「ととさんも、逃げよう。」
(おそらく目の前のあいつは俺より早い)
春沢翔兎はさっき、相手の姿を追うことができなかった。それどころか、気づいた時には魔法攻撃が目の前まで迫っていた。詠唱のタイミングも分からない。
「あいつは俺より早い。どちらかが囮になるしかねぇ。」
春沢翔兎は決して弱くない。そらうみれいと組んでから、数々の追っ手を返り討ちにしてきた。今はそんな話はどうだっていい。
「ここから、撃つ。その隙に、離脱する。」
ジオで生み出した機械人形の隙間からあいつを狙うのか?この煙の中じゃ無理だ。撃つことで正確な位置がバレて逆に魔法を喰らうかもしれない。
「ダメだ。撃つな。どうせ俺の体力はもうもたねぇ。」
まもなく煙が晴れる。仕掛けるならこのタイミングしかない。残りの体力全てを使って特攻して、そらうみれいの逃げる時間を稼ぐ。
「えいさん、合わせろ!」
そう言って駆け出そうとした時、春沢翔兎は気がついた。
後ろを振り向く。
背後に迫る悪意。
なんだ、なんなんだこれは。
地面を這う青紫の液体が自分とそらうみれいのすぐ後ろにまで迫っていた。
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