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アナザーストーリー:司書4 

今、彼女はこの図書館の管理を任されている司書であるが、初めてこの図書館へ来たのは学園の二年生の頃のことであった。学園の退屈から逃れてこの館の前に立ち、まるで何かに吸い込まれるように中へ入った。

入った目の前に座っていた一人の女性が「あら、あなた"魅入られた"のね。」なんていうものだから、応えに困っていると「あなた、司書に向いているわ。」と一冊の本を差し出してきた。その時の女性の表情が不思議と私の記憶に刻まれた。これという特徴もない顔立ちであるのだが、大人しく優しそうな顔をしている。色が白いからなのか、図書館から外へ出ていないからなのか、お世辞にも血色が良いとは言えないその顔は少し丸みを帯びていた。それでも、本を差し出したその手の指先は少し黒みがかっており、朝夕と本を手にとっている者のそれを感じさせるものであった。

それから約十年の間には、波瀾があった。学園を出てからの彼女は、本と無縁の生活を送っていた時期もあった。そうかと思えば、時折、無性に本が読みたくなり、何日も篭って時を忘れてしまうこともあった。

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