アナザーストーリー:異世界七夕日和5
「そうだ、クリスエス殿、図書館の司書である切身魚さんよりお聞きしたのですが、異国では今日、七夕というお祭りのようなものがあるらしく、紙に願いを書いたもの飾るそうですよ。」
出口の前でm-aは立ち止まってそんなことを言っている。
「願い、願いか。今の私の願いは、王のご挨拶がうまく行くことだけです。」
クリスエスはこんな時でも王の心配をしているようだ。
「たまにはご自分のことも大切にされてはと思いますが、クリスエス殿には釈迦に説法ですな。まあ、七夕は、なかなか会えぬ男女の祭りでもあるとのこと。クリスエス殿もたまには早い時間にご帰宅を。」
m-aはそう言うと部屋から出て行った。
「ふん、男女の逢瀬か。」
クリスエスはそう言うと、再び書類に目を落とした。クリスエスの頭の中には、七夕のことなど残らなかったが、願いを叶えてくれるなら……と、ふと思い浮かんだのはトカゲアザラゴンの討伐という言葉だけだった。