アナザーストーリー:審問者7
剣闘師団側の森の奥から、目の前に並ぶ狼たちを2回りは大きくしたような魔物が出現した。個体名"ウインドウルフ"。
魔物化した際に狼のリーダーが変化したものだろう。ウインドウルフになると、魔力が増大し、嵐を起こすような魔法まで使用できるようになると聞く。
「ウインドウルフまでいたとはな。よかろう。剣闘師団!」
クリスエスが一際大きな声をあげた。
「敵の囲いの一点を突破し、その場より離れよ。さぁ、声なき獣たちよ、我が力を知るが良い。"ヘイト"」
ヘイトは、文字通り周囲にいる敵の注意をすべてこちらに向ける魔法だ。防御に特化した守備型の戦士たちや、大規模な殲滅魔法を得意とする魔法使いたちが覚えていることが多い。クリスエスは単騎にも関わらず、その魔法を覚えている。つまり、彼もまた広範囲に敵を殲滅する技を備えているということに他ならない。
剣闘師団を囲んでいた狼の魔物、ボスとも言えるウインドウルフ、その全てがクリスエスに敵意を露わにしている。
「スキル発動"異端審問"」
クリスエスがそのスキルを発動した。
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アナザーストーリー:審問者6
向こうでは剣闘師団が防御を固めつつ、順当に狼を倒している。1対多数になるようにうまく陣形を築いているのは、日頃の訓練の賜物であろう。
「しかし、これ以上の深夜残業は、好ましくない。」
クリスエスは羽根を大きく広げる。狼たちはウウウと低いうなり声を上げる。すると、突然1頭の狼がガアッという音と共に口から風の球をクリスエスに向かって撃った。風の初級魔法"空弾"である。魔物化した狼がよく使う魔法だ。他の狼たちも真似をしてクリスエスに空弾を放つ。その数、10。
「喚くな、理性のない獣共が。」
クリスエスは羽根を大きく震わせる。
魔法"エアロブレイド"。竜が得意とする羽根を震わせて放つ大気の刃だ。空弾をすべて軽々と切り裂き、同時に4頭の狼の身体を縦に両断する。残りの狼たちは咄嗟に身体を後ろに逃がしていた。
ウオオオオオオオオオン
狼が再び雄叫びを上げた。先ほどよりも大きい。まるで何かを呼んでいるような?そう思った瞬間、剣闘師団の方から声が聞こえた。
「巨大化した狼の魔物がいるぞ!」
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アナザーストーリー:審問者5
クリスエスの速度はすでに常人の域にない。
剣闘師団を取り囲むようにいる狼の魔物の群れに外側から切り込み、1頭目の首を切断した。
「脆い。」
狼の首が地面に落ちる前に、次の狼に走り、一閃。鳴き声を上げる暇もない。
クリスエスは竜人族。生まれながらにして竜の力を宿す者。3頭目の首を切り落としたところで、狼たちがクリスエスを視認した。
ウォオオオオオオン
雄叫びと共に剣闘師団を取り囲んでいた狼の約半数がこちらに向かってくる。
「10頭程度で、俺を屠るか?ぬぅん。」
クリスエスの背中に羽根が現れた。その翼はドラゴンのそれである。夜の闇の中、羽根を広げたクリスエスが浮かび上がる。
「さぁ、踊れ。」
そのまま、狼たちの群れに突っ込んでいく。早い。ザンッという音が聞こえた時には、すでに2頭の首が落ち、クリスエスの剣には血がネットリと付いていた。
ヒュッという風切り音と共に剣の血をふるい落とす。これで5頭。
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アナザーストーリー:審問者4
クリスエスは腰に刺している剣を構え直す。
「魔物の数、およそ30。位置はここから50メートルほど離れた森の中です。先ほど、夜の見回りをしていた兵士3名が襲われ、2名がやられました。」
夜間の襲撃だ。被害は少ない方だろう。
「よかろう。魔法師団が到着次第、光の魔法で明かりを灯せ。剣闘師団にはメッセージで連絡。私が出る、門を開け。」
そこまでの数で集まっているということは、魔物は狼の類だろう。クリスエスは、単騎で門の前に立つと剣を抜いた。
門が開くとそこは草原。すぐ先に鬱蒼としげる森が見えている。
補助魔法"ブースト""アクセル"
身体速度と移動速度を上げる魔法だ。これでかなりの速さで動くことができる。
「俺が出たらすぐに門を閉じておけ。」
そう言うと、クリスエスは即座に夜の森に消えていった。
そこから少し離れた森の奥では、剣闘師団が狼の魔物に囲まれていた。kentaxと主要な戦力を欠いているが、善戦している。魔法師団がいれば十分に片付けられるだろう。
「よく戦っているな、剣闘師団。少しお手伝いするとしよう。」
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アナザーストーリー:審問者3
王城の裏手はすぐに草原へと繋がっている。
クロスフェードの最も端に位置する始まりの地。それがファンド王の治める地「王城ノルド」である。
クリスエスは、仕事の際に身に付ける簡素なローブを戦闘用の服装へと変える。
戦闘用魔法"モデルチェンジ"
普段の服装である黒の服装を基盤に腰回りに銀色の直垂、胸部には青い水晶を中央と鳩尾、肩口にそれぞれ埋め込んだ黒色と銀色の混じった甲冑が現れる。これがクリスエスの戦闘スタイルだ。
クリスエスは龍人族、龍のような頭部を持つ人型の種族である。元々、龍に関わる種族は他の種族より力が強い。それゆえに剣や武器を使いこなし、敵を屠る。クリスエスも剣は得意である。腰に長剣を指し、準備を整えると王城の裏手にある巨大な扉の前に現れた。
「状況はどうなっている。」
門の前にいる兵士が答える。
「先ほど、剣闘師団の方々が出ていかれました。魔法師団の方々もまもなく。」
門が堅く閉じられているのは、魔物の侵入を防ぐためだ。
「敵の数と位置、こちら側の被害を知らせよ。」
アナザーストーリー:審問者2
王城に泊まり込みで内政処理に追われていた。城の設備は快適だが、やはり住み慣れた自宅での休息を取りたいと思うこともあるものだ。
「クリスエス様。このような時間に申し訳ありません。」
準備を終えようというところで、名も知らぬ兵士が飛び込んで来た。
「何事だ。」
深夜に来る話などロクなものではない。
「はっ、王城の裏手に複数の魔物が出現したのでご報告に上がりました。」
ここ最近、魔物の出現頻度が上がっている。
「剣闘師団はどうした。」
クリスエスのところに駆け込んで来ずとも部隊を展開すれば良い。
「小隊が王の護衛に行っており、kentax剣闘師団団も隊を率いてセレスティアとアビサルの国境へ向かいましたので……。」
なるほど、手薄になっていたか。
「外遊よい、事情は分かった。魔法師団を叩き起こせ。剣闘師団で対応できる者は魔物の処理と門付近の護衛だ。」
クリスエスの指示を受けて、兵士は姿勢を正す。
「それからm-a様がもし起きられたら伝えておけ、異端審問官・クリスエスが直々に敵を討伐してくるとな。」
アナザーストーリー:審問者1
ファンド王が出立した。護衛と多くの貢ぎ物と共に転移の魔法を使い、姫の実家の最も近い場所から外遊する形をとっている。失礼があってはいけないと、護衛の数は最小限であるが、魔法師団の団長自らが護衛を勤めているとあっては、ほとんどの者は手出しできまい。
クリスエスは、机に向かい黙々と仕事をこなしていた。ファンド王がいない間の大きな仕事は、すでに粗方片付いた。
深夜まで夕立Pの一件の後処理に追われていたが、すでに問題はない。まさかこのタイミングで喜兵衛や切身魚にぶつかるとは思っていなかったが、そういうものだろう。喜兵衛とは、5年程前に一度顔を合わせたことがあったが、強者のオーラを感じずにはいられなかったことを覚えている。そこにラムドPやラングドシャPまで加わったことを考えると、夕立P1人では荷が重い。
本来であれば、切身魚に見つからない予定であったのだが……。
そんなことを考えながら内政官執務室での仕事を一区切りさせたクリスエスは、帰宅する準備に入っていた。
外伝:集まりの夜に4
2人の団長とm-a、そしてクリスエスは、お互いに情報を共有しながら夜道を歩く。
その4人の様子を天界から見ている者がいた。運営神・TOMOKI++、その人である。運営神はこの世界の調停者の1人でもある。定期的に地上を監視し、世のことわりを正す。それが役割である。運営神・TOMOKI++がこの4人を見たのはまったくの偶然である。
トカゲアザラゴン、夕立Pなど、多くの情報が飛び交っていたが、神は小さな話は気にしない。
神も人も多種族も、皆に平等に夜と朝は訪れる。レミルメリカに暮らす多くの者たち。
運営神は彼らを静かに見守っている。
外伝:集まりの夜に3
「そういえば、文月フミトさんからも、シルバーケープの件で連絡が来てましたね。」
外交官のm-aだけあって他国の情報には詳しい。シルバーケープでは、つい先日、謎の魔力の奔流が計測された。調査団からの連絡も曖昧で、現在は、るかなんPという人物が正式な調査に動いているらしい。
「どうなってるのかねえ、まったく。調査団は、"いな"がどうとか、"もん"がどうとか意味不明なことを繰り返してたらしいじゃねえか。」
kentaxはよく分からないといった様子だ。
「そうですね。私がその筋から聞いた話だと、"なみ"がどうとかと言っている者がいたそうですが。」
クリスエスも詳しいことは知らないらしい。
立花いな実、顧問Pを含めた四天王は、その存在すら噂の域を出ていない。ゆえに、レミルメリカ全土でその名前は全く知られていない。だからこそ、調査団のいう言葉が名前だという発想には至らない。
外伝:集まりの夜に2
kentaxたちが飲んでいる時、偶然横にいて話をした建造士のはなぽも、トカゲアザラゴンの噂を聞いたと言っていた。
「しかし、あの話まで出回っているとは思いませんでしたな。」
m-aが言っているのは、図書館が襲撃された事件のことだ。
「夕立Pというスライム種が図書館に侵入したというあの話ですか?」
泡麦ひえも気になっていたようだ。
「噂に尾ひれがついたとも考えられるがな。"マケッツ"の喜兵衛がいたなどと、俄かには信じられんよ。」
クリスエスが言うのも最もだ。マケッツの1人がレミルメリカのしかも図書館を防衛するために動くとは考えにくい。
「あと気になってるのは、あれだな。ほら、魔王れんぷすの件だ。」
魔王れんぷす。噂が噂を呼び、現存する最期の魔王とも呼ばれている。kentaxが、しおまねきから情報を得たらしい。
「あの神々との戦争で生き残ったという魔王ですか?まさか、そんな者がレミルメリカにいるとは信じがたいことではありますが。」
泡麦ひえも半信半疑といった様子だ。
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外伝:集まりの夜に1
「たまにはこんな集まりもいいもんだなぁ、ひえ団長。」
kentaxと泡麦ひえ、2人の団長が夜道を歩く。そして、すぐ後ろに続くのは外交官のm-aだ。
「団長殿、わりと飲んだんですから倒れないでくださいよ。」
どうやら、kentaxたちとどこかで酒を酌み交わしていたようだ。
「あの程度でふらつくほど、剣闘師団は甘くないでしょう。むしろm-aさんもご自分の足元に気を付けて。」
悠然と歩いているのはクリスエスである。
「皆さんと飲みに行ったのは初めてでしたが、楽しかったですよ。」
泡麦ひえは陽気に笑っている。
「しかし、酒場でもトカゲアザラゴンの話で持ちきりだったな。」
毒をもって毒を制すという言葉がある。
そらうみれいの尾棘には神経毒があり、刺された者を一定時間麻痺させるという機能が備わっている。これは、エイの海獣族の多くが生まれながらに持っているものだ。
そらうみれいの固有スキルは"月ノ水"
エイは海洋生物であり、空を飛行することはできない。にも関わらず、空を飛びながら移動している。これは実際には飛んでいるのではなく"浮いている"が正しい。
月ノ水は、自分の身体を包み込むように周囲に水を生じさせるスキルである。その水には取り立てた効果はなく、単純に水で自分の身体を覆う効果しか持ち合わせていない。一見戦闘向きのスキルではないが、エイの海獣族であるそらうみれいは、それを最大限に活用することができる。
水を纏えば浮力が発生し、身体は浮く。その状態でヒレを動かすことで、そらうみれいは空中を泳いでいるのである。エイは泳ぐ時、ヒレを上下に羽ばたきながら緩やかに進んでいるイメージがあるだろう。しかし、餌を見つけた時のエイの速度は予想を遥かに超える。水中では宙返りや上下旋回すら可能とするほどの敏捷性を誇っているのである。
先ほど、隊長が倒れていた場所あたりを見ると、紫色の光が輝いているのが分かる。どうやら本当にごーぶすさんが発信源のようだ。
速度はそれほど早くはないが、こうしている間にも地面を這うように猛毒が迫ってくる。
そういえば、あの2人はどうしたんだ?
油断して意識をそらしてしまった。
サーチの赤い丸は、3メートルくらい横に動いたところで止まっている。
そちらを見ると、えいさんと呼ばれていたスナイパーが宙に浮き、春沢翔兎と名乗ったピンク色のウサギが地面に倒れているのが見えた。どうやら背後に迫ったごーぶすのスキルを避けるために、春沢翔兎が庇って横に高速で移動したようだ。
「えいさん……無事か?くっ……。」
春沢翔兎の足先が、黒く変色している。どうやら成レ果テに触れてしまったようだ。
「こいつは……毒か。ぐあああぁぁぁっ。」
かなり脚が痛むらしい。
「ととさん、脚出して。」
そう言うと、えいは尾棘を振り回し、春沢翔兎の脚に突き刺した。
「ぐうっ。」
春沢翔兎は苦痛で呻き声を漏らす。
「おそらく、あれは、毒。それなら、僕の毒で抑えられるかも。」
なんだ、この青紫色の液体は。先ほどまでの草原が嘘のようで、まるで沼地のようになっている。明らかに毒のありそうな色だ。
「ドイルさん、逃げて!」
タダトモさんが大声で叫んでいるのが聞こえた。はなぽさんとタダトモさんは、すでにプリズマリンを解除し、青紫色の液体から離れた所にいる。
「それは、ごーぶすさんのスキル、成レ果テ、触れたら猛毒で死に至ります。早く避けてくだされ。」
はなぽさんも叫んでいる。
これがライチョー隊長Pと呼ばれたごーぶすさんの力か。炎で燃やしたり、風で吹き飛ばしてもいいが、飛び散ったり、爆発したりする可能性もある。危険すぎる。
「止める方法はないんですか。」
あいにく毒への耐性は持ち合わせていない。光魔法ならミコエルの特性で無効にはできるけど、明らかにこれは光とは無縁だろう。
「我々も噂では聞いていましたが、見たのは初めてです。止める術を知りません。」
はなぽさんですら知らないようだ。
「隊長本人が止めれば何とかなるかもしれませんが、肝心の隊長は……。」
アナザーストーリー:異世界七夕日和15
「うん、大丈夫そうだな。」
タダトモはメッセージで協会に依頼の完了を報告すると、湖のほとりに立った。ふと見ると、水面に笹の葉が浮いている。そういえば、クロスフェードの街では、誰が言い出したのか、笹を飾ってそこに願い事を書くという行為が今年から行われているらしい。噂では、図書館でそんな話を聞いたと言っている人が多いようだ。
「笹か。持って帰って家に飾ろうかな。」
タダトモは、少し小さめの笹を手に取ると、それを手に持って湖を立ち去った。
それぞれの七夕の日常は、瞬く間に過ぎて行く。これを目にしている者たちが暮らす場所とは異なる世界ここは"レミルメリカ"、ボカロ丼とつながる別世界である。
アナザーストーリー:異世界七夕日和14
「暴れたりねぇなぁ、足りねえよ。まさか"マケッツ"まで出張ってきやかるとはな。しかし、クリスエスさんになんて言やぁいいかなぁ。失敗しちまったしよぉ。」
さらに、姿が変わる。出てきたのは、はなぽさんの姿だった。
「別の手段を考えるしかありませんな。ですが、次に会った時には必ずリベンジしてみせますぞ。」
ドロリと溶けた姿がまた別の姿を形作る。
「この"擬態"の夕立Pの名にかけてな。」
そう言うと、夕立Pは湖の中へ溶けるように消えて行った。湖の横では、笹の葉が風に揺れている。
夕立Pが湖に姿を消した後、そのすぐ近くをタダトモさんが歩いていた。タダトモは協会の依頼をこなすため、湖のほとりにある森の小屋を目指していたのだ。
「ここか。」
依頼の内容は森の小屋の検査である。
簡単な依頼だが、検査士にはこういった依頼もわりと多い。ミライノートを発動し、小屋の耐久性を確認する。
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アナザーストーリー:異世界七夕日和13
最後の文は必要なかったのではないだろうかというツッコミを入れることは許されていない。藤杜は続ける。
「プロムナードからも誰かを派遣されてはいかがですか?幸い、今日は祭りもありますし、多くの者が街に出ておりましょう。」
学園に剣闘師団と魔法師団が派遣されるなど異例の事態だ。何かあるに違いない。藤杜はそう判断した。
「ゆかいあの導きがあるなら、誰が行くかはすでに決まっているでしょう。」
キマシタワーPと藤杜によって、プロムナードから学園へ誰かが派遣されることが決定した。
同じ頃。セレスティアの首都クロスフェードの近郊にある森の中。
「や〜ん、やっとちゃんも変身できるようになった〜。」
幼い少女が1人、湖のほとりでしゃべっていた。突然、その姿が変わる。現れたのは兎の姿をした男。
「まだ暴れ足りませんか……?」
どこかで聞いたセリフが再生される。再び、その姿は溶けるように変化し、次に現れたのは剣闘師団の団長、kentaxの姿だった。
アナザーストーリー:異世界七夕日和12
「藤杜さん。KAIさんから入った情報によると、今宵は七夕なる愛し合う者たちのための祭りの日。つまり、実質"ゆかいあ"です。」
キマシタワーPの言葉に藤杜が答える。
「承知しています。すでにプロムナードの街には御触れを出しました。町の一部では、ゆかいあを讃える催しを開催する運びとなっているようです。」
実質ゆかいあ。キマシタワーPにかかれば、あらゆる事象はゆかいあへと帰結する。
「ゆかいあの愛がプロムナードを彩る。なんと素晴らしいことではありませんか。」
キマシタワーPは、今日も塔から地上を見下ろしている。
「キマシタワーP様、それと少しご報告が。KAIさんからの連絡によれば、セレスティア王国は、学園に剣闘師団のボンドPと、魔法師団の小金井ささらを派遣することを決めたそうです。」
藤杜からの報告にキマシタワーPは反応した。
「ほう、三国さんですか。我々とは多少ちがう思想をお持ちの方ですが、うむ、月と星の女神も尊いものであることにはちがいありません。ああ、ゆかいあが輝いていて今日も世界が眩しい。」
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アナザーストーリー:異世界七夕日和11
ミコエルはそう言いながらもとても楽しそうにユーリたちのいる地上の様子を見ている。レミルメリカの治安を見守るのも彼らの大切な仕事なのだ。
「そういえば。他の人たちは何してるのかな〜。」
ミコエルは、魔法で見ている地上の場面をかなり変えた。
ミコエルの目の前にできたのは海洋の国、プリズムの国の様子。プリズムでは、ミコエル海底神殿でのぐへへPとの会談の準備が行われていた。
しょこらどるふぃんがあくせく動き回っているのが分かる。セレスティアに使者を送り、なんとか会談の目処がたったが、次は海洋評議会に議題を通さねばならない。
「私はこういう調整役には向いていないんですけどね。」
ミコエルに見られているとは知らず、しょこらどるふぃんは走りまわ……いや、泳ぎ回っている。
「しょこらどるふぃんさん、最近、お忙しそうだから、七夕とか教えてあげてもできなさそうですねえ。」
ミコエルは再び場面を切り替える。そこに映ったのはプロムナードの塔であった。
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アナザーストーリー:異世界七夕日和10
「そんなことで私たちが世界に介入していたらえらいことになりますし、ミコエルさん、人間の恋愛事情好きすぎるでしょう。」
TOMOKI++さんは、最近、レミルメリカの運営に忙しいようだ。
「いいじゃないですか〜、恋は人を変えるといいますし、もしかするとユーリさんも恋で変わるかもしれませんよ〜。」
こと、恋愛のことになると、ミコエルは熱の入れようがちがってくる。
「それでもダメです。」
TOMOKI++さんは許可しない。
「ケチですよ〜。」
ミコエルは羽をパタパタさせている。
「ダメですよ、ミコエル様。TOMOKI++さんを困らせては。」
止めに入ったのはまきの……いや、まきエルだった。
「そうですよ、ミコエル様。そういうことは、神ではなく、人同士が育むものです。」
まきエルに同意を示したのはモケケだ。
ボディガードとして、ミコエルと行動を共にしているようだ。
「え〜っ、まきエルとモケケちゃんまでそんなこと言う。」