「そうなんですね。実は、昨日家まで行ったんですけど居なかったんで、もうプリズムに行ったんですかね。」
タダトモさん、プリズムと言ったか。たしかレミルメリカで唯一、海底にある国だ。
「だいたいお仕事に行く前日にはお食事に来られるんですけど、今回はまだ見えておりませんね。急ぎのお仕事だったのかもしれません。おっと、そちらの方、ご挨拶が遅れました。」
しおまねきさんが突然俺の方に話を振ってきた。眼鏡をかけた利発なおじ様といった雰囲気だ。俺はメニューからしおまねきさんへと視点を移す。
「ドイルです。初めまして。」
先に名前を名乗る。
「あなたがドイルさんですか。はなぽさんから聞きましたよ。一緒に隊長さんの暴走を止めたとか。私はしおまねき。この酒場"チャンネー"の店長をしています。」
ここでも噂されてたのか。ごーぶすさんの強さは密かに有名らしく、いつのまにか尾ひれがついて話が拡散されていそうだ。
「止められたのは、はなぽさんのお陰ですよ。」
ごーぶすさんを止めたのは確かに「クラフト」の力だ。嘘は言ってない。