魔物の声がもはや兵士たちに興味を失ったようにも聞こえる。それはそうだ、もはや敵対できるような相手ではない。神話の産物であるドラゴンですら、人の言葉を喋ることはできないのだから。
魔物は続ける。
「我は"トカゲアザラゴン"。古より君臨する者。天空の頂にて、強き者を待っている。」
魔物はそう言うと、背中の翼を羽ばたかせ、瞬く間に上空へと消えていった。
トカゲアザラゴンの羽ばたきによって雲が割れ、周りには雨が降っているというのに一部だけ太陽の光が照らされる。
羽根を震わせるだけですべてを破壊しそうなほどの強敵の出現。
後に残された兵士たちは雨に打たれながらしばらくの間、何もできず立ちつくすしかなかった。
"神獣・トカゲアザラゴン"
この一件以来、"レミルメリカ"では、魔物を喰らう魔物の存在が噂されるようになる。
強き者……あれだけの魔物を倒せる者が本当に現れるのだろうか。