本編
でかい。
俺の知っている鹿より数倍は。
「でも、学園に入るためには負けるわけにはいかないんでね!"ブースト""スナイプ""バイタル""連撃"」
ありったけの魔力を使って魔法を重ね掛け、そして、俺は鹿に向かって突撃した。
「くらえ、デカブツ!」
俺は最大の速度で鹿の横に回り込み。小金井ささらに魔法を撃ち込んでいた鹿の横っ腹に一撃を加えた。
硬い。
殴った瞬間に分かる硬度。
ブオオオオオオオオ
これまでの中で最も大きな鳴き声と共に、鹿ががくりと膝を折った。
だが、俺の技は止まらない。
"連撃"の効果で一撃のあと即座に次の一撃が加えられる。俺の拳は、身体硬化によって強化されている。
連続で撃ち込まれた俺の拳は計12撃。"バイタル"によって、俺の一撃はすべて相手の身体内部に浸透する。
「倒れろ!」
鹿の身体が揺れ、折れた膝からそのままゆったりと横倒しに倒れる。
ズズゥゥン
地面が揺れた。先ほどまで動いていた鹿の姿からは想像できない程の呆気ない結末。
「倒した……のか?」
俺の手にはまだ鹿の硬い皮膚の感触が残っていた。