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街道を兵士たちが走っている。彼らは雨の中を必死に現場に向かっていた。

「いそげ、雨に負けるな。」

ひどい雨が大地を打つ音に合わせて、ぬかるんだ地面を走る兵士たちの足音が響く。

ミコエル教の"雨乞いの儀"の成功により"レミルメリカ"の地には久しぶりの雨が降っている。そんな時、城にいた兵士たちに出動命令が下ったのだ。

街道に大量の魔物が出現し、行き交う馬車を襲っているとのことだ。ここ最近、魔物の動きが活発化している。

ようやく現場にたどり着いた時、兵士たちはそこに広がる光景に言葉を失った。

「ひどい……」

誰ががつぶやく。
兵士たちが見たのは魔物に襲われたと思われる馬車の一団だった。
馬車はめちゃくちゃに壊され、馬車に乗っていたのであろう人々の遺体が散らばっている。馬も死んでいるようだ。見た限りで生存者はいない。

おそらく抵抗したのだろう。数体の魔物の死体もある。

降っている雨が、血を地面に流し、川のようになっている。その惨状に兵士たちは呆然と立ち尽くしていた。

大きな爆発音と共に地面が揺れた。
作業をしていた男は手を止めて立ち上がる。

「今のは、爆発音?」

音は建物の中から聞こえたように思える。
何かあったのかもしれない。
たしか、外の作業に目処がついたから大聖堂の方を見に行くと言っていたはずだ。

「まさか、残党がいたのか?」

このミコエル神殿は、先日、魔物に襲われた。何者かが神殿の結界を破ったことで、魔物が神殿内に侵入したのだ。

偶然、会談のために神殿に来ていた異端審問官・クリスエスとKAIの2名、そして、名前は名乗らなかったが礼拝のために訪れていた2名の戦士によって、魔物たちは討伐された。その際に神殿が破損したことで、今は神殿の中には誰もいれず、修繕工事が行われているのである。

もし残党がいたならこうしてはいられない。
男は作業を中断し、神殿の内部へと走り出した。

走る男の首では銀色のネームタグが揺れている。このネームタグは国家から認定された技師の証。そして、そこにはこう刻まれている。

"国家認定建築技師・タダトモ"
"称号 ダンテP"

大量の煙を見ながらも彼は警戒を怠らなかった。"プリズマリン"と"エンダーチェスト"の組み合わせは彼の持つ技の中でも、最高クラスの捕獲力と防御力を誇っている。魔獣ですら捉えたことがあるこの束縛からいとも簡単に逃れることができる相手に油断はできない。先ほどのTNTも、本来は建物を一撃で破壊するためのものだ。

「まさか、これをくらって無事にすむとは思えませんが。」

煙が晴れていく。礼拝堂の中でこれほどの威力のものを使ってしまったことは後悔をしないわけではないが、これはすべて彼のスキルによる建造物。"素材"があれば作り直すことができる。

スキル"クラフト"
採取された"素材"を元にスキル使用者の望む無生物を作り出すことができる。一度作られた無生物は、同じスキルで作った爆発物や武器もしくは使用者よりも高い攻撃力を持つ相手の攻撃でなければ破壊できない。

これは戦闘用のスキルではない。ここまで攻撃できているのは、彼の腕によるものだ。

爆発で砕けた椅子、クレーターのように陥没した地面が見えてきた。

「ま、まさか……。」

そこには男が立っていた。

砕けた石の壁を見ながら、男が叫んでいる。

こいつは……ドワーフか?
髭は生やしていないが、顔以外の全身を皮のような茶色い防具で包んでいる。帽子はかぶっていないが、左手には袋のようなものを持っている。どこかのゲームにいるキャラクターと似ているような気がする。

「待て、俺は争うつもりは……。」

俺は必死に男を止めようとする。

「まさか残党がこれほどの力を持っているとは。くらえ、"TNT"。」

残党?残党と言ったな。誰かと勘違いしているのか!?

男が手に持っていた何かを投げると、突然、それは光だし、そのまま箱に姿を変えた。TNTと書かれた石の箱だ。それが、こちらに向かってくる。

"クラフト"のスキルは何か物を作る力のようだ。原理は分からないが、あの手に持っていたものが素材だろう。しかし、TNT……どこかで。

「爆ぜよ!」

思い出す暇もなく、その合図と同時にTNTと書かれた箱は音を立てて爆発した。

(そうだ、TNT、爆弾のことじゃねえか)
思い出した時にはすでに爆発の衝撃がドイルの方へ押し寄せていた。

どうやら捕獲用の魔法を使われているらしい。誰かに差し出すとか言っていた。

ここに入るのには許可もいるようだし、警備員みたいなものか?

"身体硬化"はおそらく発動している。薄い膜のような魔力が身体を覆っているのが分かる。

しかし、"管理者権限"の詳しい内容を探っている暇はない。ならば、ここはTOMOKI++さんを信じる。

俺は石の壁の中で腕にグッと力を込める。

「誰だか知らないが、始まったばかりでいきなり捕まるわけにはいかないんだよ!」

俺は一か八か、石の壁を思い切り殴りつけた。

ドゴォォォォォォ

大きな音を立てて目の前の石の壁に穴が開いた。穴を中心に亀裂が広がり、石の壁は崩れさる。

「マジかよ。」

まさかこんなに簡単に壊れるとは思っていなかった。

殴った方の腕にも傷一つ付いていない。"身体硬化"の力なのか、それとも基礎力のおかげなのか。

「なっ!"プリズマリン"をこれほど容易く砕くとは!どうやら力を見誤っていたようですね。」

壊れた石の壁の向こうには、体格のよい男が立ってこちらを警戒していた。

another story S-3 

「いえ、ここで争うのは愚策。失礼な物言いになったことを謝罪しましょう。」

一触即発かと思われた空気をKAIの一言が緩ませた。

クリスエスも、決して納得はしていないようだが、KAIから視線を外す。

「ここはミコエル教徒以外が来る場所ではない。早々に立ち去れ。」

食えぬ男だ。どこまでが本気かわからん。とでも言いたげだが、クリスエスは再び燃え落ちた十字架に視線を戻した。

それを見て、KAIもクリスエスに背を向け、部屋を出ようとする。

「そうそう、クリスエスさん。以前から気にしておられた"例の4人"が重い腰をあげたようですよ。」

置き土産のようにそれだけを伝えると、KAIは部屋を出ていった。

「動き出したか、異端者共め。ミコエル教異端審問官、このクリスエスが、貴様らの息の根を止めてやる。」

そう言ったクリスエスの目には、まだ炎の十字架が映っていた。

another story S-2 

「クリスエス、またそんなことをやっているのか。」

いつの間にか別の男が立っている。

「KAI、ここに何をしに来た。」

この男はミコエル教徒ではないはずだ。
とすれば、ここには誰かが中に入れたとしか思えない。ここは、ミコエル教徒の中でも限られた者しか知らぬ、異端審問会のための場所なのだから。

「クリスエスさん、相変わらず異端審問をされているようですね。」

見れば分かるだろうに、この少し気取ったような言い方がこの男の話し方の特徴だ。

「私は"ゆかいあ"の使者ですから。それに、噂が確かならあなたのスキルも私には効果が薄いのでは?」

「ほう?いくら使者とはいえ、その物言いはいささか気に食わぬ。この"異端審問"、受けてみるか?」

クリスエスのことばと同時に先ほどまで燃えていた十字架が音を立てて崩れ落ちた。火あぶりにされた男の姿は原型をとどめていない。

クリスエスはKAIの方に向き直った。

まだ人の肉と脂の焦げ付く嫌な臭いが部屋の中に漂っている。

another story C 

「火をつけよ」

指示を受けた兵士が片手の松明で足元の藁に火を放つ。藁の上に建てられた十字架には、もはや生気を失った顔の男が貼り付けられている。足元に火が迫っているというのに顔色ひとつ変えない男はむしろ不気味である。

そんな男の顔を、表情ひとつ変えずに動かさず見つめる男がいる。

クリスエス。異形して狼か龍のようにも見える頭部をもつ者。
彼は敬虔なミコエル教の信徒である。
敬虔すぎる彼の思想は、ミコエル教以外の宗教を認めることはない。
教義に違反する者、異なる宗教に心酔する者を悉く炎に包んで来た。その容赦なき様子からついた二つ名が"火刑執行人"である。

「異端者には"死"あるのみ。この炎こそがミコエルを讃える讃歌となるのだ。」

うううううううう………
縛られた男から呻き声が漏れる。火をつけた兵士は見ていられなかったのか、すでにその場にいない。

だが、クリスエスは目を離すことはない。なぜならこれはミコエルに掲げる炎なのだ。彼の瞳には燃え盛る十字架が映り込む。

スキル"異端審問"ー彼の前ではいかなる嘘も意味をなさない。

クラフト?それが相手のスキルか。
今は効果を探っている場合じゃない。

……………

TOMOKI++の契約書を使用しました。

……………

よし、ステータスだ。

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、絶対管理者
レベル :90
経験値:33734325
所持金:100,000,000イェン
体力:8000
魔力:1500
攻撃:8600
防御:6700
敏捷:6200
状態:管理者権限、身体硬化

TOMOKI++さん、神様なのにパワータイプなのか?

ミコエルとはある意味で対照的なステータスだ。硬化まで使えるようだしな。

「しばらく大人しくしていてください。"エンダーチェスト"。」

何の魔法か分からないが、石の壁に閉じ込められていても何かしらこちらに影響を与える能力であることは間違いない。

突然、石の壁の外からジャラジャラという音が響く。これは……鎖の音か?

「"プリズマリン"の檻と"エンダーチェスト"の鎖。この二重の捕縛を抜けられる者などおりませんよ。大人しくしていれば、攻撃はしません。」

「嘘はついてない。俺は別の世界から、さっきこの神殿の地下に転生したんだ。怪しい者じゃない。」

正直に言うしかない。嘘がバレたら後が面倒だ。

「どうにも信じられませんな。この神殿は、許可無き者は入れぬ場所、身分をあかせぬというなら捕まえて、使官殿に差し出すのみ。」

聞く耳なしってやつか。転生を知らないなら、信じてもらえなくても仕方ない。

やるしかないか。
アイテムボックスを確認する。
……………
アイテムボックス(1502/♾)
ドイルの契約書 1
ミコエルの契約書 1
TOMOKI++の契約書 1
白紙の契約書 1498
封印の鍵 1
……………
そういえば、TOMOKI++さんの契約書の内容を確認していなかった。ミコエルの力は大天使の加護、攻撃を防ぎ、魔法を撃ち込むならそちらの方が有利だ。
でも、今回はすでに先手を取られている。この石の壁が魔法でどうにかなるか分からない以上、どちらの契約書を使うのも賭けになる。
それなら……
神の力だ。試してみる価値はある。

「返す言葉がありませんか。それでは、捕獲することにしましょう。"クラフト"。」

another story (???) 

「ーー様、ミコエル教が雨乞いの儀を行うとの情報が入りましてございます。」

走って来た男が告げる。息を切らしているのか、名前が曖昧だ。

「すでに吟遊詩人から聴いておる。あやつ、惜しげも無く歌をくれてやるらしい。全く……自分のことしか考えない詩人も困ったものだ。」

「どうなさるおつもりで?」

別の声が響く。

「お前か。いや、せっかくだ。雨が本当に降るかどうか確かめてやるのも一興だろう。」

「随分と悠長に構えておいでですね。部下の中には痺れを切らしている者もいるというのに。」

「ミコエル教に手を出すのはまだ早い。アレに手を出すということは神と喧嘩をするに等しいのだからな。急いては事を仕損じると言うだろう?」

「兵は神速を貴ぶ、とも。」

「随分とつっかかってくるじゃないか。ああ、報告ご苦労。下がっていいぞ。」

そう言って、手を振る動作をする。

「かしこまりました。」

男は立ち上がり部屋を出た。
別の声の持ち主がこちらを振り向く。

「今日は面白い手土産を持って来たんだ。どうやら転生者が来たようだよ。」

another story (裏) 

「分かりました。まきエルさん、ミコエル様への進言、ありがとうございます。ええ、雨乞いの歌は私の方で。それでは。」

通信が切れる。どうやらミコエルは雨乞いの儀を執り行うことを決めたらしい。

「うまくいった。これで私がミコエルに歌を作ったとなれば、私の名声はさらに上がる。そうだ、信徒の男共を使って、ミコエルと共に雨乞いを祈る歌にしてやりましょう。それがいいわ。」

すでに頭の中には楽譜ができつつある。

「でも、その歌を歌うのは私。ミコエルが祈り、私が歌う。そして、信徒たちは私の声に合わせて共に歌う。そう、すべての中心はこの私。吟遊詩人・こるん様の掌の上なのよ。」

この物語は誰も知らない。

another story 

「ミコエル様……少しよろしいでしょうか?」

「どうしたのです、まきエル。突然私を呼び出して。」

「いえ、ミコエル様にお伝えしなければならないことがあり、お探ししておりました。」

「何事でしょう?」

「こるん様より、雨乞いの儀を執り行って頂きたいと進言がございます。」

「雨乞いの儀を?」

「はっ、現在、世界が慢性的な水不足になりつつあるとの報告があがっておりまして、それを憂いたこるん様が歌によりミコエル様に直談判を。」

「そういえば彼女は吟遊詩人でしたね。まさか私がいない間にそのようなことになっていようとは。わかりました。すぐに準備を致しましょう。」

「ありがたき幸せ。すでに由杞様にもご協力を要請してあります。」

「由杞さんも雨乞いの儀に協力を?」

「左様でございます。微力ながら私、まきエルもお力添えを。と……ミコエル様、どちらへ。」

「急ぎ、雨を望んでいる者たちもいるでしょう。すぐにでも儀を執り行います。」

「まもなく準備が整いますゆえ、もうしばらくお待ちを。こるん様にもお伝え致します。」

男の声だ。声を聞く限り、俺よりは年上だろうか?いきなり攻撃してこないところを見ると、話の通じる相手なのかもしれない。

「俺はドイル。ドイルだ。」

まずは名前からだ。

「ドイルさんですか、聞いたことのない名前ですな。何をしにここにいらっしゃったので?」

何て答えればいいんだ。

ミコエル様に何となく転生させられました。

分かってもらえるはずがない。そもそも、ここはミコエル神殿。

ここにいるということはおそらく信者だ。

TOMOKI++さんが言っていたことが本当なら、ミコエル教は、大天使ミコエルが降臨するのを待ち望んでいる。それにも関わらず、見も知らぬ奴がいきなり、ミコエル様に会ったとか、主張して信じてもらえるわけがない。どう答えるのが正解なんだ。

「お答えになれないのですか?どなたか存じ上げませんが、怪しい方を逃すわけにはいきませんね。」

こうなったら……

「俺はドイル、転生者だ。」

詳しいことは省略。今は怪しくないことを分かってもらうしかない。

「転生?そんな話は聞いたことがないですな、嘘をつくならもっとマシなものがよいかと。」

いきなりの攻撃で対処が遅れた。石の壁のようなものに閉じ込められてしまった。とっさにタブレットを持ち直し、ステータスウインドウを表示する。

"トランスモーフ"のスキルはいつのまにか切れており、ステータスは、数値を入力してくださいになっている。"レミルメリカ"に来た時点で効果が切れていたのかもしれない。油断した。

しかし、この攻撃はどこから?
サーチを使ったときには誰も……
それに今もマップには表示されていない。

サーチ:人間

少し前の場面を思い出す。

しまった!

この世界にいるのは人間だけじゃないことを忘れていた。サーチで分からなかったのは、相手が人間以外の種族だからだ。

今さら後悔しても遅いが、先制攻撃を許した時点で大失敗だ。今からでも反撃するしかない。ステータスウインドウを開いたまま、アイテムボックスを起動する。ここから出られるかどうかは賭けだが、ミコエルの力を使うしかない。敵の攻撃を受けても復活で耐久は可能だろう。

「このミコエル神殿に許可なく侵入するとは、何者ですかな?」

契約書を使おうとした時、石の壁の向こう側から声が響いた。

「これ、ミコエルか。」

先ほどまで見ていた姿とほぼ同じ姿だ。この聖堂の大きさを見ても、ミコエル教のすごさがわかる。さすが、最大の宗教というだけはある。

俺はステンドグラスをよく見ようと、祭壇の方へ歩いていった。

近くで見ると、さらに大きく見える。

ミコエルの周りには、彼女を取り巻くように従者のような人々が描かれている。

祈りを捧げるミコエルに傅くように、ステンドグラスの下の方には救いを求める人々が膝を折っているのが分かる。

大天使というより女神にも思える。

でも、よく考えたら天使を崇拝しているのに、神が描かれていないんだよな。元の世界では、天使はあくまでも神の使いのような位置付けだった気がする。

TOMOKI++さんのような運営神もいるのに、なぜ、そちらは宗教化されていないのだろうか?近いうちに調べてみる必要があるかもしれない。

どうせミコエル教のことは調べてみようと思っていたんだ。

俺は他の場所を調べるために向きを変えて……

「プリズマリン!」

突然、背後から声が響く。

その瞬間、俺は四方を高い石の壁に囲まれてしまった。

しばらく薄暗い廊下を進むと石で作られたドアが目の前に立ち塞がった。

地下礼拝堂への入り口ということになるのだろうか。迷路をゴールから逆走した気分だ。

ギイィ……

ドアを開くと目の前に階段があった。
地下礼拝堂だから当然か。

階段の上には光が見えている。

「さて、いってみるか。」

子どものように妙にワクワクした気持ちで階段を上っていく。

階段を上るとひらけた場所に出た。

規則正しく並べられた木の椅子、アーチ型に作られた石造りの柱、装飾された燭台。絵に描いたような美しい教会だ。

ちょうど教会の聖堂の中央あたりに出てきたらしい。これだけ大きな聖堂に加えて地下にまで礼拝堂があるのか。

周りを見渡すと、目の前に先ほど出てきたところと同じような扉がある。ということは、地下にはまだ他の場所があるのだろう。

右には大きな石の扉。これは入口だろう。
手前には階段もある。

左を見ると、祭壇があり、その後ろには大きなステンドグラスがある。

元いた世界ならキリストが描かれているであろう位置に大きく羽根を広げ、胸の前で手を組んだ天使の姿が描かれていた。


ただの社畜だった俺が、ある日突然、異世界に転生してしまった。そこは、ボカロ丼にいる者たちが異なる形で登場する世界。大天使や運営神の力を借りて、無双しながら異世界を駆け抜ける冒険が、今、幕を開ける。

マップの範囲を元の地下礼拝堂の通路に戻し、次はサーチを使用する。これで近くに何かがいれば引っかかるはすだ。

頭の中に、地図が描かれ、赤い点がいくつも現れる。

海にある多数の赤い点は……魚か?
やたらと動いているからおそらくは魚で間違いない。

草原にも数が少ないが動いている点がある。動物か人だろうが、これだけ数があると特定できない。

「単純にサーチを使うだけじゃ、いろんなものを巻き込むのか。」

そういえば、本に書いてあったな。

『サーチの対象は発動のときに対象を具体的に指定することで限定することができます』

そうか。それなら……

サーチ:人間

頭の中に地図が表示されるが、赤い点は1つも現れない。てことは、このあたりには誰もいないということだ。

よし、それなら先に進んでみるか。どうせ外に出ないといけないしな。

ついに、俺はミコエル神殿の地下礼拝堂から、"レミルメリカ"での冒険をスタートしたのだった。

地下の礼拝堂か、どうりで。
というか、ミコエルは俺を自分を祀る神殿に飛ばしたらしい。どうしてここに?

天使のすることだ。意味があると信じたい。

次にサーチの範囲を広げ、10kmの範囲を探る。

神殿のすぐ後ろは青い模様が描かれている。これは……海か?

近くには神殿以外の建物らしきものは発見できない。

それ以外の場所は茶色くなっている。
砂漠か、それとも草原か、どちらにせよ、この神殿は孤立した場所に立っている建物のようだ。

マップの特定の場所を触ると名前が表示されることは確認済みだ。
俺は海のような場所を触ってみた。

…………

海:ムーンアイズ

…………

名前がちゃんと付いているようだ。
てことは、こちら側の茶色いところも名前があるのかな?

…………

草原:セレスティア

…………

マップだと外観までは分からないが、どうやら草原の中に立つ神殿のようだ。

「街や村は近くにないのか。」

始まりの街のようなものがある場所からスタートするとばかり思っていたから意外だった。やはり現実は、RPGのテンプレのようにはいかないな。

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