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兵士たちは躊躇していた。熊の魔物すら捕食するような敵とどのように戦うというのか。彼らは兵士ではあるが、戦士ではない。スキルを鍛え上げた者たちほどの力はないのである。

ふと見上げると怪物がこちらを見ている。 のが分かった。
その目は黒く光り、雨の中でも的確にこちらを捉えている。

本当にやるしかないのか?

そう思ったとき、兵士の耳に声が響いた。

「引け、人間共。そのまま下がれば危害は加えぬ。」

誰の声だ?

「聞こえぬか?武器を下ろして下がれ。」

まさか、魔物の声なのか?兵士たちはお互いに顔を見合わせる。兵士の1人が恐怖で震えながら武器を落とした。

それもそのはずだ。魔物が言葉を発するなど聞いたことがない。ただでさえ、強い魔物に、知性がついたかと思えばそれだけで恐怖である。

「戦を前に武器を落とすとは、お前たちは敵にすらならぬようだ。」

頭の中に響くような重い声だ。

「良いか、弱き者たちよ。我は強き者を望む。」

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