アナザーストーリー:国境線の獣1
アビサルとセレスティアの国境は、石造りの関所で隔たれている。森と川のある国境には、プロムナード製の強力な魔道具によって高さ数メートルの結界がつくられ、空の往来以外はほぼ不可能。それゆえに2つの国を隔てる関所は、日々多くの人が行き交う場所となっていた。
「通ってよし。」
「次の方はこちらへ。」
「積荷の確認はBの詰所へ。」
兵士と事務員のような服装をした者たちが忙しなく動いている。
アビサルとの国境だけあって、獣人や冒険者、魔物ハンターの姿もちらほら見られる。
「やれやれ、ここ抜けるのにまだしばらくかかりそうだなあ。」
独り言をつぶやく1人の若者が列に並んで立っていた。
「この様子だともう少しだけどね。」
すでに列に並んで30分以上が経過している。
アビサルとセレスティアの国境は、火山の影響なのか常に気温が高く、立っているだけでじわじわと汗が滲んでくる。
ただ、あと数人でやっと自分の番が回ってくる。
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