外伝:出会い1
まだ時々夢に見る。
迫り来る炎、紅く染まった部屋。
私は独りだった。
前の日の夜は、久しぶりにお父様に絵本を読んでもらった。
寝る前には額に優しくキスをしてくれた。
でも、目が覚めると、そこは炎の海。
お気に入りのお人形、いつも遊んでいたお馬さんの乗り物、お母様に欲しいと駄々をこねて買ってもらったウサギのぬいぐるみ。
私の世界の全てが燃えていた。
「お母様!お父様!」
あの時、本当にそう叫んだのかどうかは覚えていない。でも、夢の中の私は必死に両親を呼んでいる。
返事はない。
代わりに炎がパチパチ、パチパチと私を呼んでいるかのように音を鳴らす。
私はベッドから動けない。
世界が紅い。
息が苦しい。
喉が熱い。
目を開けていられない……。
私はベッドに横たわろうと思った。
そうすることで楽になれると思ったから。
これは夢だ、きっと夢だ。
布団をかぶってじっとしていれば朝にはお母様が起こしに来てくれる。