アナザーストーリー:空欄3
「特に気になるのは、この学生でして。」
そこにあったのは『越黒リタ』という学生の書類だった。
「見てください。ここ、出生地が記入されていないのです。データベースとも照合したのですが、記録がなく、どうしたものかと。」
(闇姫Pめ、雑なことを……)
ノヒトが指を指した欄は、たしかに空白になっている。顧問Pは顔色一つ変えずにノヒトに同意を示す。
「たしかにそのようですね。本人への問い合わせをしておくことにしましょう。」
顧問Pはノヒトから紙を預かり、越黒リタのプロフィールを確認する。いつの間にか、他の教師たちはいなくなっており、教室にはノヒトと顧問Pの2人だけになっていた。
空欄になっているのは出生地のみ。
明らかにわざと飛ばして書いたように思える。
「ふん。貸しにしておくぞ、闇姫P。」
同時に、顧問Pのスキルが発動した。時間にしてほんの数秒。ノヒトはスキルが発動したことにすら気がついていなかった。