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特別編:祭りの期間10 

その夜は特に蒸し暑く、湿度の高い空気が街全体を包み込んでいた。そこに祭りの熱気が被さり、そこは熱帯の檻の如くである。10時を回ろうかというのに、未だ街のざわめきは収まらず。この日、クロスフェードの街は、宵のうちから、珍しい人出である。信心でお祭りをする善男善女もあれば、避暑のために涼みがてらの人たちもあり、人ごみを楽しんでいるだけの風来坊もいれば、混雑につけこんで何か良からぬことを企む不届き者もないとは限らぬという具合である。人通りの多い、大通りの屋台では声をからして客を呼んでいる。しかし、それはせいぜい大通りだけであり、一筋入ったところにある図書館には人っ子ひとりいなかった。司書である切身魚は、祭りにはあまり参加せず、今日も図書館を開けて受付にある。

祭りの喧騒を避けて図書館の入口あたりをうろつく男が一人いる。図書館の扉の前で立ち止まり、中の様子を伺っている。その男は左右を確認しながら、そっと扉を開けて中へと入っていった。

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