アナザーストーリー:儀式の始まり2
「どうやら、始まるようだな。」
まきエルとも桐エルとも違う声だ。
その者が姿を見せた時、神殿を警備していたセレスティアの兵士たちは一斉に地面に膝をついて敬意を示した。
「よい、儀式の警護に集中せよ。」
その様子を見たまきエルが、その者の元へと歩み寄って行く。
「ようこそお越しくださいました。異端審問官様。」
まきエルも恭しく頭を下げる。
異端審問官クリスエスが儀式の場に姿を見せたのだ。しかし、共回りを連れていない。
クリスエスほどの強さがあれば必要ないのかもしれないが、つまりこれはクリスエス個人で動いているということだ。
「まきエル様、お久しぶりです。頭をおあげください。」
クリスエスの言にまきエルは頭を戻す。
「ご覧の通り、すでに準備はできています。あとは雨乞いの歌を捧げるのみ。」
まきエルは祭壇を見上げる。
「こるんという吟遊詩人を一目見ておきたく思いましてね。」
クリスエスの目的は吟遊詩人こるんを見定めることのようだ。
「そうですか、それでは特等席でご覧ください。共に参りましょう。」