another story S-3
「いえ、ここで争うのは愚策。失礼な物言いになったことを謝罪しましょう。」
一触即発かと思われた空気をKAIの一言が緩ませた。
クリスエスも、決して納得はしていないようだが、KAIから視線を外す。
「ここはミコエル教徒以外が来る場所ではない。早々に立ち去れ。」
食えぬ男だ。どこまでが本気かわからん。とでも言いたげだが、クリスエスは再び燃え落ちた十字架に視線を戻した。
それを見て、KAIもクリスエスに背を向け、部屋を出ようとする。
「そうそう、クリスエスさん。以前から気にしておられた"例の4人"が重い腰をあげたようですよ。」
置き土産のようにそれだけを伝えると、KAIは部屋を出ていった。
「動き出したか、異端者共め。ミコエル教異端審問官、このクリスエスが、貴様らの息の根を止めてやる。」
そう言ったクリスエスの目には、まだ炎の十字架が映っていた。