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アナザーストーリー:呪詛師の力5 

そらうみれいは短い言葉で説明する。

「毒ですって?この辺りに毒を持った魔物は早々いないはずですが。」

one my self は驚いている様子だ。

「それで、解毒剤はあるのか?」

kentaxの問いにそらうみれいは首を振る。

「ねえのか〜。今は俺たちも軽装備で備蓄がねえからな。あとから来る魔法師団がいりゃあ何とかなるかもしれねえが。ったく、水もねえし、どうするかね。」

kentaxは頭をかく。水がないという言葉にそらうみれいは反応した。魔法師団なら、春沢翔兎の解毒ができる者もいるかもしれない。

「水。ある。解毒と、交換。」

春沢翔兎が驚いた顔をする。

「えいさん、いい、無理……する……ガフッ。」

春沢翔兎が口から血を吐いた。

「おい、そいつ、やべえんじゃねえのか?ワンマイ、すぐに魔法師団にメッセージ飛ばして、毒にやられたやつがいるって伝えてこい。」

kentaxが指示を出すとone my self はメッセージの魔法を発動した。

アナザーストーリー:呪詛師の力4 

春沢翔兎を置いたまま闘うことはできない。そらうみれいは、ウォーターベールを解除した。

「なんだ、エイの海獣族か?珍しいな。」

団長と呼ばれた男は即座に言い当てた。

「団長、捉えますか?」

ワンマイと呼ばれていた男が尋ねる。

「いや、よく見ろ、兎の獣人がいる。あいつを助けるために知らない奴らから隠れてただけだろう。必要ない。」

どうやらこの団長、かなりの見識眼の持ち主だ。

「さて、俺はkentax。セレスティア王国剣闘師団団長だ。それで、お前さんは?」

kentax。その名前は聞いたことがある。若くして剣闘師団の団長になったと噂されていた男だ。

「マキエイ。こっちは、トト。」

とりあえずの偽名を名乗る。

「one my self です。皆、ワンマイと呼びますので、そちらでどうぞ。」

kentaxに次いでワンマイも名乗ってきた。

「それで、そっちのトトってやつはどうしたんだ?」

kentaxが事情を尋ねる。

「毒、やられた。」

アナザーストーリー:呪詛師の力3 

話を聞くに飲み水が切れたようだ。ここからさらに南下すると砂漠地帯がある。あそこを抜けるために飲み水を使い切ったのかもしれない。

「しゃあねえ、後続の魔法師団を待つか。あいつらなら水の魔法くらい使えんだろ。」

魔法師団。その言葉にそらうみれいは反応した。魔法師団と対をなす、団長。おそらく目の前にいるのは、セレスティア最強の軍、剣闘師団だ。なぜこんなところに。そらうみれいは焦ってしまった。

「ん?気が揺らいだ。誰だ、そこにいやがるのは。」

団長と呼ばれた男がこちらを睨みつけている。バレてしまった。"ウォーターベール"で身を隠していても、なぜかこちらを的確に見ている。

「団長、敵ですか?」

横にいた男も剣に手をかける。

「待て、ワンマイ、手を出すな。」

ワンマイと団長。そらうみれいは頭の中で反復した。

「いいから出てこい。この距離なら俺の剣はお前を斬るぞ。」

まだ数メートル以上の距離が開いているにも関わらず、その自信。おそらく、ハッタリではないだろう。

アナザーストーリー:呪詛師の力2 

だが、クロスフェードまではかなり距離がある。春沢翔兎を抱き抱えたまま行くには時間がかかり過ぎる。近くには村や町がある様子もない。どうする?

そらうみれいが悩んでいると、春沢翔兎の耳がピクリと動いた。

「えいさん、ゴホッ、何か来る。」

何かが近づいてくる気配を察知したらしい。敵かもしれない。そらうみれいは"ウォーターベール"を発動し、姿を隠した。

しばらくすると、二頭の馬が姿を見せた。背にはそれぞれ男が乗っている。湖の近くに来ると、一人の男が馬を降り、湖の水を口に含んだ。

「うわっぷ、団長、これは海水ですよ。飲めたものじゃありません。」

男たちはどうやら飲み水を探しているようだ。団長と呼ばれた男も馬を降りる。

「ダメか〜。いけると思ったんだがなぁ。」

団長と呼ばれた男は額に手を当てながら困ったような顔をした。

「どうします?さすがに水なしでは行軍が難しいかと。」

話を聞くに飲み水が切れたようだ。ここからさらに南下すると砂漠地帯がある。あそこを抜けるために飲み水を使い切ったのかもしれない。

アナザーストーリー:呪詛師の力1 

ドイルによって助けられたそらうみれいと春沢翔兎は、ミコエル神殿付近からさらに南下し、海からの水が流れ込む海水溜まりの湖のほとりにいた。ここまでくれば、毒の沼も追っては来れないだろう。

「ととさん、生きてる?」

そらうみれいの声に春沢翔兎が反応する。

「……ああ、なんとかね。」

息も荒く、声も小さい。どうやら毒は抜け切れていないようだ。そらうみれいの尾棘の毒はそれほど強いものではない。やはり、ごーぶすのスキルで生み出された毒を消すまでには至らなかったようだ。

「脚……動かないね。」

春沢翔兎の脚の一部が黒く変色している。痛みがそれほど無さそうなのは、そらうみれいの毒が多少中和しているからだろう。

「すまねぇ、えいさん。」

春沢翔兎は苦しそうだ。額には汗も浮かんでいる。そらうみれいは、春沢翔兎を救う方法を考えていた。医者に行くことができるなら、それが良い。

はなぽさんは、クラフトを使用する際に鉱物のようなものを使っていた。つまり、はなぽさんのスキルを使えば……

「いくぞ、ごーぶすさん。"クラフト"」

俺は目の前に迫る毒の沼に向けて、はなぽさんのスキルを発動した。

ごーぶす、ライチョー隊長Pは"成レ果テ"を発動した後のことをよく覚えていない。かつて、プロムナードの街を毒で覆い尽くした。

あの時もそうだった。

戦争の最中、ごーぶすを含むセレスティアの軍隊は、プロムナードの街を包囲した。その時、街から離れた場所に設置されていた転移の魔法陣に気づかず、味方は敵の強襲を受けたのだ。

ごーぶすは、敵を食い止めるため、1人前に出て、撃たれた。魔法が羽根の一部を吹き飛ばし、ごーぶすは命の危機に瀕した。そして"成レ果テ"が発動した。

ごーぶすを中心に猛毒の沼が広がり、その毒は敵の進行を阻むばかりか、プロムナードの街に侵入した。だが、ごーぶすにはその記憶がほとんどない。毒は一度触れたものを滅 追尾する。それはごーぶすの意志とは関係ない。

何かのきっかけで、ごーぶすが止まるまで、成レ果テは全てを飲み込むのだ。

ごーぶすさんのことは、はなぽさんとタダトモさんに任せた。
俺は何としても毒を止めてみせる。

…………

"わんわんPの契約書"を使用します。

…………

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、クラフト
レベル:35
経験値:ーーーーー
体力:1020
魔力:800
攻撃:650
防御:890
敏捷:350
状態:素材鑑定LV5、仕上げLV5、発掘LV5、錬金LV5

よし、これだ。さっきTOMOKI++さんの力で地面を砕いた時に気がついた。この地面の下には、表面がツルツルした大きな石がいくつも眠っていた。つまり、このあたりは大昔、火山だっということだ。そして、さっきマキエイさんを助けるために地面を隆起させたとき、緑色の表面をした石が見えた。

あれは、おそらくマグマが異質の岩石を取り込んだ捕獲岩(ゼノリス)の一種で、地下深くのカンラン石(ペリドット)を捕獲したために綺麗な緑色になった岩石だ。

昔、ドイツのジオパークに行った時、見たことがある。そう、マグマが固まってできた岩石は、その内部に多くの鉱物を含むのだ。

タブレットの画面が光を放つ。
…………

スキル"トランスモーフ"が発動されました。
対象を選んでください。
▶︎はなぽ/わんわんP
タダトモ/ダンテP
ごーぶす/ライチョー隊長P

……………

これだ。はなぽさん、力を貸してくれ。

「これは、どういうことですかな?頭の中に、契約を望む声が聞こえます。」

そうだ。それを許可してくれ。

「はなぽさん、俺を信じて。」

突然のことにどうすればいいか分からないだろうが、ここは信じてもらうしかない。

「分かりました。ドイルさんにお任せしましょう。」

…………

対象が選択されました。
白紙の契約書を使用します。
白紙の契約書は"わんわんPの契約書"になりました。

……………

タブレットの光が収まる。
よし、これでいけるはずだ。

「ドイルさん、何をしようとしてるか分かりませんが、僕も行きます。」

タダトモさんがメッセージに入ってきた。

「俺は今から毒の沼を抑えます。」

2人の力も借りるしかないだろう。

「だから、2人は俺が毒の沼を封じたところで、隊長を止めてください。」

"メッセージ"
俺はミコエルの契約書を使い、魔法を発動した。その相手は……

「ドイルさん、どうされたのですか?」

はなぽさんだ。

「はなぽさん、力を貸して下さい。隊長を止めます。」

はなぽさんのスキル"クラフト"。あれを使えば、ごーぶすさんの毒を閉じ込めることができる。そうすれば、ミコエルの魔法で処理できるはずだ。

「ドイルさん、何か考えがあるのですな。よろしい、力を貸しましょう。」

俺ははなぽさんのスキルに賭ける。

「はなぽさん、俺と契約してください。」

はなぽさんには、俺のスキルのことは話してない。だから、意味は通じないだろう。

「契約?どういう意味か分かりませんが。」

そうだ。分かっている。

「ごめんなさい。詳しく説明している時間はないんです。ただ、これが。これが、俺のスキルなんです。」

そういうと、俺はタブレットを持ち、アイテムボックスを起動する。
…………

ドイルの契約書の起動を確認しました。
スキル"トランスモーフ"を起動します。

……………

ボカロ丼のメンテナンスを終えた夜、突然行われた転生。そこは、ボカロ丼にいる魑魅魍……もといボカロ丼に集う者たちが姿を変え、形を変えて暮らす異世界だった。

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「そんな、じゃあ、どうしたら。う〜ん、何か、何か使えそうなものは。」

タダトモにはどうすることもできないが、持ち歩いていた荷物の袋を漁ってみる。

「あっ……。」

タダトモが取り出したのは、はなぽがクラフトで作成したカップの破片だった。先ほどの襲撃の時の衝撃で壊れてしまったらしい。
"ミライノート"は当たっていた。理由までは分からなかったが、あの時、割れたカップを見たのだから何かあるのではと警戒しておくべきだったのだ。タダトモは自分の油断を少なからず後悔した。

ドイルは"成レ果テ"を止める方法を考えていた。毒の沼。触れてしまうと、ととさんのように激痛に襲われることになる。

風の魔法で吹き飛ばすか?いや、拡散するだけで意味がない。
火の魔法で消し飛ばすか?可燃性かどうかのリスクがあるのと、他の草原まで燃やしてしまう。
氷の魔法は、うん、大きな氷を作る魔法くらいしか知らないな。
闇と光の魔法もあまり使えそうにない。

せめて、どこかにまとめて閉じ込めることができたら……。

「そうか!」

アレを使うしかない。
俺はミコエルの契約書を発動した。

「ここまで離れていれば大丈夫でしょうが。ドイルさんはいったい何をしておられるのか……。」

はなぽは"成レ果テ"の特性を知っていた。あれは、全方位に広がるのではなく、使用者の周辺から使用者が広げたいと思う方向へと拡散していく。だから、この小屋には猛毒は来ない。

「ドイルさんは、あの春沢翔兎という獣人を助けようとしてるんじゃないですか?」

タダトモにはそう見えた。

「あの獣人、先ほど足に毒を食らったようですし、かなり危ないと思うのですが。しかし、先ほどまで戦っていた者を助けるとは、なかなかどうして。」

はなぽは関心しているようにも見える。

「はなぽさん、ごーぶすさんのあれって止められるんですか?魔方陣まで毒に浸かってるみたいですけど。」

タダトモは心配そうだ。

「スキルの内容は聞いたことがあるので知っていますが、見たのは初めて、止め方までは分かりませんよ。」

ライチョー隊長Pのスキルを知る者は少ない。はなぽですら、偶然聞かせてもらった程度である。

「名前、そうか、マキエイだからえいさんか。俺はドイル。よろしくって言いたいところだけど、ゆっくり話してる時間はなさそうだし。早く行ってくれ。隊長は、俺が何とかする。」

逃げろと言われている。やはりどうして逃すのか分からない。

「感謝。"月ノ水"。」

そう言うと、そらうみれいは再びととさんを抱き抱えて、スキルを発動した。水の幕ができ、身体が浮き始めるが、やはり抱えて動くのは大変なようだ。

「"アクセル"」

ドイルはそらうみれいに移動速度を上げる魔法をかけた。『子どもでもよくわかる魔法』にあった基礎魔法だ。

「これでさっきより動けるよ。マキエイさん、早く。」

そらうみれいは振り返ることなく泳ぎ始めた。先ほどよりは確かに少し早く動くことができている。そして、ドイルはごーぶす、ライチョー隊長Pのスキルと相対する。

その様子をはなぽとタダトモは少し離れたところから見ていた。ごーぶすのスキルが発動したことを察知したはなぽは、プリズマリンを解除。すぐにタダトモを連れてその場を離れ、ごーぶすが居た小屋の方へと移動していた。

どちらも単なる力技だが、効果はあった。

「どうして……?」

そらうみれいが不思議そうに尋ねる。

「分かんないけど、寝覚めが悪そうだったからだよ。」

ドイルはごーぶすがいるであろう、猛毒の発信源を見つめている。春沢翔兎はまだ気絶しているようだ。

「とりあえず逃げるんだろ?えいさんたちの目的だった転移の魔方陣はもう沼の下にあるし。」

転移の魔方陣はすでに半分以上が猛毒の沼に沈んでいた。ごーぶすさんを止めたところで、使えるかどうか分からない。

「マキエイ。」

突然声をかけられた。

「なに?」

ドイルはなにを言われたのか分からない様子でそらうみれいの方を振り返る。

「マキエイ。名前。」

そらうみれいは、初対面でよく分からない相手の前ではこの名前を使っている。春沢翔兎にあった時にも、初めての時はこの名前だった。ドイルはそんなことを知る由もないが、そらうみれいが偽名とはいえ、名前を伝えることなど滅多にないことであった。

そらうみれいはドイルの言葉に反応した。
後ろを振り返ると、たしかに毒の表面がせり上がり、こちらに狙いを定めている。しかも、地面を這っていたときより速度が少し上がっている。自己加速の魔法は使えない。春沢翔兎を置いて1人で泳ぐなら、そらうみれいの方が早い。だが、それはできない。

「追いつか……れる。」

そう思った瞬間、隆起した地面がそらうみれいの目の前に立ち塞がり、毒を止めた。

「そこらへんにいるんだろ!魔法を解除しろ。えいさん。」

そらうみれいは困惑した。どうしてこいつが私たちを助けるのだろう。先ほど、仲間を狙われたのに。ととさんと戦っていたはずなのに。

「早く!」

ドイルの大声で咄嗟にウォーターベールを解除してしまった。

「やっぱりそこにいたか。この土壁じゃ、一時凌ぎにしかならない。すまないけど、2人まとめて運ばせてもらうよ。」

ドイルは、ととさんを抱き抱えたままのそらうみれいの身体を掴むとそのまま全力で移動した。

地面に着く。ごーぶすさんの猛毒は、地面にできた亀裂と、地面が隆起してできた壁に阻まれてまだ追いついてこないようだ。

先ほどまで戦っていた相手な毒で死ぬ姿を見たくなかったのかもしれない。

実際は魔法で姿が見えないからどうなっているかもわからない。しかし、サーチで見ると明らかに先ほどよりも移動速度が遅い。察するに、えいさんがととさんを運んでいるのだろう。その速度では隊長のスキルからは逃げられない。

「くそっ。」

ドイルは小さな声で舌打ち混じりに言うと、赤い点に向かう。同時にスキル"トランスモーフ"を発動した。"TOMOKI++の契約書"を使用する。

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、絶対管理者
レベル :92
経験値:33734325
所持金:100,000,000イェン
体力:8000
魔力:1500
攻撃:8600
防御:6700
敏捷:6200
状態:管理者権限、身体硬化

「この攻撃なら。」

ドイルは素手で地面を殴りつける。神の拳の一撃は大地に軽々とヒビを入れる。

ドイルの殴りつけた場所から真っ直ぐに、大地の亀裂が毒に向かっていく。

「間に合えっ。」

ドイルは亀裂に沿って走りはじめた。

尾棘の毒を打ち込まれた春沢翔兎は気を失った。脚から入った毒がどこまで中和できるかは賭けでしかない。そらうみれいは、引き際を見定めていた。

「引くよ、ととさん。"ウォーターベール"」

そらうみれいの魔法が発動し、水の幕が2人を覆う。水の幕によって景色と2人の姿が同化していく。そして、全身が隠れたところを見計らって、そらうみれいは春沢翔兎の身体を抱き抱え、スキル"月ノ水"を発動。身体が浮く。誰かを抱えて泳ぐには力がいるため、それほどの速度は出ないが、姿は見えていないはずだ。そらうみれいはゆっくりと移動を始めた。

ドイルには、その姿は見えないがサーチによって2人の場所は分かっている。姿を隠したということは撤退するつもりだろうか。

しかし、その刹那、ドイルは見た。先ほどまで地面をゆっくりと動いていた毒の沼が少しずつせり上がっている。

まさか、この毒は相手を追尾するのか?
理屈は分からないが、明らかに毒はえいさん、ととさんを追いかけようとしていると思える。

「そこのえい!その毒、追尾してくるぞ!」

ドイルはなぜか大声で叫んでしまっていた。

アナザーストーリー:審問者??? 

「検邪である。」

血飛沫の舞う様子を遠目で覗き見ている者がいた。

「あれがクリスエス。異端審問官ですか。」

森の木の上にある1つの影。

「森に狼の魔物が出たという話を聞きつつけてやってきてみれば、これはこれは、僥倖ですな。」

整えられた丸みを帯びた髪型、丸めの眼鏡、動きやすそうな簡易な服装をしている男だ。背中にはいわゆるリュックサックだろうか、黒色で明らかに機能性を重視した作りになっているのがわかる。そして、手にはカメラのようなものが握られ、クリスエスの方に向けられている。

「おお、一匹ずつトドメを刺しますか。なかなか良い絵が撮れそうです。しかし、"異端審問"はよく分かりませんな。何かを話していたようですが、ここからは全く聞こえませんでした。」

独り言を言う男。

「いや〜でもこれはこれで良い記事になります。"夜の森の激戦""異端審問官の力に迫る"なんてのもいいなあ。称号持ちランキングも更新しなくちゃ。」

称号、るかなんP。レミルメリカで随一の"記者"にして『トップテン』という名の雑誌を発行する男である。

アナザーストーリー:審問者9 

「所詮は声なき獣か。検邪である。」

クリスエスの手元から本が消える。辺りは狼たちの血溜りができている。まだ数匹の狼がピクピクと身体を痙攣させていた。

「ミコエル教の異端審問官の名において、貴様らに永遠の安らぎを与えてやる。」

後にその場面を見た剣闘師団の団員の1人はこんなことを話していた。

「クリスエス様は倒れた狼の中で、息のあるものにトドメをさしていきました。暗闇で顔は見れませんし、私たちは指示の通り離れた場所にいましたので、詳しくは分かりません。しかし、ちょうどその時、魔法師団が到着し、"ライト"の魔法で森を照らしたのです。ライトの光が明るい月の光のように私たちのいる場所にも届きました。その時、クリスエス様は笑っていたように見えたのです。狼たちの首元に剣を刺しながら。」

王城に迫った危機は取り除かれた。剣闘師団の者たちしか知らぬ、夜の森での出来事。

すべてを終えたクリスエスは剣闘師団と魔法師団の増援を引き連れ、王城の門の中へと姿を消した。

アナザーストーリー:審問者8 

スキル"異端審問"が発動すると同時に、クリスエスの目の前に一冊の"本"が顕現する。

Index Librorum Prohibitorum

表紙に刻まれたラテン語を邦訳して『禁書目録』。クリスエスが異端審問官と恐れられる起源となった本である。

「獣たちよ、汝らに問う。我を傷つけることを欲するか?」

グルオオオオオオオ

ウインドウルフが雄叫びを上げると、その口から風の奔流が巻き起こり、クリスエスの方へ向かってくる。

「審問を受けることなく攻撃とは、ウインドウルフよ、貴様の行為は不道徳である。」

クリスエスがそう言うと、風の奔流が突然向きを変え、ウインドウルフに襲いかかった。自らが発した風の奔流に切り裂かれ、ウインドウルフは絶命する。

「さて、獣たちよ、汝らに問う。汝らはセレスティアに害を為すものか?」

狼たちはその言葉が聞こえないかのようにクリスエスに向かって走り、飛びかかろうと大地を蹴った。その刹那、跳んだ狼たちの首筋、腕、脚、さまざまな場所から血が噴き出す。

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