アナザーストーリー:首都への道程(序)
馬車が到着した場所は森から少し離れたところに立つ貴族の屋敷だった。
「着きましたぞ、ユーリ様。」
爺やが馬車のドアを開ける。
「そう……。」
この屋敷はもう彼女にとって、自分の家ではない。私の居場所は、あの森の中だけだ。
「ユーリ、お前は"リッカ"の貴族として正しい振る舞いを……。」
「"リッカ"の貴族の娘は、あなたの歳には代々プロムナードの貴族の男と婚約しているのにお前と来たら……。」
「お前をセレスティアの学園に入れる。貴族としての振る舞いを身につけ、婚約者を見つけて来い。」
「貴族の男性と結婚するのが、あなたのためなの。子どもを産んで、育てることが家を守ることになるのよ。」
もううんざりだ。
自室に戻ったが、もう荷物はほとんど残っていなかった。
どうやら生活用品は先に送られてしまったらしい。
残ったのは、この剣とセレスティアまでの数週間の旅をするための服くらいだ。
さすがに、独りでセレスティアまで行けとは言われなかった。
そのくらいの良心は残っていたらしい。