アナザーストーリー:海底の横穴3
「大丈夫ですよ。雨乞いの儀が終わったら休みも取れますから。」
随分と疲れているのだろう。遠目からではよく分からないが……。
海洋評議会が多忙なのは、あの頃から変わっていないのだろう。そらうみれいがまだプリズムにいた頃から。
しょこらどるふぃんとシーラカンスの会話を聞き終えたそらうみれいは、姿を隠したまま神殿付近を探索した。
どうやら海底ミコエル神殿は本当に儀式に向けた準備を行っているようだ。祭壇用の資材が次々と運び込まれている。
「そろそろ……戻る。」
そらうみれいは、春沢翔兎の元へ戻るために方向転換。水音をさせることもなく、泳いでいった。
だが、姿を隠しているはずのそらうみれいに気が付いた者がたった一人。
「おやおや、情報収集のために海底ミコエル神殿に来てみれば、面白いものを見つけてしまいましたねえ。」
水に同化した液体状の身体は、完全に水中に擬態している。
「少しついていってみますか。」
そう呟くと、そっと水が動き出し、そらうみれいを追跡した。