尾棘の毒を打ち込まれた春沢翔兎は気を失った。脚から入った毒がどこまで中和できるかは賭けでしかない。そらうみれいは、引き際を見定めていた。
「引くよ、ととさん。"ウォーターベール"」
そらうみれいの魔法が発動し、水の幕が2人を覆う。水の幕によって景色と2人の姿が同化していく。そして、全身が隠れたところを見計らって、そらうみれいは春沢翔兎の身体を抱き抱え、スキル"月ノ水"を発動。身体が浮く。誰かを抱えて泳ぐには力がいるため、それほどの速度は出ないが、姿は見えていないはずだ。そらうみれいはゆっくりと移動を始めた。
ドイルには、その姿は見えないがサーチによって2人の場所は分かっている。姿を隠したということは撤退するつもりだろうか。
しかし、その刹那、ドイルは見た。先ほどまで地面をゆっくりと動いていた毒の沼が少しずつせり上がっている。
まさか、この毒は相手を追尾するのか?
理屈は分からないが、明らかに毒はえいさん、ととさんを追いかけようとしていると思える。
「そこのえい!その毒、追尾してくるぞ!」
ドイルはなぜか大声で叫んでしまっていた。
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