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スキル「大天使の加護」があれば、しばらく攻撃は防ぐことができる。
タブレットを手に持ったまま、俺は入り口から練達場の中へと足を踏み入れた。

視界が開ける。最初に目に入ったのは広い観客席だった。練達場という名前とコロッセオに酷似した外装の通り、少し高い壁に段差になった観客席がある。ちょうど目の前には、特別な観客席だろうか、直方体をそのまま壁面に貼り付けたような場所も見える。

練達場の中央には巨大なステージが設置されており、そこに受験生たちが集められていた。入った場所によって、ステージの左右、中央に並ぶ場所は分かれているようだ。予想に反していきなり襲われるようなことはなさそうだが、油断はできない。どこかの忍者漫画を愛読していたこともある俺は、地面が突然パカッと開いて受験生たちが奈落の底に落とされるような事態も考慮している。

俺は警戒しつつステージに登り、他の受験生たちの様子を確認するため、周囲を見渡した。種族、性別、年齢もバラバラ。魔法使いの出立をしている者もいれば、剣を腰から下げている者もいる。周りを観察していると、俺の後ろにも受験生が並び始めた。

 

「私は切身魚。学園の図書館で司書をしています。ドイルさん、中央の入り口から中へお進みください。」

この人が切身魚だったのか。俺が初めて「ボカロ丼」に入って挨拶文を投稿した時、「ボカロ丼」の簡単な説明をしてくれた人だ。たしか、仕事の愚痴を垂れ流した時には、見も知らぬ俺を心配してくれ、ダイレクトメールで話たこともあった。

「ありがとうございます。入学できたら是非よろしくお願いします。」

俺は頭を下げ、受付を離れた。後ろにはまだ大勢の人が待っているから早々に中に入るのが得策だろう。俺は言われた通り、中央の入り口へと向かった。コロッセオに似ているだけあって、天井はかなり高い。そして、少し暗い中央部分を歩きながら俺はタブレットを取り出した。入り口から入った瞬間に試験が始まらないとも限らない。ライトノベルならば、いきなり外に出た瞬間に敵が襲いかかって来て「油断はいけない」と言われてもおかしくない。俺はアイテムボックスを開く。

…………

大天使ミコエル契約書を使用します。

…………

 

「受験票をお願いします。」
目の前に座っているのは、眼鏡をかけた聡明そうな女性だった。俺は受験票を手渡す。
「あなたがドイルさんですか。色々とお噂は聞いていますよ。」
受付の机の上に置かれている名簿と受験票を照合している。
「噂が流れているんですか?」
レミルメリカに来てからまだ一ヶ月どころか、数週間も経っていないはずだが、俺はこの短期間で噂になるくらい目立っていたようだ。
「ライチョー隊長Pを倒した、剣闘師団と魔法師団の団長から推薦を受けた、協会で冒険者を助けた。噂になるには十分なご活躍だと思います。」
たしかに数日で色々ありすぎたくらいだ。
「ちょっと恥ずかしいですね。」
俺は女性の方を見る。どうやら名簿に名前があったらしい。運営神TOMOKI++が申し込みをしていたとは誰も思っていないだろう。

「優秀な学生が来ることは学園にとって大切なことです。あなたと授業で会えることを楽しみにしています。」
受付の女性はそう言って受験票を返してくれた。「授業で会う」ということは、この受付の女性は……。

「受験生の諸君……」
突然、大きな声が響いた。中年くらいの男性の声だろうか。
「ようこそ、我らが学園『ORiON』へ。我々は君たちを歓迎する。」
ロールプレイングゲームのテンプレートのような挨拶だが、周りの受験生たちの中には感嘆の声を漏らしている者もいるようだ。
「私はmai。ナチュラルPの称号を持つ『ORiON』の学園長である。」
これが学園長の声。この人も、もしかして「ボカロ丼」にいた人なのだろうか?周りからは小さな拍手も起こっている。学園長になるくらいだから有名人なのだろう。
挨拶(?)が終わると受験生たちが中へと案内されていく。中は見た目に反してかなり整備された空間であった。目の前には受付が設置され、五名程の職員が並んでいる。どうやらすでに受付は始まっているようで、受験生たちは列を成して受験票を受付に出している。列が捌けるのは思ったより早く、受験生たちは受付が終わると、それぞれで練達場の奥へと進んでいく。行く場所が異なっているように見えるので、おそらく中に入ると試験会場が違うか、班分けがあるのだろう。少し待っていると、俺の番が来た。

クロスフェードの中心にある大通りから少し横に逸れた場所にある「魔技練達場」の前には、早朝から大勢の受験生たちが集まっていた。受験票に書かれた通りなら、開場まであと5分もない。
街の探索を兼ねて、一度前までは歩いて来たが、何度見ても「コロッセオ」にその外観は酷似している。魔法や武術の鍛錬、各種競技の開催等、多岐に渡る用途に対応した施設であるということなので、広さもそれなりのものだ。
「すごい人だな。」
俺は受験生の人混みに紛れて開場を待っていた。それとなく「サーチ」を発動して「受験生」を探ってみる。半径1キロ以内に限定しても赤い点が大量に出現している。ざっと数えても200人くらいはいるだろう。この中から何人くらいが合格するものなのだろうか。
そんなことを考えていると会場の門がゴゴゴゴゴという有りがちな音を立てて開き始めた。
受験生は開いていく門を見ながら色々な表情を見せている。笑顔でソワソワしている者、周りをキョロキョロと見回している者、ゴクリと唾を飲みながら待つ者。
俺はほとんど緊張することもなく、入るまであとどのくらい並ぶのかを考えていた。
 

アナザーストーリー:実験レポート4 

"事象干渉"

時間、空間、理……世界のあり方そのものを捻じ曲げる力を私たちは手に入れた。それが魔族の本当の力。あの吟遊詩人はまだ若く、自分の力を使いこなせていないが、彼女もまた世界に干渉する者だ。そして、私はもう一人、壁を超えた者を見つけたという話を聞いた。最弱の種族と呼ばれるスライム種。まさかそんな種族から魔族が生まれるとは思ってもいなかった。

だから、私はそのスライムと戦ってみようと思った。強ければ生き残る。弱ければ滅す。

今はプリズムの近くにいると顧問Pから情報も入っている。

「いくよ。」

腕に乗せた烏がクワァッと大きな声を発すると、立花いな実の姿は闇の中に消えていた。

アナザーストーリー:実験レポート3 

rainyday。それが彼の名だ。

「いな実さんこそ、準備はよろしいので?」

立花いな実。それが彼女の名だ。

「できていますよ。他の皆さんに置いていかれるわけにはいきませんから。」

何やら不穏な動きがあるようだが、お互いに詳細を口にしない。烏が羽根を震わせた。

「顧問Pさんたちは学園のことで忙しいみたいですし、rainydayさんはアビサルですよね?私はちょっと鳥さんに会いに行って来ます。」

その言葉に返事はない。4人はお互いに干渉することなく、目的だけを共有している。そう、暗黒大陸で出会ったあの日から。暗黒大陸への壁をどうやって越えたのか、自分でもよく分かっていない。気がついた時には壁の向こう側にいた。

壁を超え、人から魔族になった私たちは新たな力を得た。一人一人にとって固有のもので変わることのないものだと思われていたスキルが突然変化した。それは、これまでに聞いたことのない程、強大な力。

アナザーストーリー:実験レポート2 

「白継さんにお願いしておきますね。」

白継は梟の力を持った獣人だ。試練の島で観察者をしていたはずなのだが"何か"が起こり、それ以来、別の役割を担っていた。

ここはシルバーケープにある試練の島1468。冒険者・魔物ハンター協会から「黙認」された島に立つ研究所だ。

「もう少しデータが欲しいですね。」

黒い塊がゆるりと動いた。暗い中で動いたその塊が振り向いた瞬間、目に入ったのは長い嘴だった。

「他の獣人を捕まえに行くんですか?」

その女の声に反応したのか、黒い塊が動いたことに反応したのか、暗い中でバサッバサッという羽音が聞こえ「クワッ!」という鳴き声が響いた。暗くて見えていなかったが、それはどうやら烏のようだ。女の腕に留まっている。

「私はデータ収集に行くだけですよ。」

そういうと、黒い塊の姿が露わになった。その姿は「ペンギン」。漆黒の身体にギロリとした目が光る。フリッパーを少しだけパタパタと動かしている。見た目の愛くるしさとは対照的に、周囲に醸し出す雰囲気には寒気すら覚える。

アナザーストーリー:実験レポート1 

「どうやら実験は成功だったようです。」

黒い影から突然声が聞こえた。部屋は暗い。明かりがほとんど付いておらず、視界が悪くなっている。

「あの熊の獣人さんは力を手に入れられた。私たちはデータを得た。win-winじゃないですか。」

女の声だ。こちらも暗い中ではっきりと表情が読み取れない。

「残念ながら兎の獣人によって軽々と倒されてしまったようですが。」

突然室内に光が灯る。1枚の磨りガラスのようなものに投影された映像が投影される。そこに映っていたのは、地面に倒れ臥す巨大な体躯と、全身に炎のような光を纏う兎の獣人だった。

「"マケッツ"がこんなところにいるなんて、残念でしたね。」

倒れた熊の獣人の身体が邪気でも抜けたかのように小さくなっていく様子が映る。

「効果の持続は6時間程度。能力は向上しますが、あとの反動は経過観察です。」

黒い塊は淡々と答える。まるで理科の実験の結果を口頭で報告しているだけのような口ぶりだ。

それは限定的だがミライを見通す力。

最長で1年、最短で10分。モノにしか使えないがきっと役にたつと言ってくれた。

明日は運命の実技試験。
待ってろよ、試験官!

俺はタダトモさんと分かれ、家へと戻る。

契約書は、これで5つ。
大天使ミコエル、運営神TOMOKI++、草原の守り手ごーぶす(ライチョー隊長P)、建造師はなぽ(わんわんP)、検査士タダトモ(ダンテP)

俺はそれぞれのスキルや魔法を一通り頭の中で反復し終えると、すぐにベッドに横になった。眠気が襲ってくる。
「睡眠チャレンジには……成功……しそう……だな。」

ふと、ボカロ丼でよく深夜に流れていた睡眠チャレンジのトゥートを思い出す。

その後の記憶はもはやなく、次に俺が目を覚ましたのは、寝る前にセットした"魔法の時計"が起動した時だった。

魔法の時計は便利な魔道具で、セレスティアで作られている人気商品だ。セットした時間になると魔法が勝手に発動し、身体を目覚めさせてくれる仕様だ。魔力は使うらしいが、大天使ミコエルの力を持つ俺には関係ない。

そう、俺は試験当日を迎えていた。
 

契約書は信頼の証。大天使ミコエルの声が聞こえて来そうだ。

「ありがとうございます。タダトモさん。」

俺はタブレットを取り出した。

……………
アイテムボックス(1505/∞)
ドイルの契約書1
ミコエルの契約書1
TOMOKI++の契約書1
わんわんPの契約書1
ライチョー隊長Pの契約書1
白紙の契約書1496
封印の鍵1
セレスティアの市民証1
魔物ハンターの証1
受験票1
……………

俺はアイテムボックスを開く。

…………

ドイルの契約書の起動を確認しました。
スキル"トランスモーフ"を起動します。

……………

タブレットの画面が光を放つ。
…………

スキル"トランスモーフ"が発動されました。
対象を選んでください。
▶︎タダトモ/ダンテP

……………

「頭の中に声が聞こえるって本当だったんですね。」

タダトモさんが許可を出してくれたようだ。

…………

対象が選択されました。
白紙の契約書を使用します。
白紙の契約書は"ダンテPの契約書"になりました。

……………

「タダトモさん。ありがとうございます。」
 

タダトモさんの左手に「ミライノート」が顕現する。

「これの使い方、覚えていますか?」

ミライノート。触ったものの未来をノートのページに描き出す力だったはずだ。

「神殿で見せてもらって以来ですね。」

そう、ミコエル神殿ではなぽさんが作り出した椅子の様子を確認するために使っていた。

「ミライノートはその名の通り、未来を描きます。このノートを持って触ったものの1年先までを細かい単位でノートに映し出します。」

タダトモさんはそう言うと、近くの壁に手を触れた。そして、ノートのページを開く。

「この壁は10分後でもこのままです。」

ノートのページにはたしかに触れた部分の壁がそのまま写真のように写っている。

「ミライノートは戦闘用のスキルじゃありません。でも、きっとお役に立ちます。」

タダトモさんは笑顔でこちらを見る。

「まさか、タダトモさん。」

タダトモさんは、俺のスキルを知っている。

「はい。ドイルさん、スキルを使ってください。」
 

「実技って言うくらいだから、スキルを使って何かするんでしょうけど、ちょっと不安ですね。」

テスト対策に過去問を必死に解いていた時代のことを思うと、何もしていないのは不安すぎる。

「ドイルさんなら合格確実ですから心配いりませんよ。試験は実技だけですから。」

学力試験がないのはいいが、学力を計らずになぜ実技だけしかないのか。それが不思議でならない。たしかに本を読むだけで理解できる魔法があるなら、勉強のできるできないに価値はなくなるが、魔法だって要するに使い方のはずだ。

「タダトモさんと同じことをみんなからも言われましたよ。」

ほとんどの会った人から合格確実みたいなことを言われているから大丈夫だと思いたいのだが、本番に強かった記憶はないからな。

「僕からは今のところ『大丈夫』としか言えませんので。あ、でも、より合格を確実にするお手伝いをすることならできますよ。」

そう言うとタダトモさんは右手をまっすぐ上に挙げた。

「スキル発動、ミライノート。」

俺たちは食事を堪能しながら、しおまねきさんやかずPと他愛もない話をしつつ、時間を過ごした。冒険者を襲った犯人については、思いのほか収穫はあったが、やはり直接的な情報は得られなかった。

ひとしきり食事を堪能した後、俺とタダトモさんは酒場"チャンネー"を後にした。デザート代わりにとサービスしてくれたプリンが美味すぎたからまた食べに来たい。

「もう明日は学園の試験ですよね?」

タダトモさんの言う通り、明日は学園の試験がある。かれこれ2日間、何の対策もせずに街の探索をしていたが本当に大丈夫なのだろうか?

「そうです。朝から『魔技練達場』に集まるようにって。」

魔技練達場。クロスフェードの街中に学園が所有するそれなりに大きな建物であり、魔法や武術など、様々な鍛錬をするために作られた武道場のようなものらしい。

「毎年、そこですからね。アリーナのように
なっている広い場所でやるはずです。」

試験の内容は実技となっているが、対策を取れないようにするためなのか、誰も内容は教えてくれない。

しおまねきさんのセリフと同時にシェイカーの中の飲み物が2つのグラスに注ぎ終わる。

「人じゃない?ということは……。」

俺の頭の中に魔族の存在を思い浮かべた。

「海獣族やドワーフ族ですか?」

タダトモさんはどうやら違う種族を思い浮かべたようだ。

「いえ、1人目の冒険者も姿を捉えることができていないので、それほど身体が大きな種族ではありません。」

グラスがカウンター越しに俺たちの前に置かれる。

「これは私の推測でしかありませんが、スライム族や果樹族のように元々の身体が小さい種族ではないかと。」

果樹族?それって、はなぽさんの種族じゃないか?まさか、はなぽさんに限って冒険者を襲うようなことはないだろうし、果樹族もはなぽさん1人ではないだろう。
俺の胸には一瞬言い知れぬ不安がよぎったが、それは無視することにした。

「こちら『エンドレスリピート』になります。まもなくプレートのほうもできるかと思いますので、ごゆっくりお楽しみください。」

奥を見ると、かずPが少し大きめのプレートを準備しているのが分かる。どうやら遅い食事にありつけそうだ。

しおまねきはシェイカーの蓋をしめた。

「そして、2人目の被害者が出たのは、2日前。連日の被害はそう珍しくないと思いますが、実は学園に通っていたらしく。」

しおまねきはシェイカーを構えながら、かずPの方をちらりと見た。

「友達が襲われたんですか?」

タダトモさんが神妙な面持ちで聞き返す。

「同じ研究会に所属する先輩の人だったようですよ。冒険者登録をしているのは珍しくありませんから。」

かずPの先輩が襲われたのか。それは気に病むこともあるだろう。

「これで2人、もしかして昨日も何かあったんですか?」

2度あることは3度あるって言うからな。

「昨日は何も起こりませんでした。2日連続で、犯人も分からないと来れば、夜に出歩く人も減りますし、兵隊まで居ましたからね。」

しおまねきの手の中でシェイカーが揺れ始めた。雑多な音も多い酒場の中でシャカシャカという液体の混じる音が妙に耳に入ってくる。

「ただ少し気になることがありましてね。」

振り終わると、上の蓋を取り、2つのグラスに飲み物が注がれていく。

「どうやら犯人は、人ではないようです。」

「又聞きにはなりますが、彼の代わりに私が少しだけお話ししまょうか。」

しおまねきさんがシェイカーに飲み物を入れていく。

「冒険者が襲われる事件が始めて起こったのはいつかご存知ですか?」

どうもしおまねきさんの雰囲気が少し変わった気がした。

「先ほど協会では、ここ数日と言われました。」

俺が答える。具体的な日にちは聞いていなかったはずだ。

「最初の冒険者襲撃が起こったのは、3日前、ここから数キロ離れた、ちょうどはなぽさんの家に行く途中の道を左に折れたところです。」

「マップ」を使わないと街の地図がよく分からないが、協会からは反対の方向になるのだろう。それに3日前か、俺たちがクロスフェードに帰ってきた日だ。

「最初に襲われた方は、ここ酒場にも来られたことがある冒険者さんでしたが、後ろから刃物で突然斬り付けられたそうです。夜だったので人通りは少なかったのですが、その時は偶然通りかかった人によって救助されました。」

「いえ、僕は学園の生徒です。」

だよな。予想通りの年齢設定だ。

「ここでアルバイトをさせて貰っています。」

かずPは酒場"チャンネー"の従業員なのか。
そのタイミングで、ちょうどしおまねきさんが奥から戻って来た。

「かずPくん、出来上がったらお二人に『ディナープレート』を。」

しおまねきさんはそう言いながら飲み物をつくる準備に入っている。どんな飲み物が出てくるのか分からないが「エンドレスリピート」というくらいの飲み物だから美味しいに決まっている。

「分かりました。」

かずPは元気よく答える。良い笑顔だ。

「何か聴きたいことがあったんじゃないの?」

俺たちは、かずPが話しかけて来た理由を聞いていない。かずPはまだアルバイトの真っ最中なのだろうが気になるところだ。

「あるんですけど、まだバイトの途中なんで。今日はラストまでですし。」

そう言うとかずPはちょうど席を立ってお店を出て行こうとしていたお客の会計に行ってしまった。

俺も同時に注文を済ませる。メニューも多すぎてよく分からないから、ここは慣れていそうなタダトモさんに合わせるのが良い。

「畏まりました。しばらくお待ちください。」

そう言うと、しおまねきは静かにカウンターの奥へと歩いて行った。

「すいません。あなたたち、最近あった襲撃事件の調査を?」

後ろから声をかけられた。振り向くと、そこに立っていたのは、若い男だった。

「そうです。協会からの依頼を受けています。あなたは?」

タダトモさんが質問する。

「すいません。僕はかずPと言います。」

かずP?もしかして、ボカロ丼では「高校生コンピ」に曲を出していた若者か?

見た目からは明らかに高校生には見えないが、名前は聞いたことがある。

「俺はドイル、こっちはタダトモさん。」

指を指しながら名前だけ伝える。

「あなたは……冒険者ですか?」

かずPの全身を見ながらタダトモさんが聞いた。いや、ボカロ丼では高校生。もし年数が多少違っても大学生だ。ということは……

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