の灯りがまだ付いている。まさかこんな時間に司書がいることはあるまい。消し忘れたか、常に灯しているのかは知らないが、そんなことはどうでもいい。目的のものを見つければ他のものは必要ない。
「さて、降りるか。」
地下三階に行くため、一階から階段を降りようとした瞬間、男は異様な浮遊感に包まれた。階段を降りたはずなのに、なぜか降りている気がしない。なんだこの異様な感覚は。
「大勢でのご来館かと思いましたが、あなたお一人ですか。こんな夜更けにどちら様でしょうか。」
男の目の前には、例の司書が浮いていた。
「おっと、こんな時間に司書様はまだお仕事ですか?」
まったく気配を感じなかった。まるで突然目の前に現れたかのようだ。冷徹な目がじっとこちらを捉えている。
「質問しているのは私です。もう一度聞きます。どちら様ですか?」