俺は金具とワイヤーを持って3人の元へ合流する。
「これでいける?」
俺が差し出した道具をみて、文月莉音は驚いたような表情を見せた。
「いけます、いけます。あとの組み立ては任せてください。」
文月莉音はそう言うとすぐに組み立てに入った。俺は周囲を警戒している小金井ささらに確認する。
「距離はあとどのくらいですか?」
自分のマップでも確認できているが、小金井ささらのサーチは距離を正確に言い当てた。
「ユキちゃんの歩幅……いいえ、残り300メートルを切っている。」
歩幅という謎のワードが聞こえたことは流しておこう。
「300……もしかして、さっきから遠くで木の動くような音がするような気がするのは、そのせいですか?」
かいなが心配そうに言った。鹿の足音はそれほど大きなものではないが、映像で見た鹿には大きな角が生えていた。それが木に当たって音を立てている可能性は十分にある。