アナザーストーリー:招かれざる客14
ビリッ。切身魚が突然、本のページを破る。
司書が本を破るなどあってはならない行為。だが、この行為にはそれに見合う対価がある。破ったページを空中に投げると、光りを放ち、姿を変える。
「ヒュパティアはキリスト教徒に虐殺され、アレクサンドリア図書館は異端とされ破壊された。その悲劇を具現化するのが私のスキル。私は本の一部を千切ることで、その場に出るものを一時的に召喚する。」
自ら本を破るという行為は、司書である切身魚にとって、自らの身体を引き裂くようなものである。まるで牡蠣の殻に身体を切られたヒュパティアのように。だからこの力は使いたくない。
切身魚が破ったページから召喚されたのは、一本の槍。
「ほう、その槍は……グングニルか。」
夕立Pが魔力を貯めながら切身魚の召喚した槍に興味を示した。
「そう。アース神族とヴァン神族との争いで、オーディンが投げた名も知らぬ槍。それが後世に名付けられたもの、神の槍"グングニル"でございます。」
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