ボカロ丼を参考に創った世界?
どういうことなんだ?
「えっと……」
「困りますよね、いきなりそんなこと言われても。この世界には先ほどお伝えした通り、色々な種族がいます。その中には神や魔王もいるとお伝えしたと思いますが、かつて私たちは力を合わせてこの世界を創造しました。」
世界を創るなんてマインクラフトの世界だけだろうくらいに思っていたが、目の前でこんな話を聞くことになるとは思わなかったな。
「そして、私たちの力の一部を分け与え、人や動物、植物を創りました。ドイルさんの世界で言えば"創世記"に近い感じです。」
ジェネシス。勝手に頭の中で翻訳された。
読んだことはないが、ボカロ丼なら盛り上がる人が多そうな話題だ。
「世界を創ったことで、私たちは力を消耗しました。しかし、創造者である私たちは、最後まで皆を見守る義務がある。そこで、神や悪魔、魔王から精霊まで多くの者たちは、自らが創った世界で人や動物たちと共に暮らすことを選び、受肉しました。受肉すれば普通の人間と同じように生活できますし、寿命も人並みになりますので。」
そんな歴史があるのか。
心なしか羽根も下を向いている気がする。
「違うんですよ、こっちから向こうの世界を覗いていたらなんだかすごく疲れた顔をしてパソコンに向かっているあなたの姿が見えたので、もう少し楽に暮らしてみたらいいんじゃないかな〜なんて思っていたら、急に異世界召喚の魔法が発動して、止められなくて、気がついた時にはもうこっちに来ちゃってたから急いで森を作ったりしてそれっぽい雰囲気を演出したり、意味もなくお祈りとかして大変だったんですよ。」
なんか途中から愚痴になってない?
すごい早口だし、あのお祈りはフェイクかよ。
「まあ、間違えたのなら仕方ないか。」
「え?怒らないんですか?」
「元の世界にすごく未練があるわけでもないしなあ。」
どうせ元の世界に戻ってもただの社畜だ。それなら新しい世界でセカンドライフを満喫するのも悪くない。
「で、でもですね。こちらの世界はドイルさんの世界にあったボカロ丼と繋がっているんですよ!だからきっと楽しいはずです。」
「ボカロ丼と?」
「はい!この"レミルメリカ"は、実はボカロ丼を参考に私たちが創った世界なんです。」
「じゃあ、なんで俺を転生させたの!?」
これから俺は強敵とのバトルを控えてるんじゃないの!?
「それはなんとな……いえ、そんなことないです!今のなし!ドイルさんにはすごく大きな役目を担ってもらうことになります!」
なんとなくって言おうとしたろ、この天使。俺の表情を見て急に意見を変えてないか?
「一応、聞くけど、どんな役割?」
「えっと、それはほら、アレですよ。こう、困っている人を助けたり……とか。」
声が小さくなっていく。
嘘だ。間違いなく嘘だ。
「もしかして、誰でもいいかなって理由なく転生させてしまって、罪悪感でタブレットとか準備してない?」
ドキッ
「そ、そんなことないですよ!」
「レアスキル渡しといたら困らないだろうし、いいかな〜とか思ってない?」
ドキドキッ
「ち、ちがいま……。」
「ほんとに?」
ミコエルの方を見ながら詰め寄っていく。
「こ、こわいですよ、ドイルさん。」
「まさか天使様が嘘なんかつかないですよね?」
「うっ。」
「ね?」
「ううっ。」
「ねっ?」
「ごめんなさい。」
簡単に折れた。
魔法の暴走は、魔力が尽きているのに無理矢理魔法を使おうとした場合や、何かの事情で魔力が抑えられずに溢れ出てしまうことで起こるらしい。
そんな魔物たちを狩るための職業として"冒険者"がいる。神もいるなら魔王もいる、エルフやドワーフまでいるらしい。
本当にどこにでも転がっていそうな王道の異世界ファンタジーものの設定だ。
「それで、ミコエルはなんで俺をこの世界に転生させたの?」
この流れなら俺は勇者として魔物、そして魔王を倒すことになるに違いない。
昔からド◯クエとか、聖◯伝説はやり込んでいたタイプだ。勇者になりたいと思ったこともある。
ロ◯の剣みたいな伝説の装備とか手に入れて、チート能力でサクッと魔王を退治してハーレムライフとか送れちゃうのでは!?なんたって転生者だしな!
「いえ、ドイルさんにやって頂くことは特にありません。」
え?
「レミルメリカは時々魔物が出たりはしますが、基本的には平和なところですし、別にこちらから何かをお願いするようなことはありません。」
ええ?
どういうことなの!?
ミコエルから聞いた話を整理してみよう。
まず、俺が転生した世界は、地球ではない異世界"レミルメリカ"、神と人、そして人以外にも多数の種族が混在する世界。どうやら地球と同じような環境らしいが、世界は6つの大陸に分かれているらしい。
それぞれの大陸には国があって、王様がいる。各大陸を治めている国があり、お互いに交流している。少しくらいの外交問題はあっても戦争とかはないらしい。
ちなみに、俺が今いる場所は"ハザマノセカイ"。本当は何もない場所らしいが、大天使が森林浴をしたいという理由だけで一時的にこの姿に変えているとのことだった。
ミコエルの力、やばくないか?
人々は固有のスキルを持っていて、魔法を使える。魔法は、洗濯をしたり、掃除をしたりするために使う"生活魔法"と、火や風などを操り戦うために使われる"戦闘魔法"がある。
魔法には魔力が必要で、魔力の量は個人差がある。魔法を使うことで少しずつ、魔力の量は底上げされていくらしい。
そして、魔法を暴走させた人や動物を"魔物"と呼ぶ。
「そして、この世界ではスキルが発現すると、その人にあった魔道具が国から提供されることになっています。」
「みんな、それぞれオリジナルの魔道具を持ってるって理解でいいのかな。」
「そういうことですね〜。」
俺のタブレットもこの世界じゃ、オリジナルの魔道具ってことになるわけだな。
「そういえば、さっき国って言ってたよね?この世界って、なんていうの?」
スキルのことばかり聴いて、肝心のことを聞いていなかった。
「おおっ、いいところにツッコミましたね。少し長くなりますけど構いませんか?」
「むしろ話せるところまで話してよ。よく考えたら転生した理由も聞いてないしさ。」
「はい!このミコエルにお任せください!」
どうやら大天使ミコエルはチュートリアルのために降臨されたようだ。
「こちらの世界では、スキルは生まれつき備わっているもので、6歳の誕生日を迎えると無条件で発現します。ただ発現するまで、どんなスキルかは分からないのです。」
そんなクジ引きみたいな感じなのか。
「ちなみにスキルにはどんなのがあるの?」
「本当にいろいろですよ。水を生み出したり、火を生み出しするスキルもあれば、天気を変えちゃうようなすごいスキルもあります。中には食べ物を見たら材料がわかるスキルとか、寝つきがよくなるスキルみたいな生活に役立ちそうなものもあります。」
本当にピンキリっぽいな。
「勉強ができるスキルなんてのもあるわけ?」
「ありますよ!ただ、スキルは1人1つというのは世界の原則なので、同じスキルを持っている人は世界にはいません。」
ということは、誰か1人でも勉強ができるスキルを持っていると、他の人は誰もそのスキルを持っていないのか。なんてこった。
「てことは、俺の"トランスモーフ"は。」
「はい。ドイルさんだけの限定スキルです。ミコエルからのプレゼントですよ〜。」
これはいいことを聞いた。なかなかのチートスキルだからな。
「マップとか、サーチもスキルなの?」
「いえいえ、それは私がドイルさんのためにおまけで付けておいたものなので、スキルではないですよ。う〜ん、魔法みたいなものだと思ってもらえたら大丈夫です。」
てことは、この世界にはスキル以外に魔法もあるのか。
「さっき、このタブレットは触ってみたんだけど、マップとかアイテムボックス以外にも何か他の機能ついてる?」
「え〜っとですね、私、これでも天使なので転生者の方とは言ってもお手伝いしすぎることはできないんですよ。だから、それ以上の機能がつけれなくて。」
どうやら支援にも制限があるようだ。
「でも、でもですよ!その代わり、スキルはすごいものをご用意しましたし!」
うん、たしかに、スキルは凄かった。
「"トランスモーフ"だよね。」
「その様子だともうアクティベートされたんですね!」
「さっきの広場でちょっと触った時に。」
「それはよかったです!もうアクティベートしてるならスキルの使い方は問題ないと思いますが、実はこの世界のスキルは1人につき1つなんですよ。」
「そうなんだ。」
「そうですよね。私、ドイルさんにちゃんとご説明しようと思って、まずはここにお呼びしたんです。」
「分からないことだらけだから、よろしくお願いします。」
軽く頭を下げる。
「えっと、そんなにかしこまらなくていいですよ。敬語は……ちょっと慣れないので。」
大天使にタメ口をきいたとバレたらボカロ丼の信者たちに袋叩きに合いそうだ。いや、実際に会ってしまっただけで罰を受けてもおかしくない。それならいっそいくところまでいこう。
「わかりまし……いや、わかった。呼び方はミコエル様でいい?」
「ミコエルでいいですよ。様とかつけられるのもちょっとムズムズするので。さて、まずはどこから説明したらいいかな。あ、ドイルさん、タブレットをお持ちですよね?」
「これのこと?」
「そうですそうです。こちらの世界にはスキルという個人がもつ力がありまして、魔道具を使ってそのスキルを発動させることになっています。」
「魔道具?これが?」
「はい、ドイルさんの元いた世界のものに合わせてご用意しました。」
すごいドヤ顔だ。
大天使ミコエル。
それはボカロ丼に存在する天使の名前だ。
ミコエル様、ミコ様……
呼び方は色々だが、時折LTLに降臨していたことを覚えている。新参者の俺は、いつからミコエルが存在していたのかは知らない。
LTLにミコエルが降臨すると、一部の者は五体投地を始める。最近では"ミコエル教"をつくり、教義を考える話まで出ていたはずだ。
しかし、本当に天使だったとは……
「ドイルさん、あなたを"この世界"に呼んだのは私です。一応、インストールという名目で少し前に告知はしたのですが、突然の転生をお詫びします。」
告知の時間が短い。
当日の朝に"今日ライブやります"というバンドくらい突然だ。しかし、これではっきりした。やはりここは異世界だ。
「転生したことには驚いたけど、別にいいよ。でも、できればもう少し詳しい説明が欲しいかな。正直、ここがどこかも分からないし。」
だんだん冷静になってきた。
LTLで何度も見たことがある名前だから、初対面な気もしない。でも、リアルで見ると可愛すぎる。
今ならミコエル教に入る気持ちも分かるよ、ボカロ丼のみんな……
「す、すいません。どうにも慣れなくて。」
社畜のクセでつい謝ってしまった。第一印象は最悪だ。恋愛ゲームなら、この時点でバッドエンドルート入りしそうですらある。
「たしかに俺は、ドイルです。」
なんとか言葉を絞り出した。
いつもより2オクターブくらい高い声になっていそうだ。
「やはりあなたがドイルさんですか。私は"ミコエル"、あなた方が"天使"と呼ぶ者。そして、あなたをこの世界に呼んだ者です。」
俺はこの天使の名前を知っている。
目の前に天使がいる。
何を隠そう。
ものすごくかわいい!!!
幼さそうに見えるがどことなく大人の雰囲気を感じる整った顔立ち
胸の部分に濃いピンク色のリボンがあしらわれている淡いピンク色のキャミソールワンピース
長いツインテールのように左右でくくられている青緑のサラサラした髪
白い肌、細い足腰、胸は……ここでは触れないでおくが、なんとも可憐だ
ただ、この天使……初めて見たはずなのにどこかで見たような気がする。
「ドイルさん、ですよね?」
再び質問される。
首を傾げて質問するとか反則だろぉぉぉ!
天使の美しさに見とれていた俺はとっさに言葉が出てこない。そもそも、女の子とそんなに話す機会などなかった。ボーカロイドが趣味でブラック企業に勤めている男に出会いがあると思うなよ!
「あ、あ、あ、あの、その。えっと。」
うまく話せない。これだからオタクは。
「ふふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。取って食べたりしませんから。」
天使か!?!?!?
そうだ、天使だった。
笑顔も可愛い。
「す、すいません。どうにも慣れなくて。」
スキルの使い方は分かっているが、自分の強さは全く分からない。
そもそもこの世界のことは何一つ分かっていない。
天使がいるということは、いよいよ異世界であることだけは確信できるのだが……。
数分間は天使の背中とにらみ合いをしただろうか。突然、天使が動き出した。
俺はタブレットを握りしめ、戦闘になる覚悟を決める。奇しくも武器と呼べるものは何もないが、いざとなれば逃げるしかない。
そう考えていると、天使は地面につけていた膝を動かし、立ち上がる。
それほど身長(?)は高くない。
ちなみに俺の身長は175cm、低くもなく高くもない。天使は150〜155cmといったところだろうか?少し小さくすら見える。
そして、天使がこちらを振り向いた。
「ドイルさん、ですね?」
どうやら俺のことはすでにバレているようだ。俺は観念して木の陰から姿を見せることにした。
「あれは……天使?」
少し離れた場所からでもはっきりとわかる背中にある2枚の羽根。淡いピンク色が木々の間の木漏れ日でより美しく輝いている。
青か緑か、腰くらいの長さまである髪の毛が風もないのに揺れている。羽根と髪の色のコントラストが、より一層彼女の美しさを際立たせていた。
よく見ると頭の上にも薄く金色の輪が見えている。
「どう見ても天使だよな?こんなところで一体何を……。」
10mほどの距離をとって、木の後ろに隠れつつ、俺は様子を伺う。息を殺して、じっと。
天使は背を向けて動かない。よく見ると、地面に両膝をつけて頭を下に向けている。
「祈りを捧げているのか?」
後ろから見ただけでは分からないが、両手を胸の前で組む聖女の姿が頭をよぎった。場所が場所ならミレーの『晩鐘』にでも例えるところだが、そうも言っていられない。
目の前の天使は敵か味方か分からない。木の影から天使の背中を注意深く眺める。相手がどんな力を持っているかも分からない。下手をすると、突然の攻撃もありえる。
俺はしばらくの間、天使の背中とにらみ合いをすることになってしまった。
行ってみる以外に選択肢はない。マップを頭の中で再生しながら走り出す。
緑色の丸はどうやらその場を動いていない。俺に気がついていないのか、それとも動かない理由があるのか。生きてるのかどうかすら分からねえが、行ってみるしかない。
あと100m……
70m……
50m……
20m……
「まだ動かないのか、よし、ここは木の陰から様子を見るか。」
木の陰に隠れつつ、ゆっくりと目標に近づく。10m手前くらいに来た時、俺は生い茂る木の隙間から"それ"の姿を目にしたのだった。
木、木、木、どこをサーチしても鬱蒼と茂る木々ばかりだ。タブレットの置かれていた森の広場(名前も分からないからこう呼んでいる)でサーチを使った時も、何一つ引っかからなかった。
「そろそろ何か反応があってくれるといいんだけどな。食べるものくらいないと腹も減って……あれ?」
そういえば、目覚めてから一度も何も食べていない。飲み物すら飲んでいない。
「喉も渇いてねえし、腹も減ってない。そういや、わりと歩いたはずなのに疲れもねえ。」
いくらブラック企業で働いていたからといって、飲まず食わずだったわけではない。喉も乾けば、腹も減る。むしろ、美味い食事だけが癒しの時間だったはずなのだが……。
……………
FIND
……………
ピコンという聞き慣れた効果音と共に画面が切り替わる。どうやらサーチに何かが引っかかったようだ。
画面には赤い丸とは別に、緑色の丸が1つ出現していた。
「こんな風に出るのか。でも、どうやら見つけることはできても、何がいるかまでは分からないらしいな。」
あれから数時間が経っただろうか?
俺はタブレットを手に森の中を歩いていた。
手に持ったタブレットの画面には、地図が映し出され、中央付近に赤い丸が光っている。
これは「マップ」という機能だ。どういう仕組みかは分からないが、今いるところから、周辺の地図が表示される。範囲は約10キロといったところだろう。
3つ目のアイコンを触ったところ起動した機能で、元いた世界の要領でかなり広い範囲を見てみようとも思ったが、10キロ程度までしか表示できないことが分かった。
ひとまずはそれで十分だ。
しかし、このタブレットを手に入れた場所を離れて歩きはじめてからもうかなり歩いてきた。にもかかわらず、一向に森を抜ける気配がない。
「このあたりでもう一回使ってみるか。」
脇に抱えていたタブレットを持ち直し「マップ」を閉じる。
「電話」「アイテムボックス」「マップ」
そして、これがもう1つの機能
「サーチ」
「マップ」の画面が立ち上がり、画面上を緑の線が行き来する。それと同時に、俺の頭の中に周辺の様子が映像で映し出された。
その瞬間、突然タブレットの画面が強く光り始めた。頭の中に言葉が浮かんでくる。
……………
スキル"トランスモーフ"を発動しました
近くに対象がいません。
スキルの発動を停止します。
……………
その言葉と同時にタブレットの光が弱まった。だが、俺の頭の中には"トランスモーフ"の使い方がまるで最初から知っていたかのように流れ込んでいた。
「やっぱり異世界転生はチートだった。」
俺の口から出たのはその言葉だけだった。
契約書に封印の鍵、しかも白紙の契約書に至っては数が1500もある。
「これは、異世界転生あるあるのチート能力じゃね?よし、まずは……」
期待に胸を膨らませながら封印の鍵を選択した。
……………
今は使用できません。
……………
おーーーーい!使えないってなんだ。これでバーンと封印を解いて何だかすごい力を手にいれるってのが、定番じゃないのかよ。
「仕方ない。それじゃあ、白紙の契約書を。」
……………
今は使用できません。
……………
こらーーー!なんだこのタブレットは、今のところ何の役にもたってない。先ほどのアクティベートは何だったのだろうか。
「最後に残ったのは、俺の名前の契約書か。誰とも契約した覚えはないんだけどな。」
……………
ドイルの契約書 の起動を確認しました。
スキル"トランスモーフ"を発動します。
……………
いきなり発動するのか、トランスモーフ。これは先ほどアクティベートされたと書いてあったスキルだ。
「いったい何が起こるんだ?」
俺はこの世界を異世界だと割り切ることにした。スキルなんてものがあるのだから、間違いなく元いた世界じゃない。一度割り切ってしまえば楽なものだ。
ホーム画面をみるといくつかのアイコンが並んでいる。
「このへんは、同じ……なのか?」
とはいえ、全く見たことのないアイコンばかりだ。しかも数が少ない。っと、「電話」のアイコンがある。
これは、もしかするともしかするのではと思い早速押してみる。
……………
連絡先は登録されていません。
……………
分かってたよ、分かっていたさ。元の世界にいた時でさえ、連絡先なんて数名しかなかった上に今時はL◯NEだからな。電話番号や連絡先なんて入ってなくて当然さ。
悔しくなんてない。
気を取り直して次だ。
このアイコンはなんだ?
アイコンの中にはダンボールの箱のような絵が描かれている。
「よし、何か起こってくれよ」
……………
アイテムボックス(1502/♾)
ドイルの契約書 1
白紙の契約書 1500
封印の鍵 1
……………
俄然、ファンタジー感が増した。