アナザーストーリー:小さな火種3
「TAKUMIって呼べって。呼び方にこだわりはないけどさ。」
随分と気を抜いているようだ。
「油断!」
ミストファイナー。若手の中でも最近メキメキと力をつけてきた熊の獣人だ。どこから出したのか、巨大なハンマーを振り上げ、兎とハリネズミの獣人に襲いかかる。
「甘いっつの。」
京橋ひよわは、相手の動きを読んだかのように軽く身をかわす。水色の毛皮がふさりと揺れる。
「じゃ、俺が行く。この後、ノヒトとの約束があって、後がつかえてんだわ。」
Mr.Hedgehog、いやTAKUMIはクルリと身体を回すと、全身を針のついた球体に変え、ミストファイナーに向かって転がった。ガリガリという音を立てながら、針が地面を抉り、そのまま突っ込んでいく。
「止めてやるっ。」
ミストファイナーは、ハンマーを前に突き出した。真正面から受け止めるつもりだろう。その瞬間、針の球体は鋭角に曲がり、ハンマーの横をすり抜けた。
「TAKUMIさんのそれは、自在に動くぞ。」
京橋ひよわの方は避けた後、反撃する様子もない。