本編
かいなと文月莉音は呆然と鹿の倒れる姿を見ていた。
「え?倒れた?」
かいなはまだ信じられないようだ。
「ドイルさんの攻撃、全く見えなかった。」
文月莉音は俺の動きを追っていたようだ。
「「すごい」」
二人の口から同時に言葉が漏れた。
俺は倒れた鹿を見る。思ったより呆気ない終わりだった。
小金井ささらが倒れた鹿の横を通って俺のほうに歩いてきた。
「ささらさん、鹿を引き付けてくれてありがとうございました。」
授業参観。
思った以上に有用なスキルだったな。
「ユキちゃんかわいい。」
相変わらず突然だが、腕に乗せたユキちゃんの人形の乱れた髪を直しているのを見ると、そんなものかと納得してしまう。
「ドイルさん、倒しちゃいましたね。」
かいなたちもこちらに合流した。
「倒したっぽいけど、呆気なさすぎる気がする。」
神の腕力が強すぎたというなら分からなくもないが、あれだけの硬度を誇る敵にそれほど一度にダメージが入るのだろうか。