アナザーストーリー:異端の目2
「龍人族の方には初めてお会いしましたので、驚きました。クリスエス様、吟遊詩人のこるんと申します。お見知り置きを。」
挨拶を交わしたこるんをクリスエスはじっと見つめていた。
「儀式の前にそんなにこわい顔をされたら緊張してしまいます。」
こるんはクリスエスに笑いかけた。
「これは失礼した。その若さで雨乞いの儀をされるとは、かなりの力をお持ちのようなので、つい。」
クリスエスは頭を下げた。
「いえいえ、人の身には有り余る光栄。それでは、行って参ります。」
こるんは、2人に頭をもう一度下げると階段をさらに登り始めた。神官たちの間を通って、火が燃える頂上へと辿り着く。
音楽隊の音がひときわ大きくなった。
クリスエスはそんなこるんの背中をじっと見て、まきエルに聞こえないように言葉をもらした。
「"人の身には有り余る光栄"か。あくまでも自らを人と言うのだな『魔族の小娘』よ。」
異端審問官クリスエスは吟遊詩人こるんが人でないことを見抜いていた。
まもなく雨乞いの歌が始まる。