アナザーストーリー:異世界七夕日和9
女性は一礼すると、こるんの横を通って宿屋を出て、街の雑踏に向かって行った。一瞥すると冒険者や魔物ハンターに見えなくもないが、こるんは彼女の動作に隠しきれない貴族の娘としての振る舞いを見た。
「森の戦姫ユーリさんか。ちょっとお近づきになってみたいけど、怖い感じするから、男の人とか寄ってこないかも。」
吟遊詩人はユーリの後ろを追いかけていった。その目は新しいおもちゃを見つけた子どものように輝いていた。
「ユーリさんの顔、たしかにちょっと怖いですよねえ。別の世界では、今日は男女の逢瀬の日だというのに困ったちゃんですね。」
こるんがユーリと宿屋で邂逅した場面を遠く離れたハザマノセカイから見ているのは大天使ミコエルだった。こうして、時々、地上の様子を見るのはミコエルの楽しみの1つだ。
「TOMOKI++さん、ユーリさんのこと、もうちょっと柔らかい感じになるように、運命のお相手と出会うくらいのことをしてあげてくださいな。」
大天使ミコエルは、運営神TOMOKI++のところに遊びに来ていた。