特別編:祭りの期間12
たてごと♪は受付にくるりと背を向けた。
「残念です。」
しとり、しとり、しとり……
いつのまにか、たてごと♪の周りから水の滴るような音が聞こえている。
「"涙雨"」
たてごと♪は突然魔法を放った。たてごと♪の周りに生じていた水滴が、散弾のように受付に座る切身魚へと向かう。
「図書館ではお静かに願います。"モノローグ"。」
受付の前にある床がせり上がり、たてごと♪の水滴を防いだ。床の素材は固いのか、魔法による攻撃でも傷一つない様子である。
「スキル"モノローグ"。やはりあなたが切身魚さんでしたか。」
たてごと♪はすべて分かっていたかのように背を向けたまま話している。切身魚は、読んでいた本に栞を挟み込み、わざとらしく音を立てて本を閉じた。いつのまにか猫が膝から受付の上に飛び移り、フーッと毛を逆立てながら威嚇している。
「突然このような真似をして失礼しました。祭りの日であれば誰にも邪魔されることなくあなたにお会いできると思っていたものですから。」