腕力強化の力もあって、純粋な力押しの構図になっているようだ。
「ぐうぅぅぅぅ。」
だが、文月莉音の強化された力でも鹿を押さえ込むことはできない。
「莉音さん!」
かいなが叫ぶ。
「こっち。」
小金井ささらの一人がかいなの手を引いた。俺はまだ動かない、動いてはいけない。
かいなが移動したのを感じ取ったのか、文月莉音が飛び退いた。鹿は咄嗟に角を離されてそのまま前方に突っ込む。
あのくらいならすぐに立て直してくるだろう。そう思った時、どこからともなく声が響いた。
「もらったぁぁぁぁぁ。」
「チェストォ!」
男の声だ。どうやら他のチームも周りにいたらしい。俺たちが鹿と戦っている隙を狙っていたのか。
あそこか。鹿の頭上に槍を突き立てようとする男の姿が見えた。
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