アナザーストーリー:小さな火種2
アビサルの者たちはお互いに故郷の話をすることなどほとんどない。過酷に生きるためだけの環境の話をしても仕方がないからだ。そして、アビサルが原初の国と呼ばれる所以はそれだけではない。
このアビサルではレミルメリカで唯一"決闘"が認められている。生き残るために戦い、強くなっていく。それだけが自らの価値を認めさせる手段なのだ。
そして、今、熱帯雨林のある地区の獣人がまさに決闘をしようとしていた。
「くそねみぃ。」
片方に立つのは水色の毛皮をもつ兎の獣人。寝起きなのか、寝不足なのか、フラフラしている。
「今日こそ勝たせてもらいます。」
熊の獣人だと思うが、かなり若く見える。
「いや、やる気だせよ、ひよわ。相手に失礼だろ……。」
そう言うのは、ハリネズミの姿をした獣人だ。
「そういうお前こそ、本気で戦ってやれよ、Mr.Hedgehog。」
京橋ひよわ、そして、Mr.Hedgehog。
獣人族の2人は、どうやら決闘を申し込まれたようだ。