アナザーストーリー:儀式の始まり1
雨乞いの儀は、早朝から始まった。
祭壇の周りには多くの民衆が集まっている。
「儀式を始める。」
まきエルの一言で、祭壇の上に火が灯った。
「神官たちよ、配置につけ。」
桐エルの声に合わせて、真っ白の装束とフードで顔の隠れた者たちが、列をなして祭壇を登っていく。その数、30名。
神官と呼ばれた者たちは、祭壇の上部まで上がると両端に列を形成した。
「太鼓をならせ。」
まきエルの指示に合わせて太鼓の音が鳴り始めた。
ドン……ドン……ドン……
信者たちは祭壇の階段の周囲に集まっており、そこには一本の道ができている。
信者の数は少なく見積もっても数千人はいるだろう。雨乞いの儀に合わせて大天使ミコエルが降臨するかもしれないと考え、信者たちが集まっているのだ。
雨乞いの儀がいつ執り行われるかについては、緘口令が敷かれていた。そもそも雨乞いの歌が完成するまでは執行できないことを考えれば、今日なのか、はたまた来月なのかも分からない。ゆえに、数千人単位で集まったことは、それだけミコエル教の信者が多いということだ。