「どこに行くのですか?」
小金井ささらさんが口を開いた。
ユキちゃんの髪の毛を直していて全く話に入ってきていないと思ったら、このタイミングで入ってきてちょっと驚いた。
「その人形、髪型。あなたが噂の人形遣いさんですね〜っ。お会いできて嬉しいです。」
シオコさんはすっと手を差し出した。握手を求めているようだ。
小金井ささらさんは、突然の握手の求めに驚いたようだが、シオコさんの手にユキちゃんの手を持って握らせた。
「ユキちゃん、握手。」
これはこれで驚くべき光景だと思う。
「これはこれはご丁寧に!ユキちゃん、ううん、ユキちゃん、これは可愛らしい。」
握手をしながらシオコさんは唸っている。何だか不思議なノリの人だ。
「ユキちゃんかわいい。」
だめだ、こっちもカオスだった。シオコさんと小金井ささらさんの絡みは横に置いておいて、俺はmarさんに声をかける。
「シオコさんの後、すぐで申し訳ないのですが、市民証をつくって頂きたくて。」
marさんはカウンターの下から紙を数枚取り出しながらこちらを見た。