アナザーストーリー:小さな火種12
「そんなら行きますか。ミストファイナーくんのことも心配だしね。」
さこつと京橋ひよわも歩き出した。
このアビサルで力を求めることは決して悪いことではない。生き抜くためには当然のことだ。
ミストファイナーはここ最近一気に力を伸ばしてきた。熊の獣人族としての力も申し分ない。
しかし、長く戦いを生き抜いてきた者たちだからこそ感じる危うさがそこにはあった。
単に強い力を得るだけではそれはただの暴力だ。
ミストファイナーを鍛えながら、アビサルの戦士たちはその心の成長を心配していた。
原初の国、アビサル。そこは決闘によって強さを証明する国。
力を求める者たちがいるその国に、いまはまだ燻ったままの小さな火種が生まれていた。
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