越黒リタは気さくに話しかけてくる。自分がどれほどのプレッシャーを放っているか自覚していないのだろうか。そもそもどうして俺以外の周りの奴らは反応していないんだ?これだけの力を感じれば全員が戦闘態勢を取ってもおかしくない。
「最近、クロスフェードに来たばかりなので。」
ダメだ。越黒リタから目を離せない。すでに多くの受験生たちがステージに並んでおり、いつ試験が始まってもおかしくない。
「そうなんだ。私も最近クロスフェードに来たばかりなの。あなた、なんだか話しかけやすそうだったから、突然ごめんなさいね。」
普通の男なら喜んで話をするのだろうが、俺の背中からは未だに冷たい汗が消えない。
「いえ、俺も試験で緊張してるんで。」
俺はいつの間にか左手の拳をギュッと握り締めていた。それと時を同じくして、周りの受験生たちがざわつき始めた。
ゴゴゴゴゴ……