アナザーストーリー:実験レポート1
「どうやら実験は成功だったようです。」
黒い影から突然声が聞こえた。部屋は暗い。明かりがほとんど付いておらず、視界が悪くなっている。
「あの熊の獣人さんは力を手に入れられた。私たちはデータを得た。win-winじゃないですか。」
女の声だ。こちらも暗い中ではっきりと表情が読み取れない。
「残念ながら兎の獣人によって軽々と倒されてしまったようですが。」
突然室内に光が灯る。1枚の磨りガラスのようなものに投影された映像が投影される。そこに映っていたのは、地面に倒れ臥す巨大な体躯と、全身に炎のような光を纏う兎の獣人だった。
「"マケッツ"がこんなところにいるなんて、残念でしたね。」
倒れた熊の獣人の身体が邪気でも抜けたかのように小さくなっていく様子が映る。
「効果の持続は6時間程度。能力は向上しますが、あとの反動は経過観察です。」
黒い塊は淡々と答える。まるで理科の実験の結果を口頭で報告しているだけのような口ぶりだ。