アナザーストーリー:海底の横穴1
そらうみれいは春沢翔兎の傷が完全に癒えるまで海底ミコエル神殿の近くにある横穴に身を潜めていた。
「まったくこっぴどくやられたもんだ。魔力もほぼ空になっちまったから、動くに動けねえ。」
春沢翔兎は、横になりながらボヤいている。
「ととさん……治るまでじっとしてて。」
そらうみれいは、回復魔法は使えない。しばらくはこの横穴で静養するしかないのだ。
「そういえば……神殿が騒がしい。」
普段、海底ミコエル神殿は、あまり人の出入りもないのだが、随分と慌ただしくなっているように見える。
「雨乞いの儀が決まったからだろうさ。あとはもしかしたら、エイさんのことがバレたのかもな。」
春沢翔兎のことばにそらうみれいがピクリと尾棘を震わせた。
「プリズムは……離反者を……許さない。」
そらうみれいは、手に持った銃を構え直す。
「エイさん、そのことはもう……。」
春沢翔兎が最後まで言い終える前にそらうみれいは、動き出した。
「……偵察行く。」
そらうみれいは魔法でその姿を隠すと、横穴を出て行ってしまった。