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周りは灰色の石材に囲まれて薄暗く、目の前にある十字架だけがオレンジ色の光を放っている。

十字架の下には先へ進めるような穴が空いているが、その先も薄暗く、点々とあるロウソクだけが見えている。

よく見ると十字架の左右には旗のようなものが飾られている。

形は長方形。対角線上に赤と黄色の線が引かれ、4分割された下側と右側は白色、上側と左側は黒色に塗られている。長方形の中央には、緑色の歯車のような模様が描かれているのが確認できる。

国があるとミコエルも言っていたし、どこかの国の紋章かもしれない。

ドアを開けた手を離し、一歩を踏み出す。同時にドアが再びギイッという音を立てて閉じる。おそらくこのドアはもう開かない。

時間が経てば消えるのかもしれないな。

後ろを振り向いてみるが、同じような石材が積まれているばかりだ。どうやらここが行き止まりのようだ。

となれば、行く先はこの先の通路になるわけだが、闇雲に進むのは危険すぎる。

タブレットを開き、マップを起動する。
マップが場所の名前を映し出した。

…………

ミコエル神殿(地下礼拝堂通路)

…………

ドアがどこに繋がっているのかは分からないが、まさか「壁の中にいる」なんてネタみたいなことにはならないだろう。

ドアノブに手をかけて、回す。

ドアは思いの外、簡単に開いた。

ギイッ……

効果音がホラーゲームのドアと似ている。

「いざ、"レミルメリカ"へ。」

ドアをくぐると、目の前にはすべてが先ほどのドアと同じ灰色の石材で作られた空間が広がっていた。

これは……

ドアを出た俺の目に飛び込んできたのは石で作られた十字架だった。

石のくぼみが十字架の形になって、そこからオレンジ色の光が漏れている。ステンドグラスか何かがはめ込まれているのだろう。夕日に照らされているかのようだった。

それなりに高さもあるようだが、左右はどちらも壁になっている。

カタコンベ……俺の頭に最初に浮かんだのはかつてキリスト教者たちがつくった地下墓地だった。

ここはどこだろうな。

こういう時は焦ってはいけない。俺は冷静に辺りを観察してみることにした。

大天使ミコエル、運営神TOMOKI++

2人の契約書を入手した俺は、タブレットを片手にハザマノセカイの出口の前に立つ。

ミコエルの言った通り、少し歩いた場所に灰色の石のようなもので作られたドアが立っていた。

ちなみに、『子どもでもよくわかる魔法』はもう使っておいた。使い切りと書かれていた通り、一度使うとなくなるらしい。

こちらの世界にはどうやら便利な魔法があるらしく"本の内容をまとめて頭の中に入れて読んだことにできる"らしい。

おかげで時間をかけることなく、魔法の基礎を身につけることができた。

"メッセージ"などの基本的な魔法はこれで使えるようになったはずだ。

地球にいた時にこの魔法があれば最高だったんだけどな……

「しかし。まさかあんな大金が振り込まれているとは、TOMOKI++さんは俺に何をさせるつもりなんだ。」

ボカロ丼なら「タダより高いものはないのです」って言われそうだ。

さて、どうやらこの先が"レミルメリカ"につながっているらしい。

う〜ん、このドアみたいなのどこかで見たことあるぞ。どこだったか思い出せないけど。

俺はTOMOKI++さんからの餞別を探す。

何か変わったらNEWのマークとかついてくれたら嬉しいんだけどな。

あ、見つけた。

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、大天使の加護
レベル :90
経験値:34994113
所持金:100,000,000イェン
体力:6000
魔力:9999
攻撃:1200
防御:5700
敏捷:7500
状態:自動魔力回復、魔法無効(光)、闇魔法効果上昇

……………

アイテムボックス(1503/♾)
ドイルの契約書 1
ミコエルの契約書 1
TOMOKI++の契約書 1
白紙の契約書 1498
封印の鍵 1
子どもでもよくわかる魔法(使い切り)1

……………

たしかに神運営だった。

「それでは、また近いうちに〜!」

ミコエルは羽根を羽ばたかせ、空中に浮いたかと思うと、光の粒子を残して一瞬で消えてしまった。

チュートリアルもそろそろ終わりか。

「さて、メッセージはまだ切れていませんね。ドイルくん、運営として君のことは定期的に確認しに行きます。向こうで何をするのも自由ですが、犯罪行為は駄目ですよ。」

さすがは運営だ。

「さすがにそんなことしませんよ。」

神に監視されていると分かっていてそんなことをするバカはいないだろう。むしろ、止める側に回りそうだ。

「ドイルくんを信じています。あと、ミコエルくんではないけど、僕からの餞別も渡しておいたから受け取ってくれたまえ。」

気づかないうちに何かを仕込まれていたらしい。運営、おそるべし。

「わかりました。今後ともよろしくお願いします。」

社畜のクセが抜けないのか、会社の営業先にするように頭を下げてしまった。

「では、ドイルくん、また近い内に。」

そう言って意外にもあっさりとメッセージは切れたのだった。

これは、人間の持ってていい力じゃなくないか?

いっそ、俺もミコエル教に入信した方がいいのでは?

いきなり崇拝の対象に会ってしまったら、入信しても仕方がないのではない。それに、可愛いは正義だ。

しかし、向こうに行ったらミコエル教のことは優先的に情報を集めておかないといけないな。

「さて、ドイルくんへの案内はこんなところかな?ミコエルくんもそろそろ移動しないと、まきのくんが呼んでいたよ。」

「まきエルが?なんだろ〜?」

「それは本人に聞いてくれ。先ほどから熱心にミコエルくんを探しているよ。」

またしてもどこかで聞いた名前だ。
確か、ボカロ丼では、"フミトさん"やミコエルと合作をしていた人だ。エターナル?エトワール?……タイトルが思い出せないが、いつか会うことになるかもしれないな。

「じゃあ、ドイルさん。ハザマノセカイの出口はここから少し先に行ったところに作っておくので、"レミルメリカ"を楽しんでくださいね。何かあったらいつでもお呼びください。」

天使の笑顔だ。いや、天使なのだが。

「ありがとう。あまり迷惑をかけないように気をつけるよ。」

TOMOKI++さんがミコエル教について説明してくれるようだ。

「ミコエル教は"大天使ミコエルの降臨"を信じる宗教でね、ドイルくんの元いた世界ならキリスト教が一番近いかもしれない。大天使ミコエルを讃えるお祭りがあったり、神殿やタワーも建設されている。最近では、そういった建造物を建てるための製鉄所すら信徒によって作られたそうだよ。」

材料まで自作かよ……
ミコエルはニコニコしながら聞いている。降臨を信じるというか、今目の前にいるとか言ったら信徒が暴動起こしそうだ。

これ、青い鳥に書いたら炎上するな。

「ところで、信徒からは具体的にどんな力が得られるの?」

「死にません。」

「は?」

「信者の方がいれば、私は何度でも復活します。大天使ですから。」

いやいやいや、どう考えてもおかしいだろ。

「白紙の契約書もたくさんあるから、色々な人と契約してみるといいよ。しばらくはミコエルの力を使っていれば生活には困らないはずだから。」

TOMOKI++さんは笑いながら軽く言っているが、俺も死なないの?ミコエル教の信徒でもないのに?

「魔力は潤沢ですし、このくらいの強さがあれば、"レミルメリカ"では困らないでしょうから、問題ないですね。」

外部アクセスの文字が消えた。TOMOKI++さんがリンクを切ったのだろう。

「えっと、"大天使の加護"ってどういうスキルなんですか?」

"トランスモーフ"では、スキルの解説まではしてくれない。

「"大天使の加護"は『あらゆる魔法の発動時間を0にする』という詠唱時間短縮と『一定時間あらゆる災悪から身を守る無敵状態になる』という守りの効果、そして付随効果として『ミコエル教の信徒から力をもらえる』という特典がついてます。」

強っ。魔法撃ち放題なのに、自分だけ無敵とか何をしたいんだよ。

「そこはほら、大天使なので。」

そういう問題?
神とか天使って、もしかしてこういう最強クラスのスキルばかり持ってるのか?

「いや、ありがたく使わせてもらいたいんですけど、ミコエル教の信徒からの力って何ですか?」

ボカロ丼にいた"めたさん"のような人のことかな、信徒って。

「ミコエル教は"レミルメリカ"で最大の宗教ですよ、ドイルくん。」

まじかよ……

TOMOKI++さんの指示で、ステータスを開く。

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、大天使の加護
レベル :90
経験値:34994113
体力:6000
魔力:9999
攻撃:1200
防御:5700
敏捷:7500
状態:自動魔力回復、魔法無効(光)、闇魔法効果上昇

「これがミコエルの力……」

「無事に表示されたようだね。どうかな?大天使の力。」

TOMOKI++さんも外部アクセスで確認していたようだ。

「このパラメーター9999が最大値ですよね?魔力が桁違いなんですけど。」

しかも自動魔力回復とかついてるし。

「世界創世で、レベルの消失が起こってしまったんですけど、私は魔法をメインで使う天使なのです。」

ミコエルが再びドヤ顔を見せる。

ん?闇魔法効果上昇?
ミコエル、天使なのに闇魔法の効果が上がるの?

「ドイルさん、何か言いたいことでも?」

顔が笑ってない。
天使の勘なんてスキルはないのに!
闇魔法にはもう触れない方が良さそうだ。

「すごいステータスだなって思いましてね。」

明らかに棒読みになった。

「いえいえ〜、私のステータスウインドウに、ドイルさんと契約しましたって表示されたくらいですね。」

「"トランスモーフ"を見るのは久しぶりだったから忘れてたいたけど、このスキルは一度契約した相手が生きている間は永続的に有効だからね。」

そうなのか。知らなかった。
TOMOKI++さんは運営だけあって詳しい。
ミコエルは受肉していないし、1000年単位で生きているのだから、もう俺が死ぬまでは有効だと思っていいな。

「さあ、ドイルくん。ミコエルの契約書を使ってみてくれ。」

「分かりました。」

……………

アイテムボックス(1502/♾)
ドイルの契約書 1
大天使ミコエルの契約書 1
白紙の契約書 1499
封印の鍵 1

……………

おお、増えてる。
契約が完了すると白紙がその対象の名前に変わるのか。
さて、使ってみよう。

……………

大天使ミコエルの契約書を使用しました。

……………

身体に変化を感じる。
すごく身体が軽くて、身体の内側から何かが湧き上がってくる。

「では、その状態でステータスウインドウを開いてくれたまえ。」

でも、運営が言うってことは本当にありうるわけだ。ここは恩恵にあずかるしかない。

「分かりました。ミコエルさんのスキルと能力、お借りします!」

「どうぞ、どうぞ〜。」

語尾に音符でもつきそうなくらいの軽さで大天使からの許可が下りた。

「では、いきます。」

アイテムボックスを開き、ドイルの契約書を使用する。

…………

ドイルの契約書の起動を確認しました。
スキル"トランスモーフ"を起動します。

……………

タブレットの画面が光を放つ。

…………

スキル"トランスモーフ"が発動されました。
対象を選んでください。
▶︎大天使ミコエル
運営神TOMOKI++

……………

TOMOKI++さん、運営神なのか。
ここでミコエルを選べばいいんだな。

…………

対象が選択されました。
白紙の契約書を使用します。
白紙の契約書は"大天使ミコエルの契約書"になりました。

……………

タブレットの光が収まる。

「成功したみたいだね。ミコエルくん、何か異常はあるかい?」

TOMOKI++さんの声が響いた。

「ミコエルに"トランスモーフ"を!?」

"トランスモーフ"は相手にダメージを与えるスキルではない。
でも、これは……

「私はいいですよ〜。困るようなことありませんし。」

ミコエルは軽く答える。

「そんな軽くていいんですか?だって"トランスモーフ"の力は『契約した相手のスキルと能力を一定時間コピーする』なんですよ?」

ミコエルのスキルと能力をコピーできるなら、それは願ってもないことだが。

しかし、先ほどまでの話だと、ミコエルは大天使やTOMOKI++さんは神、この世界を創るほどの力の持ち主だ。そんな力を一個人がコピーしていいとは思えない。

バランスブレイカーもいいところだ。

「私の力も全盛期ほどじゃないですから、大したことありませんよ〜?」

ミコエルは楽しそうに笑っている。

「持ち物を見る限り、ドイルくん自身の契約書はあるけどステータスの記載がない。数値を選ぶようになっている。でも、今のまま"レミルメリカ"に行くと数値がどう設定されるか分からないからね。最悪、全ての数値が0なんてことも……。」

TOMOKI++さん、意外に容赦ない。

「"トランスモーフ"は、この世界を創った時にからある"創世のスキル"の1つだから、その力は未知数だよ。ミコエルくん、君が渡したスキルなんだから、ちゃんと説明を……ふむ、そうか。ドイルくん、"トランスモーフ"の使い方は分かっているかな?」

創世のスキル?

この世界が出来たときからあるスキルをどうしてミコエルは俺みたいな転生者に気軽に渡してるんだよ。

なんだ、どうなるんだ?

「はい。最初にアクティベートした時に。」

心配しつつも正直答える。

「それなら話は早い。簡単に言えば、君の能力値はそのスキルによって決定される。だが、今のままでは値がエラーになっている。そこでだ。」

TOMOKI++さんが一呼吸おいて告げる。

「ミコエルくんに"トランスモーフ"を使いたまえ。」

「TOMOKI++さん!?」

運営きちゃった。
どこかで聞いたことのある声だと思っていたら、そうか、オフ会で一度お会いしたんだよな。

あれ?でも、こっちの世界だと別人なんだっけ?

「"レミルメリカ"の運営をさせてもらってます。ステータスのシステム作ったの私なので、ちょっと確認させてもらいますね。」

「あ、よろしくお願いします。」

考えているうちにステータスウインドウに"外部アクセス"の文字が現れた。

「TOMOKI++さん、なんですよね?」

作業を気にしつつ質問をする。

「TOMOKI++ですよ。ドイルさん、何か聞きたいことでも?」

「すいません、ひとつだけ。えっと、ボカロ丼にいたTOMOKI++さんとは別の方なのですか?」

「ミコエルくんから説明があったかと思いますが、そうなりますね。私は、この世界を創った神の一人です。運営の都合上、受肉はしていませんが、こうやって、何か不具合が生じた時に確認と必要に応じた修正を行っています。」

「TOMOKI++さんはスゴ腕なので、きっとステータスもすぐに見えるようになりますよ〜。」

「あのね、今、例の転生者がいるんだけど、ステータスを開いたら、全部数値を指定してくださいって書いてあるらしくって、どうしたらいいか聞こうと思って。」

どうやらこの世界にはステータスの専門家がいるようだ。

「ううん、レベルだけじゃなくて、体力とか魔力もだと思う。うん、聞いてみるね。ドイルさん、レベル以外も全部ですか?」

「そうだね。攻撃、防御、全部が選べるようになってるみたい。」

「やっぱり全部みたいです。どうしますか?え?オープン回線?わかりました。切り替えますね。」

立て込んでいるところを見ると、俺の数値設定、バグなのかな。

「あ〜もしもし、ドイルくん?聞こえますか?」

頭の中に声が響いた。男性の声だ。
どこかで聞いたことがある気がする。

「これは"メッセージ"の魔法です。遠くに居ても一度お会いした方となら誰とでも簡単に話せるので便利なんですよ。今はオープン回線で私の近くにいる人はお話できるようにしてありますので、そのまましゃべってください。」

ミコエルの解説を聞いて、声を返す。

「はい、俺がドイルです。聞こえてます。」

「初めまして、TOMOKI++です。」

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ
レベル :数値を指定してください
経験値:未入力
体力:数値を指定してください
魔力:数値を指定してください
攻撃:数値を指定してください
防御:数値を指定してください
敏捷:数値を指定してください
状態:数値を指定してください

待て、数値を指定ってなんだ?

「ミコエル。数値を指定してくださいって書いてあるんだけど。」

「レベル、出ませんか?」

何度見ても数値を指定しか出てきていない。

「いや、全部数値を指定してくださいになってるんだけど。」

自分で選べるとか、いくらなんでもチートが過ぎる。

「レベルは100が最大ですけど、たしか転生者は、最初にこの世界に来た時に勝手に設定されるはずなんですよね。」

本当に何も出ていない。

「これ、指定してみたらいい?」

「ちょっと待ってくださいね。詳しい方を呼びますので。」

ミコエルがそう言うと、ピンク色の羽根が淡く光りはじめる。

「あ、つながった。みこだよーー!!!」

この天使、やっぱりボカロ丼にいる天使じゃないのか?

目の前にいるミコエルがボカロ丼にいたミコエルかどうかは確認できなかったが、俺は"レミルメリカ"を満喫して第二の人生を送ることになりそうだ。

「あと、いくつか確認しておきたいことがあるんだけど、構わないかな?」

とりあえず世界の大まかなことは把握したし、ボカロ丼にいる人たちがこちらの世界に別人としていることもわかった。

あとは、この世界を生きていくための知識が必要だ。

この世界の通貨はどうやら日本に合わせてくれているらしい。円ではなく"イェン"という名前で、貨幣価値は日本と同じ。銀行のような制度もあるとのことだった。

ちなみに、アイテムボックスにお金がまったく入っていなかったから、どこにあるのかを尋ねると、どうやら"ステータスウィンドウ"は別にあるとのことだった。

「タブレットのサーチボタンを押しながら"ステータス"と唱えてください。そうしたら、自分とサーチの範囲内にいる相手のステータスが目の前に表示されるはずです。」

面白い機能だ。

「"ステータス"」

視界の右下にウインドウが表示される。

「よくわからないけど、ボカロ丼の人たちに今度はリアルで会えるってことだな。楽しみだ。」

俺はほとんどの人にはリアルで会ったことはない。異世界でのボカロ丼オフ会なんて、体験できるのは俺くらいのものだろう。

「ドイルさん、あなたはレミルメリカで、ぜひ楽しい人生を送ってください。」

「そうさせてもらうよ、ミコエル様のご加護もあるわけだしね。」

そういってタブレットを掲げてみせる。

「そういえば、ミコエルは元いた世界のミコエルとは別人なの?」

興味本位で聞いてみる。同一人物、いや同一の天使ならミコエルは世界を行き来できる能力の持ち主だ。

少し困ったような顔をして、ミコエルは言った。

「ひ・み・つ です。」

かわいいなぁ、もう!!!

「そういえば、さっき、"私たち"って言ってたけど、この世界にはそんなにたくさん神や天使がいるの?」

話題を変えよう。

「そうですね、受肉されていない方たちも、わりといらっしゃいますけど、人間のことを好きな方が多かったので。最近は姿をあまりお見かけしていませんが、魔王れんぷすさんも、受肉を考えているって言ってましたね。」

「れんぷす?」

「魔王って言いますけど、闇の魔法が使えるっていうだけで、そんなにこわい方じゃないですよ。」

また知っている名前だ。たしかに最近ボカロ丼ではお見かけしなくなったが、魔王様と呼ばれていた人がいたはずだ。

「れんぷすって名前の人をボカロ丼で見たことがあったから。」

「う〜ん、れんぷすさんだけでなく、ボカロ丼にいる方々は皆さん"レミルメリカ"にいらっしゃいますよ?」

つながってるって、まさかそういうことなのか?

「おそらく、みなさん、元の世界とは別の方です。ですが、"レミルメリカ"はボカロ丼とつながった世界。ボカロ丼にいる方々のあり方は何かの形で世界に反映されているはずです。」

よほど、自分たちが創った世界が好きだったんだな。

そういえば"ダ◯ジョンに出◯いを求めるのは◯違っているのだろうか"って作品にもあったなそんな話。

「ミコエルは?」

「私は天使のままでいいんですよ〜。」

「でも、ボカロ丼って、できてまだ2年くらいしか経ってないよね?こっちの世界もできてそのくらいなの?」

「そこはほら、時間の流れが違いますから。あなたの元いた世界のボカロ丼は2年目を迎えたところですが、こちらでは1000年くらい経ってます。」

時間の流れがおかしい。
あれ?てことはミコエルって、こんなに可愛いけど、1000年以上生きて……。

「よからぬことを考えたら火刑にしちゃいますよ?」

「ごめんなさい。何にも考えてません!」

顔が笑ってない。
しかも火刑って、それ、ボカロ丼でクリスエスさんが絵に書いてたやつじゃん。こっちの世界では現実になってるのかよ。

「そうですか?天使の勘は当たりますからね〜っ。」

天使の勘ってこわいな。

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