俺は周囲を警戒しながら見渡す。これだけ人がいると誰かは分からないが、大天使ミコエルの力を使用している俺にこれほどのプレッシャーを与える相手。刹那、俺の視界に漆黒の服を見に纏った女が映った。
ゴシック・アンド・ロリータ。転生前の世界で、ゴスロリと呼ばれていた服装をレミルメリカで見るのは初めてだった。女はこちらに歩いてくる。他の受験生たちはこのプレッシャーに気がついていないのか、全く反応を示さない。警戒する俺の近くまでその女はやって来る。
「はじめまして。越黒リタです。」
越黒リタ。聞いたことのない名前だ。スカートの両端を恭しく摘むと貴族の令嬢ように足を後ろに引いて軽く頭を下げる。やはり、このプレッシャーはこの女から発せられているものだ。魅惑的な笑顔を見せているが、近くに来ると俺の感覚が「離れろ」と警報を鳴らしている。
「ド……ドイルです。」
俺はできる限り冷静に返答した。大天使ミコエルの力を纏っているからいきなり攻撃されてもやられることはないはずだ。
いったい何者なんだ……。
「あなた、このあたりの人じゃないでしょ?」